坂木 司 06


ワーキング・ホリデー


2007/07/18

 ひきこもり探偵三部作『青空の卵』『仔羊の巣』『動物園の鳥』を読み終えているので、坂木司という作家の作風は承知しているつもりである。今年2月まで吉祥寺の中町商店街に存在したミステリ専門書店「TRICK+TRAP」で、来店していたご本人と会う幸運に恵まれたが、作風そのままの人柄になるほどと納得したものだ。

 今回の主人公は元ヤンのホスト、沖田大和。決して売れっ子とは言えない大和の元に、実の息子と名乗る少年、進が転がり込んできた…。詳しい経緯は読んでいただくとして、大和はホストから宅配便のドライバー(?)に転身することになった。

 不良少年が実は優しいというのはドラマや漫画でありがちなパターンである。大和は現役(?)ではないものの、かつてはバイクで無茶を繰り返した経歴を持つ。今でも血気盛んだが正義感は強い。そんな父と対照的に、やたらと家庭的な息子。

 坂木作品は根っからの悪人に出る幕はない。大和はまさに坂木作品の本質を体現するキャラクターと言える。こんな迫力のない「夜露死苦」の4文字は聞いたことがないぞ。大和だけではない。ホストクラブの経営者ジャスミン。No.1ホストの雪夜。常連客のナナ。ホストクラブに対するイメージを覆す人物ばかりが勢揃いだ。

 いきなり現れた実の息子とあっさり打ち解けるもんだ、などと言ってはいけない(僕が言ってるか)。だからこそ、支持する読者は支持するし、安心して読めるのだ。これが坂木作品の真髄なのだ。内容にケチはつけるまい。一つだけ気になるのは、ミステリー色が薄すぎて、大和と進の交流記になっていることか。それもまた坂木作品ということで。

 そんな中で謎に重点を置いているのはエリア4「代金引換」。大変コメントしにくいのだが、「はまる」人たちの心理が少しは理解できたかな?

 ところで、本作には「ホリデーとホテルと僕」という特別編の冊子が挟み込んである。この続きは、角川書店から9月刊行予定の『ホテルジューシー』と、双葉社から12月刊行予定の『先生と僕』に挟み込まれるという。さらに、三作品共通のプレゼント企画もある。出版社の垣根を超えた異例の企画が実現したのも、坂木司ならではと言える。



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