若竹七海 共著3


親切なおばけ


2006/12/28

 若竹七海さんと、絵を担当した杉田比呂美さんの関係は深い。多くの作品のカバーイラストを手がけており、久しぶりの最新刊『猫島ハウスの騒動』のカバーもやはり杉田さんであった。2001年には東野圭吾さんと組んで『サンタのおばさん』を刊行している。

 近年の若竹さんはコージー路線が続いているが、ビターな作風にも杉田さんのやわらかいタッチの絵は不思議とマッチする。だから、二人で絵本を出すという企画は必然的だったと言える。若竹さんが復活を果たした今年は打ってつけのタイミングだ。

 雑木林の中のオンボロの家を、近所の子供たちは誰はばかることなく「おばけ屋敷」と呼んでいた。そこに住んでいるノノコちゃんは、「おばけ」と呼ばれて遊んでもらえない。話相手になってくれる大好きなおじいさんはノノコちゃんに言う。それなら、親切なおばけになってみたら。そしてある日、おじいさんにお迎えがやって来た。

 これ以上は書かないでおこう。ノノコちゃんはおじいちゃんの言葉に忠実に従おうとする。切ないオープニングから一転、あまりにも意外な展開につい口元が緩む。人間の悪意にスポットを当てた作品が多い若竹さんだが、こういう話も書けるのだ。

 いや、そもそもこのお話は仲間外れにされるという悪意、大好きなおじいさんが亡くなるという悲しみから始まっている。そこからコメディータッチに展開し、最後は何だかほんわかとしている。読み終えて初めて、うまさと深さに気づかされる。

 などという分析めいたことをごちゃごちゃ書き連ねるのは野暮というもの。忙しい年の瀬にこんな作品で一息つくのもいい。自分は親切なおばけだったことがあるだろうか。

 個人的に印象に残る作品が少なかった今年、『猫島ハウスの騒動』は今年のベスト3に挙げたい一作だ。本作とセットでどうですか。それにしても、絵本というジャンルはよさを文章で伝えるのが難しい。絵だけは見てもらうしかないからね。



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