パイパーL-4は、アメリカ陸軍ではグラスホッパーとか呼ばれていたようですが、元は民間用の軽飛行機である、パイパーJ.3「カブ」で、適当な観測機が欲しくなったんで、手っ取り早く民間に流通してる既成品を買ってきてしまったということのようです。
日本じゃ軍用の観測機を民間に流してたので、このへんは航空の裾野の広さの差を感じます。
キットは、二十年以上前に出たKPのものを、同じチェコのSMER(今までこのサイトでは「スミエル」と書いてきましたが、代理店さんの表記では「スメル」、グーグルさんで発音を聞くと「スマヤ」に聞こえる・・・「方向」って訳が出てきました)のパッケージに詰めたものが出てたので衝動買いしたもの。当時500円でしたが、いま1200円だったかな?
KPは新しい金型のJ-3/L-4を発売したので、古い金型をポーランドにあげたようです。
かば◎さんから情報をいただきました。
チェコの「SMĚR」なんですが、発音をカタカナ表記にすると「スムニェル」になるようです。
wikipediaのチェコ語アルファベットの「ě」の項には、次のように書かれています。
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発音は原則[je]であるが、チェコ語において、měとなると、mňe同様に読まれる。
白状しますと、このページを書いたとき、グーグルさんに入力したスペルは「SMĚR」でなく「SMER」でした・・・
改めて聞くと、「スミェル(ラ)」みたいに聞こえました。ヒアリングの成績散々だったもんな俺・・・orz
キットはKPにしてはクリアパーツとか素晴らしい透明度と薄さで、嬉しくて何個か買ったんですが、そのまま・・・確かコックピットのフレームがめんどかったんで手を付けられなかった記憶・・・
当時からエアクラフトアーカイブの素晴らしい図面とかもってたんですけどね。
塗装は、キットではD−デイのしましまデカールを貼るようになってましたが、今回はそれ以前、またはイタリア戦線ということで。
デカール貼るのがめんどくさかったわけじゃないんだからね!
塗装は上半分がタミヤのオリーブドラブ、下側をタミヤのニュートラルグレイで塗ってみましたが、下側も全部オリーブドラブって個体も多いみたい。
小さくてかわいい飛行機です。映画のバルジ大作戦にも出てた?
この飛行機の動翼の操作は三鴕ともケーブルによるもので、その、舵面との接続部はかなりの部分が機外にむき出しで、キットでは控えめなモールドで再現してあるのですが、テグスと真鍮パイプで作り直しました。
主翼上部の、エルロンを下げ方向へ引っ張るケーブルは、下部のものよりちょっと短い。この先が、主翼下の支柱に沿ってコックピット下部へ這っていき、操縦桿下部とつながっています。
主翼下部の、エルロンを上げ方向へ引っ張るケーブルは、結構飛び出ていて目立つので、ぜひ再現してみてください。この先は、主翼内で滑車によって90度胴体側に曲がり、コックピット上の主翼桁に沿って、左右が繋がり、つまり、操縦桿→エルロン上部→エルロン下部→反対側のエルロン下部→反対側のエルロン上部→操縦桿へ戻る、と、輪っかになっているのです。ケーブルというのは引くことしかできないので、輪っかにしないといけないのです。
乗員の乗り降りは右舷から。窓を跳ね上げ、サイドパネルをバタンと開きます。
蝶番は真鍮パイプに洋白線を通して扉に接着することで可動にしました。
ちなみに、この飛行機の固定の乗降用ステップは、地上姿勢で地上と平行になるように、さらに、足をかけやすいようにと、かなり把握しづらい角度に設定されているので、図面だけだとワケがわかりません。作例も正解じゃないかも。
このキットは、半端にエンジンが再現されていますが、ちゃんと左右のシリンダーがずれて配置されているのは素晴らしい。素晴らしいついでに吸気管やキャブレターやオイルタンクや排気管をデテールアップしてあげました。
エンジンの後ろには燃料タンクがあります。再現とかしなかった。
風防前に給油キャップがあって、キャップの中心にフロート式の燃料計・・・ただの棒・・・が付いてるけど再現しなかった・・・
カウリングは取り外せるようにしてみました。中身もニュートラルグレイで塗ってみたんですが、写りが悪くて暗い色に見えちゃってますな・・・明るい色じゃないとオイル漏れとかに気が付きにくい。
エンジン記念撮影。導風板はキットにもパーツがあるんですが、似てないんでアルミ缶で再現。
排気管はエンジン後部でまとめられて、排気の一部を抽出して暖房や吸気の温めにつかうらしい。排気管の集合部の前にある黒い豆みたいのはオイルタンク。本当はオイルタンクの給油管とキャップもないといけないんだけど省略・・・
戦後型のPA-18のレベルの1/32キットのエンジンと。かわいい!レベルのエンジンかっこいい!
