鈴木光司 18 | ||
神々のプロムナード |
あとがきによれば、本作の連載を始めようとした矢先にオウム事件が起き、大幅な軌道修正を余儀なくされたそうである。大変不謹慎だが、事実は小説よりも奇なりを実証したあの事件の後では、何を書いても見劣りしてしまうのも無理はない。
そんなこんなで連載は開始されたが、掲載誌が年3回刊行の小説現代臨時増刊メフィストであったため、連載期間は8年にも及んだ。ようやく単行本刊行されたが…。
続発する失踪事件の裏にちらつく、新興宗教団体「天地光輪会」の影。事件と事件が絡み合った末に至った結末…がこれかよ! 帯曰く、8年の年月をかけたミステリー大作の結末がこれかよ! というのが正直な感想だ。読み終えて脱力した。
一応、説明はついている。どうも万事がうまく運びすぎだなあと思ったが、それもそのはず、すべてはある目的のためのお膳立て。だが…これがそんなに絶大な宣伝効果を生むものなのか? ここに至るまでのお膳立ての見事さに比べて、あまりにも安直さ、滑稽さが際立つ。ひょっとしてジョークですか、と言いたくなる。
『リング』シリーズのような超常現象が絡む話ではないことは言ってもいいだろう。体裁としてはミステリーだ。この設定だったらいっそのことホラーにするべきだったかもしれない。言葉が悪いが、何でもありにできるからだ。現実を逸脱しない範囲で軌道修正をした結果がこれなら、確かにオウム事件は鈴木さんにとって不幸だったと言える。
最後に書き下ろしで加えられた第五部に微かな期待をしてみたもの、くどくどと説明をしているだけ。あるキーパーソンの現在が唐突に語られるのにも面食らった。
見切り発車の割にはうまくまとめていると言えなくもないが、鈴木光司さんご自身の迷いが読んでいて感じられる一作だ。先が読めず、誰もが迷っている現代を象徴した作品である、と無理矢理フォローしておくか。