「同志シチャーギン、君たちはもうちっぽけなT-26などに乗る必要はない。アメリカが君たちに強力な戦車をくれたのだ!」
隊長のメゲーエフ少佐にこう聞かされて、我々の心は躍った。二日前の攻撃で、忌々しいファシストどもの狡猾な罠にはまり、我々の中隊はほぼすべての戦車を失ったのである。
首を長くして待ちわびる我々の目の前に、やがて、森の中から、補給隊の兵が操縦する「そいつ」が姿を表した。
「なんだよこれ!粘土でできてるのかぁ!?」「そいつ」を見て、装填手のセルゲイが素っ頓狂な声を上げた。
我々は、「そいつ」の周りに並んで、つくづくと「そいつ」をよく見てみた。
アメリカ製のM3中戦車については、敵味方識別教育で絵を見せられたから、それがどんな形をしているかは知っている。でもこいつは、なんかちがう。M3なら板で作られているはずだ。でもこいつは粘土でできているようだ。わたしが識別教育で教わったM3戦車は不器用な子供の工作のように不細工でいびつな形だが、こいつはそれに輪をかけて不気味にいびつだ。
出し抜けに操縦手のワーニャが我々の新戦車にナイフを突き立てた。当然というか、ナイフは塗料を削っただけだった。「よかったな!粘土で出来てるわけじゃねえや!ちゃんと鉄だよ!」
我々は笑いだした。こんな戦車で襲撃をしたら、ファシスト共も笑い転げることだろう。
無線手のヤーシカが戦車の側面に「Глиняный(グリニャイ=粘土号)」というニックネームを下手くそな筆記体で書いた。
上記はフィクションで、M3A1中戦車はレンドリースには回されなかったようです。でも、この奇妙でブッサイクな戦車がソ連軍でオペレーションされてたら楽しいだろうなって、ソ連軍のマーキングにしてみました。
初めてこの戦車の写真を見たのは何年前だったか。
思わず吹き出してしまったのを覚えています。
出来損ないの泥団子みたいな形です。でも好きになっちゃったのです。
ようやくタコムが出してくれました。でもね・・・(後述)
M3A1は、車体上部を鋳造でやっつけて大量生産の効率化を図ったタイプでしたが、準備ができるまでにM4A1ができちゃったんでそっちに移行して、完成したのは300台ほどだったそうで、全部国内の訓練部隊に回されたそうで、全部星型ガソリンエンジンでしたが、そのうち30台ほどは実験的にディーゼルエンジンを積んだそうな。キットはガソリンエンジンの初期型を再現しているようです。
後ろからは意外にも普通の戦車に見えますな。
機関室上の工兵工具は好きに塗ってみた。
75ミリ砲が見えないと結構まともに見えることに気がついた・・・シャーマンぽいというか。
左から。うん、きめえ・・・かっこわりい・・・
でも好き!
真上から。M3のレイアウトを維持しつつ、防御力を維持しながら重量が増加しないよう考えて上部構造をデザインしたのでしょうが、やっぱり出来損ない感は拭えません。そこが好き!
機関室上の工兵工具は、数少ない当時の実車写真ではキャタピラのテンション調整用レンチが見当たりません。あとバールも。キットではバールはつける指示がありません。
固縛するベルトとバックルを、ベルトは鉛板、バックルは金麦缶の切り抜きで作ってつけておきました。金麦缶を0.5ミリのドリルで切り抜いてバックルを作る方法は今回思いついたのですが、真鍮線で作るより歩留まりがいいし早く作れるから、次からはこのやりかたでいこっと。
乗員関係のハッチやポートは全部可動に作ってみました。
キットは可動じゃないけど全部別部品なのは◎。
開くのは車長ハッチ、車長砲塔の左右のバイザーフラップ、操縦手のビジョンポート、車体左右のハッチ、後面のでかいハッチ、全4ヶ所のピストルポートです。うん、開くとかっこいい!