操縦席床。操縦桿は前席と後席にちゃんと用意されていて、床に前後に走っているパイプに、前後に動くように関節結合され、前後の操縦桿はロッドで連動するようになってますがロッドは省略。
操縦桿のついているパイプは左右に操縦桿を傾ける軸であり、下側にエルロンの操作ケーブルが接続され、エルロンを動かす軸となっているとともに、内部に昇降舵を操作するロッドを仕組んであって、これが操縦桿を前後に傾けると、パイプの中を前後動して後端からエレベータの操作天秤?に動きを伝えます。
これで、操縦桿を前後に動かしても左右には関係なく、左右に動かしても前後には関係ない、独立した操作を可能にしているのです。
床板から左右二対飛び出しているTの字型フットペダルは、外弦側に直接方向舵の操作ケーブルが接続され、これも機首側で輪を閉じて輪っかとすることで、踏んだ側が方向舵を通じて反対側のペダルを押し下げるようになっています。
後席は狭いので、フットバーは前席の両側に追っ払われていて、後ろで操縦するときは、前席の両脇に足を突っ込んで方向舵を操作します。
キットのフットバーは間違いだと思うけれど、そういう型もあったのかもしれない。
尾輪は支柱が、胴体に固定されてスイングしない板バネそのもので、その先にキャスタ式の尾輪が付き、キャスタ部分だけ方向舵と連動します。方向舵との連動は、左右一本づつの引張りバネで、これは地上で人力で飛行機を移動させるときなど、必要に応じて外して尾輪をフリーにすることができます。
水平安定版の前の胴体側面下部に、小さな取っ手があるのをテグスで再現してみました。キットでは省略されてます。
この飛行機は、鋼管フレームにベニア&布張りで、主翼は写真のように、上に張り出した三角形の部分に前桁と後桁を取り付けるのですが、キットでは、この部分が三角ではなく「X」字になっちゃってます。
これは間違いだと思うので、こんなふうに真鍮パイプでフレームを作ってあげました。
ちなみに、左の壁の窓際には、前後に黒い玉型の握りのスロットルレバーがついてて焼いたテグスで再現したんだけど、肉眼じゃよくわかんないや・・・
この飛行機のサスペンションはゴム紐です。写真の真鍮パイプが「ハ」の字になった付け根ちかくの、隙間がある辺りに出たL字型の突起(作例では再現してません)に、ゴム紐を巻き付けておしまいという、第一次大戦機からの伝統的な方法です。荷重がかかるとゴム紐が伸びます。
上が着陸して重量がかかった状態。下が飛んでてぶら下がってる状態。うまく作れたのに、ゴムのブーツを取り付ける際に接着剤が回って、壊して作り直したら、一番上の写真で分かる通りちょっと不細工になっちゃった・・・
ちなみに、ゴムのブーツは熱収縮チューブを別の真鍮棒に巻きつけて熱したのを切り開いてはめ直してます。
初期の型は無線のアンテナの長さが足りなかったらしく、写真のように操縦席から伸ばしたアンテナ線の先に、小さな吹き流し—ドローグ—をつけて、これでアンテナ線を機内のウインチから引っ張り出していたようです。後席左舷に巻取り用のハンドルがあります。
伸びるようにはしてない。はいはい、わたしの負けですよ・・・