奥田英朗 17


家日和


2007/04/13

 最近の奥田英朗作品はソフト路線が続いている。今回のテーマは「家庭」。ずっと外にいる夫とずっと家にいる妻。全6編、それぞれの立場から「家」が描かれる。傑作『ガール』は女性が主役の作品集だったが、今回は一方の立場に偏っていない。

 「サニーデイ」におけるネットオークションにはまる妻。自分が出品したものが入札されている。変化に乏しい日常におけるささやかな喜び。段々エスカレートしていって…最後は「家族っていいな」ですか。mixiに代表されるSNSの方がネタとしては新しいか。

 「ここが青山」における会社が倒産した夫。妻は元の職場に復帰し、夫は専業主「夫」に。倒産は他人事じゃないが、家事ってやってみれば面白いことに男はなかなか気付かない。お互い納得するならこれもありかな。それにしても料理が上達しない…。

 「家においでよ」における妻と別居した夫。妻の趣味に合わせていた部屋を、男の隠れ家に大改造だ。'80年代の洋楽で育った自分には、懐かしい名前のオンパレードで嬉しいねえ。インテリア雑誌のグラビアみたいな部屋って苦手なんだよね。

 「グレープフルーツ・モンスター」における妻の……。一言、本作中では異色。

 「夫とカーテン」におけるイラストレーターの妻としょっちゅう転職する夫。妻は安定を望むのに、夫は突っ走る。書店には起業を指南する本が色々並んでいるが、成功するのは結局考える前に動く人なのかも。人望だけは本じゃ身につかない。

 「妻と玄米御飯」における作家の夫と「ロハス」にはまる妻。健康志向は結構だが、度が過ぎると…。僕自身、ロハスという概念に懐疑的なので、この「作中作」は是非読んでみたいぞ! 東野圭吾さんならこのネタでどんなお笑い作品を書くだろう。

 家族の愛に溢れ、読後感も大変結構なんですがね。正直、あまりにも毒がないのが引っかかった。こういう作品集に「毒」を求める僕が間違っているのかもしれないが。



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