岡嶋二人 14


ツァラトゥストラの翼


2002/01/21

 本作は小説ではなくゲームブックである。かつては隆盛を極めたジャンルであるが、現在新品で入手可能なゲームブックは僕が知る限り本作のみである。ゲームブックとは何かは、山口雅也さんの『13人目の探偵士』を参照願いたい。

 会社の長期休暇で帰省する度に、僕は本作を持ち帰ってはチャレンジしていたのだが、これがなかなか解けない。失敗したらここまでは正解であろうセクションまで戻るという、ずるい手を使っていたのに。無理もなかった。僕は早い段階で選択を誤っていたのだから。

 本作の目的は大きく分けて二つある。大富豪鹿島英三郎を殺害した犯人を追うこと。そして、盗まれた秘宝「ツァラトゥストラの翼」を探すこと。ただ一つの正解を目指して、読者自身の決断で調査を進めていく。

 ゲームブックのブームを振り返ると、勘に頼って進むものが主流だったと思う。本作は推理作家岡嶋二人が手がけているだけあって、うまく証拠を集めていけば進むべき道を推理できるように作られている。そううまくはいかないのだが…。

 別に証拠をすべて記憶している必要はない。要所要所にAからZまでのチェックポイントがあり、これが証拠のメモ代わりだ。チェックの有無が物語を左右するしくみである。逆に言えば、見ていないものを見たことにするといういんちきは許されない。

 途中、暗号を解かなければならないが、ちょっとしたことに気付けば解ける。袋綴じの解法を見たら後悔するだろう。暗号までたどり着くのは難しくはない。しかし、選択を誤ると暗号は解けても正解には決してたどり着けない。僕のように。

 ゲームブックが廃れた理由は、時代の流れとか色々あるんだろうけれど、ルールを複雑化しすぎたことが一因である気がする。ルールはシンプルで中身は濃いのがいいよね。本作のように。なお、おせっかいながら解答例を載せておく。



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