坂木 司 03


動物園の鳥


2006/11/20

 シリーズ完結編は初の長編である。今回鳥井のもとに持ち込まれたのは、動物園で頻発しているという野良猫虐待事件。事件を追っていくと、やがて鳥井がひきこもりに至った過去と繋がっていくのだった…。試練に向き合う鳥井と坂木。

 シリーズ三作品を順に読んだ方ならおわかりのことと思う。単独作品の体裁にはなっているものの、実際のところ『青空の卵』に始まる三部作は、切っても切り離せない一つの作品なのである。あまり間を置かず三作品が文庫化されたのも当然だろう。

 坂木が付き添うことでかろうじて外出が可能な鳥井だが、今回の事件ではかなり長時間の外出を強いられる。なおかつ、自身の過去とどうしても向き合わざるを得なくなる。このシリーズに関しては、敢えて内容にはほとんど触れなかったが、今回も触れない。

 誇張気味に嫌な人物として描かれるある男。彼の行為はもちろん正当化できないが、彼のような心理は多かれ少なかれ誰にでもあるのではないか。僕にはあると断言しよう。そうしてちっぽけな優越感にすがり、自身の立ち位置を確保することで精神のバランスを保っている。仕事のことや人生のこと、考えれば考えるほど不安で不安でたまらない。

 実は鳥井ほど強い人間はいないのではないか。彼の推理は、ただ相手を糾弾するのではなく、最終的には相手を救っていた。今回もまた然りである。しかも、事件には無関係なはずのあるレギュラーキャラまで救ってしまった。鳥井は過去に打ち勝ったのだ。

 しかし、心を許せる仲間たちとの関係はいつまでも続かない。お互いをかけがえのない存在と思い合う鳥井と坂木の関係は、さぞかし居心地はいいだろう。だが、それはいいことなのか。僕自身、依存していた親友と離れることは考えられなかった。だが、いずれそれぞれの道を歩む。そして一人に慣れる。薄情だろうと、それは越えるべきステップだ。

 シリーズ全編を通じた感想は、「出来すぎにも程がある!」というところである。感動したなんて言わないよ。でも、出来すぎを苦笑いして流せるくらいの心の余裕は持っていたいものだと思う。鳥井はやっぱり好きになれなかったが、料理は一度食べてみたいもんだ。そうそう、岩手の銘菓「かもめの玉子」をよろしくお願いします。



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