奥田英朗 15


ガール


2006/01/23

 嫌になるほどうまいなあ。こういう直球には弱いのだ。本作は、傑作『マドンナ』に続く奥田流オフィス小説第二弾である。今回は、30代のOLにスポットを当てている。

 ここをご覧になっている女性の皆様、怒らないでください。OLという言葉には、いずれ結婚退社していくという揶揄が多分に含まれていると思う。30代の女性が普通に働く現在、敢えて帯に使ったのは会社がまだまだ男性中心であることを象徴しているのか。

 30代で課長に抜擢された武田聖子。野心のかけらもない夫より収入が多いのが気にかかる。部下には年上の男性。上司を上司とも思わない、男性の僕が読んでも嫌な野郎を聖子はどうやって捻じ伏せたか? 僕にはそのゲーム、乗れません。平伏。

 親友にマンションを買ったと聞かされた石原ゆかり。やがてゆかり自身もある物件に一目惚れしてしまう。これを機に、「広報の石原都知事」とまで言われるゆかりが、柔軟路線に転じようとするのだが…。でも、やっぱり自分らしく生きるのだ。

 かつてはディスコでお立ち台の常連だった滝川由紀子。今だっておしゃれに余念がない。でも、そろそろ潮時なのかな。もうガールじゃないのかな。いくつになっても楽しめばいいじゃない。自分は若ぶる気は毛頭ないが、おっさんではない…つもり。

 本作では唯一の一児の母、バツイチの平井孝子。育児が一段落すると、また営業で働きたくなった。忙しくなるのは承知の上。息子の気遣いが胸に染みるよね。「錦の御旗」は使いたくないと言うけれど、専業主婦でもワーキング・マザーでもやっぱり母親は偉い。

 小坂容子の気持ちって、男性にもよくわかる。同じ立場になったらきっと冷静ではいられない。技術系の職場でそんなことは望み薄なんだが…。

 世の中、まだまだ女性にとっては窮屈なんだろうけど、男性だって家庭の話題が出ると焦らないことはない。高校の同窓会に出席して、長男がもう小学校入学だという話を聞く一方、半分くらいは独身だったことに心底ほっとしたものだ。



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