「ファニーウォー」期間が終わって、ドイツがフランスをあっという間にやっつけて、イギリスの大陸派遣軍を身ぐるみ剥いで大陸から追い出してしまうと、イギリス政府はとても国産兵器だけではドイツと戦えないと判断し、使える兵器はなんでも輸入しようとします。
フランスも同じような考えで、間に合わない国産よりも今手に入るアメリカ製兵器を調達しようとしていたのが、手に入る前にドイツにやっつけられてしまったのです。
フランスがアメリカから買い付けて間に合わなかった兵器を押さえたイギリスは、戦闘機ではP40に目をつけます。P40は日本やドイツバンザイな目で見ると「出来損ないの劣等戦闘機」ですが、イギリスから見たら安くて数がすぐに揃って、頑丈で、性能はわかってるので博打的な買い物ではなく、パイロットの大量速成さえなんとかなれば数という戦力として見込める機材だったので、たくさん欲しい、カーチス製じゃなくてもいい、という視点から、手の空いているアメリカのメーカーにP40の生産を打診します。
打診を受けたノースアメリカンは、色気を出して、自社の鬼才設計者、シュミードに「P40に似た自社製を作れるかい?」と聞いてみると、シュミードは「P40は偽物だ!食べられないよ!俺に3ヶ月くれれば、本物の戦闘機を作ってみせるぜ!」と豪語したのでイギリスはそれに賭けてみることにします。
実際はノースアメリカンはその前から戦闘機に関する基礎研究、層流翼やラムダクト周りの設計テクニックを積み上げていたのでしょう。
こうして伝説の駿馬「ムスタング」が誕生しました。
「ノースアメリカンが提供する独自の戦闘機」といっても、ユーザーのイギリス空軍としては、P40でパイロットの訓練を始めているので、操作系などはまるっきり変えられると困ります。そこで、この飛行機の計器とかはできるだけP40に寄せられています。一番わかり易いのは燃料タンクと燃料計で、床下にある左右メインタンクの燃料計は、P40と同じく床板に開けられた穴の中に左右独立して存在します。胴体タンクの燃料計はパイロットの左後ろに漫画の潜水艦の潜望鏡のように立ち上がっています。パイロットは左を振り返って残量をチェックするのです。
エンジンもP40と同じアリソンのV型でしたが、この飛行機は同じエンジンでP40をぶっちぎる性能を見せます。イギリスでこの飛行機に乗ったロールスロイスのテストパイロットが「これにマーリン載せたらもっとすげえんじゃね?」といったので、米英両方でマーリンを搭載したテストをすると、もうアリソンには戻れない高性能を発揮します。
それが今回作ったP51Bです。
イギリスとノースアメリカンが勝手に作ったムスタングなので、アメリカ陸軍航空隊は無視を決め込みますが、イギリスでの活躍を聞いて、渋々P51として採用します。この飛行機のすごいポイントは、既成概念にとらわれずに、気流による変形の可能性を排除した厚板で構成したモノコックとも言える層流翼、これは小骨も省略できるので工数も少なく、コストダウンに役立ち、P40以下の値段で提供できるという化物的な利点です。さらにラムエアダクトで効率よく吸い込んだ大量の空気を高カロリーのマーリンエンジンで加熱した冷却液と熱交換して膨張させ推力に変えるラジエータ機構、ライトニングと違って急降下時に過速度に陥って衝撃波で操縦桿がロックしてもエンジンを切れば回復できるという機体特性、そして巡航速度550km/hでゼロ戦より遠くに飛べるという驚異の長距離航続性能など、オーパーツ的です。
ぼくはP51ではA36が一番好きなのですが、つぎにB型が好きです。
ながらく作りたかったのですが、1/72ではまともなキットが出ていませんでした。一番マトモなのがモノグラムでしたからね。
今回、アルマホビーが凄まじくできの良いキットをだしてくれました。
実機と違って高いけども・・・
B型はD型とはいろいろ違っていて、カタログだけならD型はデチューン版ともいうべきだと思いますが、視界とか整備性とか、いろいろカタログに出ない、実用上の改良点がもりこまれていますね。
今回も各部可動部分を仕込んでみました。
各部可動の様子は動画で。
尾輪引っ込むとことかフレームに入ってなくて笑うw
