荻原 浩 07


コールドゲーム


2005/01/15

 てっきり東野圭吾さんの『魔球』のようなスポーツミステリーかと思ったのだが…。

 弁当を笑われ、プロレス技をかけられ、パンツを下ろされ…北中二年三組でクラス中のイジメの標的だった少年、トロ吉こと廣吉剛史。四年後の高三の夏、かつてのクラスメートに次々と降りかかる事件。背後にちらつく廣吉少年の影…。

 中学時代のイジメに対する報復。命に関わるものから悪質なジョークで済まされるものまで、その形は様々だが、綿密な調査に基づき相手が最も嫌がるやり口を選ぶ。最初は単発的な事件だと思っていた。だが、他のクラスメートの周囲でも奇妙な事件が相次ぐと、その法則性を意識せざるを得なくなる。

 廣吉の報復行為はれっきとした犯罪だが、警察に通報せず有志による自警団を結成する面々。警察に頼らないのではなく、頼れない。それが本作の大きなポイントだ。警察への通報は、彼らの過去のイジメを告白することでもあるのだから。

 力を合わせて次の標的であろう仲間を警護したり、廣吉を探したりする点だけに着目すれば、青春物やちょっとした冒険譚と言えなくもない。だが、彼らの過去の行いを考えれば感情移入しようにもできない何とも複雑な気分に陥ってしまう。むしろ、次はどんな報復が待っているのか、その緊迫感に手に汗握っていたのだ。

 イジメの首謀者も、しかたなく加担したと主張する者も、見て見ぬふりをしていた者も、廣吉から見ればいずれも報復の対象。言い換えれば同罪。自身の過去と向き合う読者は多いだろう。僕自身、いじめられる側でもいじめる側でもあった。読んでいて、あまり思い出したくない中学時代を暴かれているようだった。荻原浩という作家によって。

 荻原作品としては異例の、誰にも感情移入しにくい物語である。ミステリー的な結末も用意されているものの、ターミネーターを彷彿とさせる復讐者の凄みで読ませる作品だろう。だが、テーマがテーマだけに、エンターテイメントとしては…何だかなあ。



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