萌子(もへこ)につゐて萌子(もへこ)の破壊的なイメエジを僕は虹寝とゐふインタアネツトの某匿名画像掲示板の一室で得た。pomしていた僕はその画像の前でブラウザアのスライダアを停止させざるを得なかつた。其処にはひとつの女の要素をもつた妖怪が居た。前髪に隠れ乍も幽かに覗く眉が眼の媚びを強調してゐる。その直ぐ下にはぬこの写真から切出したと思はれる笑つたやうな微妙に歯並びの悪い口がコラアジュして有る。身体は瓜ざね顔の輪郭が兼ねて居り妖怪らしく小さな手足が付いて居て、左手は媚びの表情に合わせて鬢を掻きあげんとして居る。それが不気味で有ると同時に、何か味噌豆の仔のやうな一種ユウモラスな雰囲気を醸して居た。是は天才の仕業であらう。此処に笑の神の祝福があつた。 萌子の縁起はムウミンである。匿名の一人の天才が、アニメエション漫画の美少女の顔を瓜ざね様にムウミントロオルに似せてコラアジュし、更に別の名も無ひ天才児が其の瓜ざね顔にぬこの口を取り付け、最初下方に在つたその口をまた別の記号化の天才が目と目の真下の普通の人間で有つたら鼻がある筈の美的に非凡な位置に移動させた。此処まで来ればその顔に手足がつゐてしまふのはケイアスの支配する虹寝ではもう時間の問題であつた(併し是が萌子の意匠の最大の天才的要素で在るのだが)。是をgif化する事で左右に反転アニメエションさせればチャアミングに奔る事も出来たのは最早言ふまでもあるまい。 萌子は虹寝といふ匿名の為せるケイアスによつて産まれ、恰も砂漠のシムウンのやうに唐突に巻起つた熱病であつた。それはひとつの衝撃であつた。そして唐突に消えた。 昭和八拾年四月 |
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