森 雅裕 14


平成兜割り


2005/09/12

 森雅裕作品を語るキーワードといえば、芸術、モータースポーツ、そして「刀」。刀をメインテーマに据えた作品は未読だったので、入手済みの作品の中から本作を手に取った。

 いやあ、こりゃマニアックだよ。刀に対する深い造詣なしには書けまい。親切にも、刀の各部の名称を説明する図が付いている。しかし、別に「一本の刀に秘められた壮大な歴史の謎を解き明かす!」なんて話ではない。ついでに言っておくと、誰も死なない。

 本作は、若き骨董屋の店主六鹿義巳を語り部に据えた連作短編集である。生き馬の目を抜くようなこの業界にあって、六鹿は誠実というか、あまり商売気がない。しかし、刀に対する愛情は人一倍。しかも鑑定眼は確かだとお見受けしましたが、どうなんでしょ?

 いい意味で力が抜けており、テーマから想像するほど読みにくくはない。六鹿は、森雅裕作品の登場人物としては異例なほど物腰が低く、人当たりがいい。そうでなければ刀なんぞ扱えないのかも。刀が主役と考えればまあ当然か。

 「虎徹という名の剣」は、かの近藤勇の愛刀を巡る物語だ。ああ、名刀がこんなことに。偽物の世界は奥が深い。価値がわからなきゃ名刀もこんなものか「はてなの兼定」。

 呪いはなくてもこんな罠のかけ方があった「彼女と妖刀」。「現代刀工物語」はノンフィクション的な内容が興味深い。質実剛健な刀工を救ったのは悪徳骨董屋だった?

 一押しは表題作「平成兜割り」だろう。兜割りに挑むは居合の師範代にして女子大生、『100℃クリスマス』で主役を張った舞門都美波。今回ばかりは、使う方は専門外の六鹿は脇役である。実は兜割りに関係ない冒険がメインなのだが、面白いからいいや。

 『開運! なんでも鑑定団』にはたまに刀が出品されることがあるが、まず評価額は芳しくない。本作を読み終えると、さもありなんという気がする。



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