山口雅也 03


13人目の探偵士


2001/02/18

 ミステリーの構成要素には色々あるが、その中に「楽しさ」が含まれていたっていいだろう。正直に言って、最近読んでいて楽しいミステリーにはあまりお目にかかれない。仕方がないといえば仕方がないが、重々しい話が多いし、そういう作品の方が高い評価を受けるものだ。そんな中、本作は久しぶりに楽しさを与えてくれた作品だ。

 事件を一言で述べれば、タイトル通り13人もの探偵連続殺人事件である。どこが楽しいんだと言われそうだが、楽しいものは楽しい。

 本作は、元々は『13人目の名探偵』というゲームブックだそうである。ゲームブックと言われても今ではわからない人が多いと思うが、読者が自分で選択肢を選ぶことにより、ストーリーが幾通りにも展開するという本である。すっかりコンピュータゲームに取って代わられ、もはや新刊が出ることもなくなったが。

 「キッド・ピストルズ」シリーズの第二作としてお色直しされた本作には、ゲームブックの面影が色濃く残されている。この懐かしい感覚が、僕には嬉しいな。選択肢に対応したセクションに飛び、また選択肢を選ぶ…という作業を繰り返すゲームブックは、確かに面倒な代物だ。しかし、その煩わしさがゲームブックの楽しみであり、醍醐味だったんだ。

 もちろん、密室あり、ダイイング・メッセージあり、どんでん返しありと、ミステリーとしての趣向も随所に凝らされている。ご本人の弁によれば、オリジナルのゲームブックは欲張りすぎて不満が残ったが、大幅な改稿は施さなかったとのこと。それで正解だったと思う。山口さん自ら「遊園地」と評している通り、本作には楽しいアトラクションが満載なのだから。素敵な「遊園地」だ。少なくとも、僕にとっては。

 購入して以来、ずっと本棚に置きっぱなしだったので、ようやく読もうと手に取ってみたら紙が変色してしまっていた。もっと早く読んでおくんだったなあ。惜しむらくは、未だに文庫化されていないことか。今だからこそ、新鮮な作品だ。



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