奥田英朗 22


我が家の問題


2011/07/07

 奥田英朗さんの新刊は、『家日和』に続く家小説第2弾である。『家日和』は第20回柴田錬三郎賞を受賞するなど高い評価を受けたが、僕は読後感がソフトすぎると感じた。本作もソフトだが、家庭を持ってみてしみじみわかる作品が多い気がする。

 「甘い生活?」。新婚なのに家に帰りたがらない夫。妻は万事に完璧であろうとする。落ち度は何もない。それなのに…。少なくとも完璧な夫ではない僕にも、わかるようなわからないような。結婚生活とは、夫婦の価値観のすり合わせだよね。

 「ハズバンド」。人員削減に走る企業が相次ぐ現在、僕だっていつどうなるかわからない。もしかして夫は職場のお荷物なのでは? という疑問を抱いてしまった妻。確信は深まるばかり。そんなとき、妻に何ができるだろう。先のことなどわからない。

 「絵里のエイプリル」。両親が離婚しようとしているらしいと知ってしまった娘。ハグしてくれる親友の存在がありがたい。僕の身近にはいないが、今や離婚は珍しくはない。でも、このように両親の立場に立って考えられる、できた子は少ないだろうね。

 「夫とUFO」。急にUFOを見たと言い出した夫に、精神疾患を疑う妻。専門書を借りてきて読み漁るが、特効薬はない。結局妻は心配なのだ。本気で夫を案じているのだ。ここまではっきりした異変を示す例は極端だろうが、小さな異変はあるかもしれない。

 「里帰り」。札幌出身の夫と名古屋出身の妻。お互いに親戚付き合いを煩わしく感じ、東京暮らしが水に合っている2人が、夏休みに両方の実家に帰省するツアーを組んだ。我が家も帰省ツアーをするからよくわかる。お金はかかるけど、やっぱり帰らなきゃ。

 「妻とマラソン」は、『家日和』に収録の「妻と玄米御飯」の続編である。夫が作家として名を上げた結果、妻は孤立を深めていた。同じ階層同士でくっつきたがるのが人間という生き物。ベタなエンディングだが、頭の中には自然とあの名曲が流れる。

 現実の家庭は『サザエさん』のようにはいかない。それでも家庭はいいなと思いたい。



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