若竹七海 12


八月の降霊会


2009/08/07

 角川文庫に収録されている本作だが、どちらかというと、『遺品』よりも本作の方を角川ホラー文庫に収録すべきではないだろうか。

 霞流一さんによる文庫版解説は本作を手放しで絶賛している。曰く、これで3回読んだことになるが全く飽きがこない。確かに、全容を理解するには3回くらい読まないといけないだろう。しかし、僕にはもう一度読む気力が残っていないが。

 〈降霊会のお知らせ〉を受け取り、富士山麓の山荘に集まった人々。誰もがおふざけとしか思っていなかったのだが…実はある企みが隠されていた。一見何の接点もないはずの招待客は、主催者水屋征児の意図の下で集められていたのだ。こんな怪しい誘いにのこのこと出かけるのもどうかと突っ込みたくなるが、とにかく読み進めよう。

 殺人が発生し、人骨が発見され、主催者は銃を突きつけて外との連絡を拒む。ちょっと無理矢理だが「嵐の山荘」パターンに持ち込むのか? いまいち乗れない状態で第一部を読み終えると、第二部は丸々手記の体裁になっている。……。どうやら「嵐の山荘」ではないらしい??? 輪をかけて乗れないまま第三部に突入する。

 酔狂にしか思えない降霊会だが、水屋征児は大真面目。完全にいっちゃってる…。しかし、マッド・サイエンティストな水屋征児だけでなく、どの人物も大なり小なりいっちゃってる。今頃そんな過去を明かすなよ。心霊ブームもかなり下火な現在、狂人の論理に付き合える読者がどれだけいるか。霞さんは付き合えたのかもしれないが。

 もう少し簡潔に、短くまとまっていれば評価は違っていたと思う。霞さんはジャンルミックスが大きな魅力と書いているが、長い分だけミステリーとしてもホラーとしても中途半端な出来になってしまったというのが正直な感想である。それでも、こんな哀れな最後を迎えた彼には同情するよ…。警察はどう処理するんだろ。

 映像化した方が面白いかもね。水屋征児役を誰にするかがポイントだ。



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