森 博嗣 51

四季

The Four Seasons

2004/03/14

 結局、僕は愛読者のふりをしていたのだろう。

 本作は、タイトル通り『春』『夏』『秋』『冬』の四部作である。ノベルス版『春』『夏』『秋』が刊行された後、完結編『冬』に先駆けて単行本が限定刊行されたが、買う気はなかったので『冬』の刊行を待った。以下の文章は感想というより独白であることをお断りしておく。

 森博嗣さんのデビュー作『すべてがFになる』は、正直自分の感性には合致しない作品だった。それでも順にシリーズを読むことにした。やがてはまってきた…と思っていた。

 S&Mシリーズは完結し、Vシリーズがスタートした。読んでも読んでも馴染めない。やがて惰性で読み続けるようになっていた。そして、僕の琴線に触れることなくシリーズは完結してしまった。こんな僕が、両シリーズの繋がりに気付くはずもなかったのだ。 

 両シリーズ以外にも、刊行点数は爆発的に増えていく。小説外の本や絵本まで刊行された。僕の中の違和感がどんどん膨らんでいく。それでも律儀に付き合っていた。

 両シリーズを補間する位置付けにある四部作に、過大な期待はしていなかった。ただ、何らかの結論を出そう、ずっと抱えていたもやもやに決着をつけようと思った。

 『春』『夏』は『F』のプロローグとしては長すぎた。『秋』は『F』の、両シリーズのエピローグとしてはくどすぎた。そして『冬』。時代がいつかとか、あの作品にも繋がっているのかとか、考えるのも疲れてきた。「天才」を「凡才」が理解するのは叶わないのだ。

 僕が読書に出会う以前、一大ブームとなったアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を四夜連続でまとめて再放送していたことがある。途中まで面白いと思いながら観ていたが、全26話のラスト2話は登場人物の内面描写に費やされ、唐突な終わりを告げた。

 ちょうどその頃上映されていた映画版の完結編を観に行って、謎が解明されるどころかますます消化不良に陥った。僕にとって、S&Mシリーズが『エヴァ』のテレビ版第24話までなら、その後の作品はラスト2話と映画版だったのだろう。そういえば、森博嗣さんは日記の中で、『エヴァ』の映画版を「説明しすぎ」と評していた。

 あなたが森博嗣作品を心から面白いと思えるのなら幸せなことだし、それを否定はしない。する権利はない。真賀田四季が、作家森博嗣がどこへ向かおうと僕には関係ないと同時に、僕が今後森博嗣という作家と距離を置こうとあなたには関係ないことだ。



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