殊能将之 07


キマイラの新しい城


2004/08/27

 結局、この路線で行くのかい…。

 『子どもの王様』で違う一面を見せてくれた殊能将之さんだが、約二年ぶりとなる講談社ノベルスからの新刊では結局「石動戯作」シリーズに戻ってしまった。

 いやあ、今回も飛ばしているぞ。「自称」名探偵の石動戯作が受けた依頼は、750年前に起きた殺人事件の真相解明。依頼者はその事件で死んだ領主に取り憑かれた男。どうだいみんな、これだけでもわくわくしてきただろう? ま、殊能作品はすべて読んでいるだけに、この程度の設定で驚きはしない。

 ところが一筋縄ではいかない殊能作品。750年前の事件の謎を解こうとしているところで「現代」でも事件が起きる! 悠久の時を隔てた二つの事件の謎を、石動は解けるか? どうだいみんな、ますますわくわくしてきただろう? ま、殊能作品はすべて読んでいるだけに、この程度の展開で驚きはしない。

 ところが何が起きるかわからない殊能作品。某超有名スポットで繰り広げられるノンストップ・アクション! 第一話で銀座に装甲車を走らせたという『西部警察』もびっくりだ。どうだいみんな、読みたくてたまらなくなってきただろう? え、ならない?

 ところが…もうやめた。この文章を読んだ限りでは、ふざけた作品としか思えないことだろう。そう、ふざけている。けれども構成は極めて緻密なんだよなあ。帯に書いてある通り、正面切ってこんな話を書ける人材は殊能将之以外にいない。そもそも殊能さんはふざけているつもりはないのかもしれない。

 だがしかし、このシリーズは殊能さんがその力量を発揮する場として相応しいのだろうか? 絶対に歴史に残る傑作が書けそうな気がするんだけどなあ。大作を書こうとはしない奥ゆかしさが、殊能将之の殊能将之たる所以なのか。



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