作ってるプラモに行き詰まって、気分転換にプラモのストックの入ったダンボールをあさっていたら、エルエスの「COMBAT SETS No.4」なる手榴弾セットを発掘しました。40年近く前のキットです。チューブ入り接着剤はまだ柔らかい・・・
作ってみたくなったので、作りました。
セットの内容は、我が帝国陸軍の九七式手榴弾と、ドイツ軍の卵型の39年式手榴弾です。
前者は松本零士の漫画で、後者は産経の第二次世界大戦ブックスで存在を知ったことであるなあ・・・
九七式手榴弾は、松本零士の「零士のメカゾーン」というムックで実物のガラをもとにした図解がされていたのを覚えていたので引っ張り出した。
いいよね!零士!
ちなみに、この本のキャプションは全部手書きのようです。すごいよ松本零士!大好き!
九七式は、握って、被帽に刺さったピアノ線の安全栓を真横に引き抜いて、被帽はつけたまま頭を硬いものを使って叩くことで時限信管を発火させ、4秒以内に投げるというシステムです。
信管に火がつくと、シュ〜っと点火ガスが出るのでわかりやすかったそうな。変な持ち方するとやけどしたそうだけども。
自衛隊の人だった父ちゃんは、米軍の手榴弾について、撃鉄が落ちても何も反応がないけど4秒で爆発するんだよ。怖いよ。」って言ってたのを思い出します。
九七式は、それまで使われていた、擲弾筒で投射できる九一式手榴弾が、擲弾筒で投射する用に7〜8秒という長い点火時間の信管を使っていたために、早まって投げると中国人に拾って投げ返されるという現場からのクレームに応えて、点火時間を4〜5秒に縮めた信管をつけたので、底面に「延期四-五秒 秒時」っていうラベルが貼ってあったそうな。
今回ググって初めて知りました。
お礼にラベルをpdfで作ったので良かったらご利用ください。
実際は結構カラフルだったらしく、赤やクリアの紫でぬたくってあったそうな。
今回手で握ったりするんでグンゼやタミヤのラッカーで筆塗りしました。
エナメルはこういうのには向いてない。手汗で溶ける。
ちなみに、今回久々にラッカー塗料買ってみたら、なんか品質が向上してて、筆塗りしやすくなってました。今度車作るとき使ってみようかな・・・
このキットは信管とか撃発部とか熱心に再現してるんですが、当時の情報では限界があったらしく、撃針とかはちょっと違うみたいなので、最新の知識で改良を加えました。残念なことに作業に夢中で改良前のパーツの写真撮り忘れた。
撃針は、キットだと大きい一つの部品、モデルガンのブローバックカートのプラグみたいな再現ですが、そうではなくて、真鍮でできた撃針キャリアに鉄の、ネジを切ったマイナスネジ的な撃針本体がねじ込まれていたようです。出荷時は安全のために撃針ネジを緩めて引っ込ませておいて、戦場のいずれかの段階でドライバー的なもので撃針をねじ込んで撃発可能状態にしたようなのです。
安全栓のもう一つの役目は、上記の、撃針をねじ込む際の、撃針キャリアの共回り防止っていうのがあったみたいです。 安全栓はキットのは十分いいんだけども、錆びたら嫌だったので、ステンレスの針金を焼き鈍して作り直しました。ついでにヒモも麻ひもに変えた。
実物では真鍮の絞り加工だった被帽はプラで、ちょっと高さが足りないと聞いたので上に2.4ミリほどプラバンをくっつけました。
撃針がペコペコ動いて楽しい。
ちなみに、九一式手榴弾では、擲弾筒での発射時に、この撃針グループは、慣性で後ろに残るので、すごい勢いで発射された手榴弾本体の信管を叩けるのだそうな。だから比重の重い真鍮製なのかな?>撃針キャリア
擲弾筒班ではごくたまに弾を逆さに装填しての爆死事故があったそうですが、正規の弾だと弾頭の瞬発信管、九一式手榴弾だと遅延信管を撃針が叩くので、ありえない話ではないでしょう。
ボディの刻み目のパターンが、金型の抜きに合わせて均等ではない・・・実はこれが正しいらしいです。実物も左右合わせで鋳造されていたようです。エルエスすげえ!
ところで、このキットはプラ製ですから、スカスカで軽い。モデルガンが軽いのは気にならないのですが、このキットには重りが欲しかったんで、写真の固まらないパテを封入しました。重さではそれでも実物にはかなわないけど、文鎮には使える・・・
お次はドイツ軍の卵型の39年式手榴弾です。 キットは寸法が実はちょっと小さいらしく、本当は本体がキットの信管+キャップまでの高さあるはずなのだそうです。
でもぐぐったら米軍のレポート?の計測はキットの寸法でした。
当時は資料なんかなかったからしかたないっす。
この手榴弾は、青色のプレス加工性の組み合わせのキャップをねじって外して、キャップごと引っ張るとマッチみたいに摩擦で時限信管に火がつくのでそのまま投げるっていう。
柄付き手榴弾と同じ点火方法です。
やっぱりシュ〜っていうんだろうな・・・
キットオリジナルだと、青い安全キャップは実物より便利なことに90度回すと外れるようになってますが、実物はそれだと危険だと思われたらしく、外すのに四秒ほどかかるネジ式で固定されています。
ので、ダイスとタップでプラパイプにねじ切った。
信管は本体にねじ込み式ですが、初期はこのように四角いボルト式だったようです。これだと掴みづらいので、後期はここから羽根を伸ばして手でねじ込みやすくなったようです。いろいろバリエーションがありますが、めんどくさいので四角で。
キャップを外すと元通りヒモをキャップに収めるのがめんどくさいですが、このようにねじねじしてから押し込むと結構簡単に入っていきます。
この手榴弾は防御用だったようで、塹壕の中に木製の棚を造り付けて、外すのに手間のかかるキャップを予め外しておいて、引きヒモを棚の曲がった釘にかけておき、いざとなったら手榴弾本体を掴んで引っ張ると引きヒモはキャップごと釘に引っかかって引っこ抜けて信管が点火してしまうので、そのまま投げつけるといった運用をしたようです。
なので、キットの引きヒモは一本ですが、実際は輪っかになっていたようですよ。