車長ハッチは風呂の蓋みたいにふたつに折れ曲がって開きますが、38(t)の無線手ハッチとは逆方向に折れ曲がります。キットのハッチパーツには全くモールドがなかったんで許せないのででっち上げた。
ヒンジは金麦缶+真鍮線の嘘んこヒンジ・・・
この戦車の砲塔は普通に三人でオペレートするのは近代的です。どうせならイギリスの6ポンド砲くらい載せてほしかったす。
車長用銃塔の左右には開閉式の蓋のあるビジョンブロックがあるので開閉可動化。ドリル通すだけでできます。
車長用の機銃は上下だけではなく左右にも振れます。んで可動に。
この銃塔は子供向けにはかっこいい!なんですが、イギリスからはいらんて言われて、自国でも次のM4では採用されず、何故か戦後のM48辺りから復活しますが、あれは核戦争想定してんのかな?でもM48も輸出されるとドイツやイスラエルじゃ銃塔いらねって取っ払われちゃいます。
厨ニっぽくてかっこいいのにね!
砲塔のピストルポート。ちゃんとアームを可動再現してますって自己主張です。
他の3個のピストルポートも同様に処理してます。
操縦手のバイザーフラップも可動に!この戦車ではバイザーフラップはこのように手動でつっかえ棒を展開して車体外のラックに乗っけるだけ!・・・たぶんラック側にロック機構があると思う)・・・再現しました〜。可動で!
このキットはデフォルトで75ミリ砲とその照準器が左右方向に連動します!おまけに、照準器は間接照準に備えて独立して動かしたりもできますが、ちょっと自由すぎるので砲に合わせて回転するように固定しました。左右に首を振れる機構は残した。
車体左右のハッチはピストルポートを可動にしてさらに自身も開閉可動化。内側を白く塗ったのは、なんとなく。太陽が眩しかったから。
開閉レバー短すぎた・・・orz
しかし、このハッチ、薄っぺらくて不安です。案の定廃止されたけども。
砲塔右後ろのこのでっかいハッチですが、これは乗員の出入り用ではなく、75ミリ砲の積載用ハッチです。75ミリ砲をクレーンで吊ってここから差し込みます。
裏は資料なかったんでフィクション。つっかえ棒とか無いかも。
M3の他の型では、この位置の垂直装甲板がネジ止めで取り外しでき、ここから75ミリ砲を積載、装備します。
なもんで、A1でもこのハッチは普段はつかってないんじゃないかな?
キットはデフォルトでボギーが可動の素晴らしい部品構成なので、起動輪と誘導輪を回るようにしてフリウルのキャタピラをおごりました。
持ち上げるとだら〜んてするのいいよね。
ここまでするならポリエチレンのベルトキャタピラも入れてくれればいいのに。
ものを踏むと楽しい。
ところで、フリウルのキャタピラって遊んでると伸びてくるんで、完成時はぴっちりくらいでいいと思います。
今回は片側77枚使いました。
シャーマンはキャタピラのコマ数が他の国のに比べて少ないのも特徴ですね。いいことです。
うんかっこいい!
醜いじゃなくかっこよく思えてきた・・・
75ミリ砲の下のカーキ色のものは、7.62ミリブローニングM1919車載機銃用の三脚です。
アメリカの戦車兵は普通に車載機銃を持ち出して下車戦闘します。
ドラグーン的に。
教育マニュアルにも書いてある。
アンテナにはウエーブのAスプリングを仕込んで自由に倒れるようにしてみた。
でもってセラミック部分をおしゃれに塗り分けてみました。
前に言ったように、待望のM3A1をようやくタコムがインジェクションで出してくれました。でもね・・・
なんかかっちりし過ぎなのよ。あと、操縦席左の無線手席近辺のアウトラインが、多分写真でマジックで引いたラインのほうが正しいの思うわけなのよ・・・もとのままだとなんかフランス戦車みたいで粘土感およびやっつけ感がないっつ〜か・・・
なもんで、左舷には裏からプラバンやらポリパテを裏打ちして削りまくってあげました。ポリパテは自動車用のやつ。安い。
無線手のピストルポート穴は予め切り取って避難させてくっつけ直した。大手術でした。
あと全体にエッジを丸めた。ミニアートからこの辺ちゃんとしたA1がでたらいいな〜って思いました。
鋳造戦車これくしょん。
M3でけえ!でも、フランス人はみみっちすぎる。