横山秀夫 07


真相


2003/06/02

 長編と比較して、短編集は売れないそうである。そんな中、横山秀夫さんは短編に注力し続ける。向き不向きはあるのかもしれないが、今や横山さんは現代ミステリー界で一二を争う短編の名匠と言っていい。新刊はまたしても短編集だ。

 本作に冠された『真相』というタイトルは、表題作のタイトルであるが、同時に全編を通じたテーマでもある。シンプルにしてストレート。多くを語らないタイトルは、読者を納得させられるという自信の表れ。そう、『動機』のように。

 表題作「真相」。息子を殺した真犯人が十年を経て逮捕されたとの報が届く。だが、朗報の裏にある「真相」とは。父親の中で何かが崩れていく音が聞こえてくるような一編。事件が暴くものが加害者側だけではないという事実。

 個人的な一押しは「18番ホール」。小さな自治体の選挙という題材が、小さな町出身の僕には興味深い。村長選挙に担ぎ出された樫村。県職員は辞めた。落選したら後がない…。焦りが樫村を疑心暗鬼に陥らせる描写が秀逸。この結末はどうだ。

 「不眠」のキーワードはずばり「リストラ」。将来僕にも無縁とは思えないテーマだけに胸が詰まる。同じ傷を持つ男たちの悲哀。このご時世にはタイミングが良いというか悪いというか…。負けないでくれ。切に願わずにはいられない。

 「花輪の海」は、体育会出身の人には不愉快だろうなあ。有力大学にはありがちな話と思ってしまうほどのリアルさ。人生で一番嬉しかったことが…だという極限状態、想像できるか? 漆黒の海の記憶が、まさに月夜のごとく照らし出される。

 最後の「他人の家」は、何ともはや。ただ苦笑するのみ。彼らの選択肢はただ一つ。

 捜査側からは距離を置き、犯罪の当事者たちの「事件後」を照らし出した本作。出しすぎの懸念を一掃するに足る作品集だが…無性に楽しい話が読みたくなるだろう。



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