森 博嗣 33

朽ちる散る落ちる

Rot off and Drop away

2002/05/14

 Vシリーズ第9弾は、何とも大掛かりな展開だ。

 本作は、簡単に言うとシリーズ第7弾『六人の超音波科学者』の後日談である。というか、こちらが本編か。「シリーズの繋ぎくらいにしか感じられない」と読後感想に書いたのだが、そう、文字通り本作への繋ぎだったのだ。事件はあれで終わりではなかった。土井超音波研究所の地下にあったものは…。

 前シリーズも今シリーズも、中京圏を中心に展開していた。今回もそうなのだが、世界を巻き込んだ急展開に唖然。誰でもその名を知っているあの組織やあの組織が絡んでくるんですぜ? 恒例の登場人物表を見てみよう。ある人物の肩書きに自然と目が吸い寄せられるだろう。森博嗣作品でお目にかかるとは思わなんだ。

 しかも、本作の伏線はシリーズ開幕前に張られていたのだった。ばればれだが、短編集収録のある一編。この短編を書き上げた時点で、既に構想はできていたのか。森博嗣さんが行き当たりばったりで執筆するとは考えにくいしなあ。

 と、かなりネタをばらしている気がするがいいんだろうか? それはともかく、馬鹿らしくなるほどの展開はなかなか笑えた。文系の方には辛いかもしれないが、受験生時代を懐かしく思い出すこのトリック。いやもう、どんどん弾けてくださいよ。帯をご覧あれ。何たって「地下密室+宇宙密室」だぜ。

 これはこれで話としては完結しているが、こんなに謎を残しておいて、ここまで話をでかくしておいて、これで終わりじゃないよね? 正直なところ惰性で読み続けているVシリーズが、ようやく動き出すんだよね? と、勝手に期待する。

 次回作でとうとう区切りのシリーズ10作目。ますます謎が深まる人物たち。まだまだ続くのか? 今後の展開は?



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