森 博嗣 19

夢・出逢い・魔性

You May Die in My Show

2000/05/22

 「瀬在丸紅子」シリーズの第4弾。このタイトルは『封印再度(WHO INSIDE)』以来のスマッシュヒットだろう。さて、内容の方は…。

 瀬在丸紅子、小鳥遊練無、香具山紫子の三人は、クイズ番組に出場するため上京してきた。なぜか、保呂草潤平も一緒である。番組が収録されるN放送で、彼らはまたもや奇妙な事件に巻き込まれる。番組プロデューサー柳川の、密室殺人事件の謎とは?

 うーん、どうも「瀬在丸紅子」シリーズは「犀川&萌絵」シリーズと比較すると地味な印象を受けていたのだが、今回もこぢんまりとまとまっているような…。シリーズの既刊4作の中でも、本作は最も地味な印象を受けた。このシリーズはシンプル、シャープ、スパイシィをコンセプトにページ数が抑えられているのだが、地味に感じる理由はそれだけではないだろう。

 第4作に至っても、シリーズキャラクターの顔が見えてこない。そして何より、真犯人の顔がまったく見えない。

 真犯人の犯行動機がはっきりしないのは森作品の特徴でもあるし、決してマイナス要因ではないのだが、本作ほど顔が見えない犯人はいない。敢えて言うなら、「変身願望」があるのだろうか。しかし、他人を「かぶる」にしても、なぜこの人物でなければならなかったのか? 供述と矛盾してはいないだろうか。

 「犀川&萌絵」シリーズの強烈な印象を、僕は未だに拭い去れていないようだ。批判的なことばかり書いてしまったが、それは期待の大きさの裏返しなんだけどな…。ということで、次回作に期待。 



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