辻村深月 07


ロードムービー


2011/10/26

 本作は、辻村深月さんのデビュー作『冷たい校舎の時は止まる』に登場した高校生たちが、小学生や大学生として登場する短編集である。僕は『冷たい校舎の時は止まる』を未読なのに手にとったが、未読でも支障はないだろう。

 ノベルス化の際に、「トーキョー語り」「街灯」の2編を追加収録しているが、ノベルス版では巻末に収録されていた「街灯」を、文庫版では冒頭に変更している。「街灯」はわずか4pの掌編で、「街灯」の後に目次があるという何やら意味ありげな構成である。

 表題作「ロードムービー」。父は議員で母は医師、勉強も運動もできる人気者のトシ。そんなトシが、気弱なワタルと接近すると、2人はいじめの標的になってしまう。小学生がここまでやるか勘弁してくれ…。本編の冒頭、2人は家出を決意し、回想の形で物語は進む。最後の大逆転で胸がすっとする。またあの手だけどいいじゃない。

 「道の先」。塾の講師をしている大学生の俺は、生徒の大宮千晶に気に入られたらしい。千晶は頭はいいのだが問題児で、やめさせられた講師も多い。なぜ俺が? 呼び出されるままにファミレスへ行き遊園地へ行き…こんな関係をいつまでも続ける気か? 「俺」の正体は、千晶への告白でわかる。一見リーダータイプの子だって悩む。

 「トーキョー語り」。東京からやってきたという転校生。最初は彼女の東京話に目を輝かせていた女子たちだが、いつの間にか反感に変わり…。嗚呼、またいじめですか。ある日、一触即発の事態を防いだのは、やはり転校生だった遠山さんの言葉だった…。彼らの言うコンプレックス、僕にはよくわかる。最後はめでたしめでたし。

 「雪の降る道」だけはやや異色かな。主要な登場人物は小学校低学年と思われる2人。話題になった金子みすゞの詩「こだまでしょうか」を連想させる、透明感溢れる作品。ミステリー的な側面もあり、本作品集のラストに相応しい。

 誰もが思い当たる苛立ち。きれいなだけじゃない青春を描かせたら、辻村深月さんは本当にうまい。各編の登場人物の繋がりが、目新しい演出ではないのに実に効果的だ。これで『冷たい校舎の時は止まる』を読まなければいけなくなったな。



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