若竹七海 25


ポリス猫DCの事件簿


2010/01/31

 若竹七海さんの葉崎シリーズと呼ばれる作品群の中でも、『猫島ハウスの騒動』は個人的にお気に入りである。新刊は久々に猫島が舞台ということで、楽しみにしていた。

 神奈川県の葉崎半島の先に位置する、30人ほどの人間と100匹を超える猫が暮らす、通称「猫島」。ここの臨時派出所に勤務する七瀬巡査のパートナーは、猫のDC。派出所に出入りしていただけの猫に、署長が星章を与え、勤務員として任命されたのだった。

 たま駅長が大反響を呼んで以来、似たような話をよく聞くが、そのうちどこかの警察署がやりそうだなあ。それはさて置き、猫が登場するミステリーといえば日本では赤川次郎氏の『三毛猫ホームズ』シリーズが最も有名だろう。三毛猫ホームズとの比較はできないが、DCはただのマスコットではなく、捜査員としても有能なのである。

 猫島勤務が気楽かといえば、そんなことはない。大小様々な事件に忙殺される日々。事件とは呼べない近隣トラブルにまで借り出される。フェリーが就航して観光客も増え、シーズンともなれば客同士の小競り合いも絶えない。それでも猫島勤務が満更でもなさそうな七瀬巡査。飄々としているようで生真面目でもあり、好感が持てる。

 各編に描かれた事件の1つ1つは小さいが、『猫島ハウスの騒動』と同様に、猫を交えた島の住人たちのやりとりや、いつもDCが真実を見抜くというお約束が楽しい。七瀬巡査は頼られているのだ。そしてコージーらしく、毒も忘れない。小さな事件の裏では殺人事件が…。鍵は猫島に隠されていた。改めてDCの有能さに舌を巻く七瀬。

 全編を通して読むと、殺人事件の全容がようやく浮かび上がるのだが、どちらかといえば殺人事件は猫島のトラブルに追いやられているのが葉崎シリーズらしい。このシリーズは、葉崎シリーズの中でも猫島シリーズと呼びたいね。

 観光地としてどんどん発展していく猫島。住人と猫の暮らしが守られるのか、ちょっと気がかりである。七瀬とDCの仕事はますます増えそうだ。是非続編を。



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