森 博嗣 30 | ||
六人の超音波科学者 |
Six Supersonic Scientists |
Vシリーズ第7弾は、うーん、無難にまとまっているかなあ。
タイトル通り、六人の科学者が集う土井超音波研究所が今回の舞台。そこに通じる唯一の橋が爆破され、山中深くに位置する研究所は陸の孤島となった…という、いつもながらと言うべきか森さんらしい設定ではある。オープニングで『墜ちていく僕たち』を思い出してしまい頭が痛くなったが、それはさて置き。
土井博士主催のパーティーに、瀬在丸紅子と小鳥遊練無が招かれるが、例によって他の面々―保呂草潤平と香具山紫子も顔を出す。パーティーの最中に第一の死体が、そして第二の死体が発見されるが…。
いくら鈍い僕でも、今回の真相は薄々感付いたぞ。もちろんすべてを完璧に解き明かしてはいないので、偉そうなことは言えないのだが、ポイントとなるある事実は早い段階でばればれではないか。雰囲気で読むべきなんだろうか。
保呂草はまたおとなしくなってしまった。出し惜しみですかい? 瀬在丸紅子は、本職の科学者と対等に議論する辺り、なるほど「自称科学者」なのかも。しかし、専門は何なの? 恒例(?)の言葉遊びには最後まで気付かなかったが、今回は不発か。
批判ばかりで申し訳ないが、シリーズの繋ぎくらいにしか感じられなかった。これだけ頻繁にシリーズの新刊が出てくれるのはファンとしてありがたいが、新鮮さを保つのは難しい。講談社ノベルス20周年記念として刊行される次回作、『捩れ屋敷の利鈍』に期待だな。
まったく同じストーリーならば、犀川&萌絵のコンビの方が盛り上がったかもしれない…などと思った僕は、未だに前シリーズを引きずっているようだ。何だかVシリーズ初期の馴染めない頃に戻ってしまったような。