LaGG-3という飛行機は、なめらかな全木製のモノコック構造で、機首に20ミリShVAKモーターカノン+12.7ミリBS機関砲x2+7.62ミリShKAS機銃x2、計5門火力集中装備という非常に野心的な戦闘機なのですが、フェノール樹脂でおがくずを固めたベークライト(?)モノコック構造が予想を超えて重く、1050馬力の液冷エンジンではまだアンダーパワーだったということで、パイロットからは重たくてイヤと言う残念な評価だったようですが、エンジンをパワーアップしつつ、欲張りな機首武装を減らすなどの軽量化に努めながら、終戦まで頑張ったという、なんかだめっぽいけど素敵な飛行機なのです。
液冷エンジンに見切りをつけて、堀越二郎が聞いたら引きつけを起こすような大直径星型エンジンをなんのためらいもなく安直に載せ替えたLa-5に発展するのは、また別のサクセスストーリー。

パイロットから重たくて嫌われた他に、初期ロットでは、謎の空中分解事故が多発。ロシア語でのLaGGの頭文字に当てた、「ピカピカの棺桶」という自虐的なあだ名もついたそうですが、これは、図面のミスで、外翼を胴体に結合するボルト穴の径が、ボルトの径より小さいので入らなくて怒った工員がハンマーでムリヤリ叩き込んだのでクラックになったところが飛行で裂けたのが原因だったとか。ソ連すげえ!
そんなLaGG-3大好きです。
好きなんで、アルファ公団(パッケージイラストかっこよかった!)とか、エマーとかのキットは持ってたんだけど、資料なくて作れないうちにソ連が崩壊して、資料も手に入るようになってきました。そこで現れたのが、この、トコのキットです。
その後LaGG-3のキットが出ないんで、このウクライナのキットがベストです。
トコって、その後ローデンになった?
キットは、セリエ1、5、11、35、66が作れる豪華な内容で、そんなら胴体と主翼下部とコクピットとプロペラをもうひと組み入れてくれれば二機作れるのに!みたいな豪華な内容です。
今回は最初のロットであるセリエ1を組んでみました!というか、じつはこのキットをリリース直後にやっつけようと思って組みかけたのを十年近く放置してたのですよ。当時はこの飛行機の後期型の前縁スラットとかよくわからないんで、スラットのないセリエ1を選んでたんだね>当時の俺・・・
当時悩んで投げ出した主脚可動をなんとかやっつけれたのが十年後。今手に入る素材でやったほうが遥かに楽でした。投げ出した当時のぼくに同情。
油圧ジャッキであっさり引き込むというイタリア的な方式です。
主脚カバーは工夫されていて、我がゼロ戦や、アメリカのP-47みたいに、引き込んだ際の上部の隙間を別扉でふさぐのではなく、Fw190や我が四式戦のように、一枚の板で塞げるデザインです。四式戦はこの飛行機からパクったのかな?
キャノピーはクリアバックスで開閉可動に。
フロッグ/エマー用なんで風防が高すぎかも。
液冷機なのに意外と太い胴体。しかし、この太さが空冷化にとってはありがたかったという皮肉。
ちなみに、迷彩色はタミヤエナメルのXF-65とXF-27の上面に、XF-23にクリアブルーとか足したカスタム下面色。
この飛行機のエンジンは、イスパノ・スイザをソ連で発展させたもの。
日本人が見放したイスパノ・スイザを、ロシア人は地道に驚異的に発展させていくのです。アメリカ製のガソリンを使えたという役得はあったものの。
今回プロペラはモーターカノンの砲身を胴体に固定して、そこにプロペラを止めたので、プロペラが回転してもモーターカノンの砲身は回らないというこだわりにしてみました。
プロペラは息をかければ軽快に回ります。
キットのデカールはプロペラのまでついてて素敵なんだけど、台紙が真っ白で注意書きの上下とかわからなくなっちゃったんで・・・
デカールはいい具合の艶です。
ラジエータとオイルクーラーのフラップはアルミ板で作って可動に。
このキットの計器盤は、前期後期で二種類のデカールが入っているのですが、最近見る資料では、デカールのような黒ではなく、なんかグレイ塗料っぽい。
コクピット内壁はアルミ塗装の銀色のようです。
キットでは照準器が再現されてないんで作ってつけた。
この辺が、十年寝かせていた間に出た新情報でしょうか。
パイロット背後の防弾板は、イ-153以降共通の規格品ぽいですね。キットのはちょっと形違うかも。
主脚は真鍮パイプと洋白線でフルスクラッチ。可動部はこんな感じで。
結構苦労したけど、およそ十年ぶりに成仏させられました。

追記:書き忘れたうんちくを。 むかし、ソ連の飛行機で、燃料が消費されて気化ガスがたまりがちな燃料タンクの開いた空間に、排気ガスを吹き込んで爆発防止にしたものがあると聞いて、なんて頭が柔らかい発想なんだろう!
燃えた直後のガスをガソリンタンクへ入れるってのは直感的にはヤバそうに見えるけど、たしかに、燃えたあとのガスなら、普通の空気よりも燃焼する心配はないじゃん!
というのが、どの飛行機だったのかわからなかったんですが、この飛行機でした。
製造工場によって、燃料タンク3個のものと、5個のものがあったらしい。
ヨーロッパ機には珍しい、翼内タンクを持った飛行機です。