真保裕一 25


追伸


2008/09/28

 2007年は真保裕一さんの新刊が2冊刊行された。年間2冊以上が刊行されたことは初めてではないが、これほどまでに難易度が高い2冊が揃った年はなかった。

 1月に刊行された『最愛』の難易度は特A級で、一昔前の連続ドラマを彷彿とさせる徹底した純愛…ではなく殉愛を理解できる読者は少なかっただろう。案の定黙殺されていた。そして9月に刊行された本作『追伸』。『最愛』よりはまだ理解できたのだが…。

 正直、これが帯にあるような「女が犯した、人殺しよりも深い罪」なのかといえば、言いすぎだろう。このジャンルの大家である某先生や某先生が鼻で笑うに違いない。

 妻とギリシャに赴任する予定だった悟だが、妻の奈美子が事故に遭い、悟が先に単身で赴任することになる。しかし、怪我から回復したはずの奈美子はギリシャに来る様子がない。そんなある日、奈美子から手紙とともに離婚届が送られてきた。一方的に離婚を切り出され、到底納得できない悟は奈美子に返事を書くのだった。

 手紙のやり取りのみで展開するのが本作の大きな特徴だが、悟と奈美子の主張は平行線をたどり、歩み寄る気配がない。電話でも何でも直接話した方がてっとり早いだろうが。やがて、奈美子の祖父母の間で交わされたという手紙のコピーが悟に届く。

 奈美子の祖父母による「誠実さ」の応酬にはただただ疲れた。奈美子の祖母は殺人容疑で逮捕されていた。頑なな態度を貫く祖母と、無実を信じて奔走する祖父。戦後という時代背景を考えても、ここまでこじれたのは祖母が悪いとしか言いようがない。そんなに我が身を恥じるくらいなら最初から〇〇なんかするなよ。というのは男の感覚なのか。

 これで悟と奈美子はお互いの理解が深まったのだろうか。作者の真保裕一さんが、読者の僕が男性だからなのか、奈美子の方に落ち度がある印象を受ける。厳しい言い方をすると、本作は、女はこうあってほしいという男の幻想の産物ではないだろうか。この手の行為に耽る男女は、笑い流すだろう。って、何のことだか完全にばればれだな…。



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