坂木 司 02


仔羊の巣


2006/11/10

 『青空の卵』に続くシリーズ第二作。本作の第三話「カキの中のサンタクロース」で、鳥井と坂木の関係が思わぬ誤解を生むことになる。作中の人物が誤解するくらいなのだから、読者である僕が誤解するのも無理はないなどと思ってみる。

 有栖川有栖氏の解説は実に卓見だと思う。鳥井を好きになれない、と断言しているではないか。もちろんこれは主観であり、鳥井を好ましく思う読者もいるだろう。小説中の人物としての魅力はわからなくもない。しかし、少なくとも実際に付き合いたいとは思わない。ひきこもりに対する僕の無理解を差し引いても、この態度と物言いはどうだ。

 それに加えて、鳥井の推理は痛いところを突きすぎる。自分の内面には決して立ち入らせないくせに、相手の内面には踏み込んでくる。本作に収録された三編は、いずれも痛いところを突かれるエピソードである。しかも補足不要なほどに図星ときている。

 どういうわけか、このシリーズに登場するのは鳥井を受け入れられる人物ばかり。懐が深いのか、単なる慣れなのか。そんな中でも、坂木には自負があるはずだ。本当の意味で鳥井を理解し、受け入れられるのは自分しかいないのだと。

 二作を読み終えて思う。このシリーズには、二人の世界を読者に容易には理解させない、ある意味排他的な側面を感じる。作中のレギュラー陣に対してさえも全面開放はしていない。それがある読者には謎めいた魅力となり、ある読者には越えられない壁となる。それゆえに、単なる「日常の謎」系と一線を画しているのではないか。

 一方、すべて収まるところに収まる、ほのぼのとした安心感もあるわけで。これは「日常の謎」系の王道に他ならない。多感で扱いが難しい中高生の心も、最後には溶かしてしまうのである。そして彼らも、立派なファミリー(?)の一員という寸法だ。面白いかどうかと問われれば、面白いと答えよう。でも、そう答えるのは何だか癪なんだよなあ。

 『青空の卵』を読んだときより、シリーズに対する印象がかなり変わったのは確かである。それでも鳥井は好きになれない。僕は坂木になれない。完結編『動物園の鳥』を読み終えたとき、鳥井と坂木に対する印象も変わっているだろうか。



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