塗装は初期にドイツに爆撃機の護衛でついていったパターン。
P47はP51を見ればBF-109だと思って攻撃し、タイフーンを見ればFw190だと思って攻撃してきたそうで、狂犬ですな。
というわけで狂犬よけの識別表示で白帯を入れたそうな。
このキットは横浜のボークスで買ったんですが、見事にデカールがパクられてるのに気がついたのは買って帰ったあと。
ボークスはこういうの多い気がする。
クレーム入れてもたぶん無駄に疲れるだけだと思ったので、以前大量ストックしたハセガワのB型、クソキットなのでもう組むことはないだろうストックから持ってくることにして、アルマのとは翼断面の形が違うから多分合わない白帯デカールは使わないで手書き。
P51のA型からB/C型までの主翼付け根から機銃までの前縁て、D型と違って張り出しは収容したタイヤの分ギリギリサイズで、写真で赤線を引いてみたように、機種下面に回り込むように垂れ下がっています。これを無視する、気が付かない、D型と同じだと思い込んだキットのなんと多いことか・・・
垂れ下がっているので、真上から見るとちょっと張り出しているだけの部分が、後ろから見るとただの直線、前上方から見るとまるでD型のように張り出して見えるという、造形家泣かせのトリッキーな主翼前縁なのです。
80年代末期、それとも90年台だったかな?モデルアート誌がP51Bの特集をやったときに、ライターが、モノグラムのB型について、「前縁付け根の張り出しが控えめなのが欠点」とか書いてくれちゃって、それを真に受けたハセガワがD型と同じように張り出しちゃったB型のキットを出してくれたときはプロのライターを呪いましたよ。
モノグラムが正しかったのです。
写真は下がアルマで上の茶色いのがモノグラム。
すごいよモノグラム。
当時素晴らしいFw190やゼロ戦のキットで胸を膨らませてP51Bを待っていた、その期待分の失望が今も甦ります。怨みは深し、模型ライター。っていうか真に受けるなや!
それとももう当時ハセガワのキットは金型が出来てて、その広報を鵜呑みにしたライターがそのまま書いたのかしら?
まあ、アルマが出るまでいきててよかった。
当時ハセガワのキットを修正するために自作した修正パーツを発掘しましたよ。
いっぱい作りたかったんでシリコンゴム型で複製したの。
ラジエータとオイルクーラーのフラップを可動に。
やっつけに近かったA型ではラジエータ周りは今一つで、マーリンを積む改造のついでにレイアウトや形状を見直した仕事の速さ、手際の良さは素晴らしい。
ピトー管はA型で前縁から槍みたいに出てたのがBf109みたいな位置に。
折れないように金属線で作り直しました。
フラップは左右連動させました。
ちょっとガタがあるw
キットには初期の涙滴型落下タンクの他に後期のボール紙タンク、爆弾がついてきます。
取り外せるようにして挿し替えて遊べるの。
主脚は、飛び上がって自重から開放されて伸びた状態で引っ込むことに特化した収容部の形なので、トルクリンクライブで伸び縮みするようにしたけども、じっさいは別段伸びなくても収まってしまったw
ロック機構作ったけどいまいちだったのは負けですorz
アルマのキットのすごいこだわり。
後部燃料タンクから上に突き出た燃料計と、無線機。防弾板。
床板は木板の個体もあるみたいです。黒いのも木板にゴム引いてるのかもしれない。
胴体張り合わせ前の記念撮影。
尾輪にはりん青銅版で作ったクリックで下げ時の固定をしてます。
テグスで尾輪扉とある程度連動しますが、いまいち。負けですw
ちなみに、キットの操縦桿は長すぎる気がする。
照準器は自作。
この飛行機はP40をエミュっていう割にはキャノピの開閉デザインはBf110みたいです。
胴体側にこんな感じの可動基部をつけて、底に透明部分を貼り付けました。
このあと胴体側の蝶番が壊れたので諦めて洋白線で胴体と結合しましたwだめじゃん・・・可動はするよ。以前よりいいくらい。
アルマのキット、P51B/C型のベストキットです。あとはモノグラム。そのほかはハセガワもエアフィックスもアカデミーもレベルもブレンガン(これはAだったかも)もMPMも全部ゴミです。