坂木 司 12


ウィンター・ホリデー


2012/01/27

 本作は『ワーキング・ホリデー』の続編である。元ヤンで当時ホストだった沖田大和と、息子の進が出会ってから半年。大和はすっかり『ハチさん便』の仕事が板についてきた。もうすぐ冬休み。再び進と過ごすのを楽しみに、寒空の下で配達に励む。

 おお、大和の愛車がリヤカーから自転車つきに進化している。進からの連絡がないことに気を揉む大和。どうしてあっち経由なんだ!!!!! そしてクリスマス。再会して早々に衝突しそうになるが、誤解でよかったねえ。ちなみに我が家のある市のルールはかなり大雑把である。父子で過ごすクリスマス。その一方で、大和の頭を過ぎることとは。

 大和の下にアルバイトの後輩がついた。大和の先輩ぶりには素直に感心する。後輩のいいところはちゃんと見ている。宅配便として最大の危機を、進たちを巻き込んで解決する辺りはお約束。そして年が明け…父子の時間は貴重なはずだが…やっぱり喧嘩になる2人。大和はおそらく、何よりも自分自身に苛ついている。父としての無力さに。

 バレンタイン、荷物を回収したいという少女。彼女から見れば大和はおっさんだ。そんな彼女の心を溶かしたのは…。一方、進の友達からの相談はドンと来い。営業所の同僚も含め、三者三様の恋模様。最後は進の非常事態に大和のヤンキー時代の後輩が結集する。なお、全員ちゃんと働いています。騒動の真相を聞いてみると…。

 前作と比較して、進の母・由紀子の存在がクローズアップされるのが大きな特徴と言える。進と過ごす時間は由紀子の方がはるかに長い。大和もシリーズを通して人間的に成長した。父としてどうあるべきか、大和は身の処し方に真剣に悩む。

 大和がホスト時代に叩き込まれた礼儀が、仕事上大いに役立っていることに気づかされる。大和のホスト時代のエピソードは、そこいらの啓蒙書より示唆に富んでいる。本作でもジャスミンや雪夜は存在感を放っているが、彼らはあまり表に出ない。

 ジャスミンや雪夜、職場の上司や同僚の助言を受けつつ、大和は道を切り開く。大和だけではない。雪夜の指名客だったナナの活躍にも注目したい。こんな時代だからこそ、それぞれが見つけた道の先には、幸せがあることを願いたい。



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