森 博嗣 24

今夜はパラシュート博物館へ

THE LAST DIVE TO PARACHUTE MUSEUM

2001/01/14

 短編集第三弾。嬉しいことに、『地球儀のスライス』以来二年ぶりに犀川と萌絵が帰ってきた。ノベルスの装丁も、「犀川&萌絵」シリーズを踏襲している。

 「どちらかが魔女」は、熱いねぇお二人さん、という作品だが、肝心な「最後の晩餐」の謎に触れていないのはなぜだ? 誰かご存知ない?

 「双頭の鷲の旗の下に」は、一見無表情な国枝桃子助手が、実がシャイなのだということがわかる貴重な作品だ。『スタートレック』に登場するアンドロイドのデータ少佐と、国枝助手のイメージがぴったりとのくだりは笑える。あ、実験はしないように。

 「ぶるぶる人形にうってつけの夜」という妙ちくりんなタイトルの作品には、「瀬在丸紅子」シリーズのレギュラーコンビ、練無と紫子が登場するが、何と萌絵まで登場している。森ファンにとっては盆と正月が一緒に来たような作品だろう。

 シリーズキャラクターが登場する作品は以上。続く、「名探偵・磯莉卑呂矛の事件簿1」というサブタイトルが付けられた「ゲームの国」。なるほど、タイトルそのまんまである。アホか。一つ飛ばして「卒業文集」はもっとそのまんまだが、こちらは至って真面目。うーん、考えさせられるねぇ…。

 「私の崖はこの夏のアウトライン」は、太宰治が好きな方なら琴線に触れる作品かも。僕は太宰治が嫌いだけど。「恋之坂ナイトグライド」は、よくわからないけど何となくメッセージ色を感じる、味わい深い一作。

 最後の「素敵な模型屋さん」は、明らかに自叙伝的な作品である。森さんの模型好きはファンの間では有名だが、このような遊びが許されるのも森さんならでは。遂に日本推理作家協会に入会した森さんだが、今後もいい意味で浮いた存在でいてほしい。



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