出ないかな、出ないかな?って出ることを望んでいたアイテムが発表されると生きててよかったって思います。
発表だけで終わっちゃうこともあるのだけれど、実際にキットが発売されたらこれはもう嬉しいのなんの。
一式双発高練は二十代の頃から出てほしかったアイテムです。
30年待ったよ。
陸軍が重爆や九九双軽や二式複戦といった双発機を採用すると、単発の練習機からいきなり実用機はハードルが高いという問題が出てきて、重爆などはまだ副操縦システムがあるからいいものの、軽爆や双発戦や百式司偵なんかは教官が一緒に乗ってとかできないし、かといって重爆や輸送機で教習というのはコスパが悪いということで、安くてお手軽な双発の練習機の必要が生まれて、このキ-54が誕生しました。
近所を散歩していてバス会社の教習をたまに見かけるのですが、教習生は複数のっていて、一度の走行で交代で複数を教習するようです。この練習機も同じように、複数の学生を乗せて一人の教官で多人数を養成できるよう、エンジン規模の割に広いキャビンを持っていることで、航法の訓練や、旋回機銃手の養成もできるというおまけが付き、さらにはお手軽さで連絡や軽めの物資や人員の輸送なんていうことにも使えるとなって、大変重宝され、しまいには対潜哨戒任務までこなすようになるという、ユーティリティーな機材として地味ながら大変な傑作機であったのです。
エンジンは直協や高等練習機と共通で、こなれていて入手性もよく、そういうチョイスもこの飛行機の「マーケティング」の優秀さを物語っていると思います。
脚が高級な折りたたみ式なのも、実用機と似た形式になっているので、学生が本ちゃんに移行したときに戸惑いが少ない利点があります。
キットはちょっと上半角足りなくね?胴体幅をもっと詰めて組むべきだったかも。
スペシャルホビーが最初に出したのは輸送機型の「丙」です。
部品や人員の輸送など、戦隊のちょっとした雑用連絡に使い勝手が良さそうです。
80〜90年台初期に、航空ファンで長谷川一郎という人が我が陸海軍機のイラストエッセイを隔月くらいで連載していましたが、この機体を扱った回もありました。
そのエッセイでは確か、戦闘機隊の予備の主脚柱を何本か運んでいたのを見た回想でした。
そういう実体験的なのを読むとキットが作りたくなるわけです。
このキットが出てくれたのは、たぶん、2012年に十和田湖から引き上げられた司偵の38戦隊機のおかげでしょう。
湖底に沈む青灰色のきれいな機体の映像に感動しました。
エンジン故障で不時着水して一人しか助からなかったそうですが、燃料に水でも混じってしまったのでしょうか・・・

こうして上から見ると、すごく無駄のない均整の取れたデザインだと思います。
キャノピはてっぺんが観音開きのハッチになっていて、今回は可動とか諦めた・・・キットのクリアパーツはシャープでいいと思います。
主脚を可動にしました。
折りたたみのシステムは九九双軽の技術提供を受けたとかどこかで読んだ気がするのですが、引き上げられた機体の主翼の写真とにらめっこすると、双軽の脚の油圧ジャッキは後桁前面に取り付けられてそこから二つ折れストラットの折り曲がり部分に作用するのに対し、この機体の油圧ジャッキは、どうやら後桁を貫通して後桁の後ろから二つ折れストラットの最後部上に伸びた構造を引っ張って上に持ち上げる仕組みのようです。油圧ジャッキの首振りはこっちのほうが小さい。
主脚のストラットはこんな感じで折れると思われ。
油圧ジャッキは見えないので作ってない。
実機はナセル下部が取り外し式のようです。
乗降ドアは可動にしました。
十和田湖から引き上げられた機体はドアヒンジが後ろで、内側に開きますが、戦中の写真にみられる機体の乗降ドアは前ヒンジで外開きのほうが多いようです。生産時期によるものでしょうか。そうならば、空挺隊の訓練という後付任務には内開きのほうが良さそうですから、内開きは後期型ということでしょうか。
可動部分を動画で上げてみました。今回は脚とドアくらいかしら。プロペラは吹くと回りますが、吹く音が多分不快になると思うので吹いてない。
相変わらず手間取ってて笑えるw
キットのピトー管はやる気ゼロの一直線タイプで残念です。
十和田湖の機体も戦中の写真も、上に持ち上がったタイプです。
自作した。
乗降ステップはこんな感じかしら。真鍮線で再現。
コックピットは座席とか4分割で気合入ってるのですが、操縦輪の形がちが〜〜〜う・・・
零式水偵とかと同じ形が正しいので真鍮線ねじって自作です。
あとキットでは計器盤前にアンチグレアシールド的なダッシュボードみたいな部品をつける指示がありますが、多分実機にはないと思います。
床板はなんとなく木製ってことにしてみました。
前出の長谷川一郎さんのエッセイに、この機体の機内の色は「エビオス」錠剤の色そっくりだったといっていた人がいた、という記述があり、引き上げられた実機の内部にもそれらしい色が見られて、感動しました。塗ってみたかったんだよね。この色で。
主脚カバーは救急双軽のものを参考にでっち上げてみた。90度の「コ」の字型ではなく、正面には45度くらい角度がついています。
よって、ナセル下面の脚注収容孔の形も、キットは多分間違っています。