フレデリック・フォーサイスは、「ジャッカルの日」など長編のエンターテイナーとして有名ですが、実は短編の名手でもあります。
クリスマス休暇に西ドイツの駐留基地から、愛機ヴァンパイアに乗って本国へ帰ろうとするあるイギリス空軍パイロットの体験を綴った、「シェパード」は素晴らしい航空ミステリーです。
ヴァンパイアの出てくる小説には他に、ギャヴィン・ライアルの「本番台本」という傑作もあって、こういう秀作を読んでいるとヴァンパイアを作りたくなるのですが、ヴァンパイア資料全然ない!なもので資料が出てくるまでじっとエレールのキットを死蔵していたのですよ。
エレールのバンパイアはFB.5というサブタイプとしてキット化されていますが、多分フランスライセンス版のミストラルありきからそのバリエーションでヴァンパイアにされたのでしょう。ミストラルとは胴体とジェットノズルとエアインテークと座席が別パーツになっています。「FB」なのに外部装備はなし。
ただし、イスパノMK.5は多分20ミリ機関砲としては当時最強のスペックだったので、それを4門集中装備したバンパイアやミーティアの地上掃射は、田舎の村を全部廃墟にできる威力であることは確かでしょう。
この飛行機は実は1943年に初飛行していて、イギリス空軍がその気になったなら、戦争には十分間に合ってHe162と戦えたのかもしれませんが、デ・ハビランドにはいま戦力になるモスキートの生産を優先させたので、あえて戦争に間に合わせませんでした。アメリカのP-80やベアキャットといい、戦勝国の余裕と、ぽっと出のおもちゃではしゃいだりない冷静さ冷徹さを感じます。
デ・ハビランドは、お尻に噴射口を持たなければいけないジェットエンジンの装備方法として、双テイルブーム方式を選びました。
ヴァンパイアでうまく行ったのでそのまま見直しをせずヴェノム、ヴィクセンと行ってしまったのは、超音速時代に向けての発展性において、進化の袋小路にハマったと言えるかもしれません。アメリカやホーカー・シドレーと比べて、ちょっと頭硬かったのかも。
エアインテークにいっぱい仕切り板があるのって、松本零士や宮崎駿はかっこいいと思ったんでしょうね。ぼくもかっこいいと思います。
裏側を見ると、目につくのはメッサーシュミットやP-38みたいな昇降舵のマスバランス。ジェットであぶられないのかなってちょっと心配になりますが、案外これが吹かれることで昇降舵が頭上げ方向に補助力を得てたりして・・・しねえかw
塗装は第二次大戦からの制空迷彩。この色合い、好き。
今回も当然脚は可動にしましたよ。ようやくどうなってるかわかったのです。
エアブレーキも可動にしました。この飛行機のライバルはHe162だと思うのですが、あっちはエアブレーキはありませんね。ガソリンエンジンのプロペラ機だとエンジンのスロットル反応は早いし、スロットルを閉じれば減速したプロペラがある程度エアブレーキになったのに対し、ジェットエンジンは最大出力こそプロペラ機を凌駕してるものの、スロットルの反応がのんびりしていて機体の空気抵抗も少ないからエアブレーキで原則方向をコントロールしようという、ジェット時代のあたらしい工夫がここに見えます。ドイツではそういう形跡はないですね。Ho229のは方向舵代わりですし。
ひっくり返すとワンコのお腹みたいって思うのがぼくだけでしょう、はい、ぼくだけですね・・・
この飛行機の機首って、犬顔のコウモリっぽいと思うんですよ。
昔出てた「週刊エアクラフト」のヴァンパイア特集号の見出しが「吸血コウモリ」ってなってて、当時はなんだそれ!って思ってたんですが、作ってみたら一理あるかもって。
主脚は評論家がなべてけなす外方引き込みですが、重要なのは轍間距離で、この飛行機でもここしかないていう絶妙な位置だと思います。
形になったところで嬉しくて記念撮影した。
前脚の可動工作記念写真。この飛行機の引き込みストラットは、前脚柱から三角形に張り出した骨の先に結合されてるんで、実は外からはあまり見えません。
前脚はストラットもカバーもトリッキーでとても悩みましたが、まあこんなかんじですよ。ぴったり収まるように作れたので気分がいい。
このキットはミストラルがベースっぽいので、キットの操縦桿はただのスティックですが、実機ではFB.5あたりだと英国空軍伝統の輪っかにブレーキレバーのついたコラムなのでそのように作りなおしたけどうまく写真撮れませんでした〜orz
スロットルレバーの自作。
首輪式の飛行機の宿命で、かつこのキットのテイルブームはほぼ無垢なので、尻もち防止のおもりを仕込まなければいけませんが、機首は前脚の可動のために入れられ・・・嘘です入れ忘れました!orz
なんでガンベイを切り抜いてカミツブシを仕込みました。写真のでは少なくて、もう2粒入れてようやく尻もちつかなくなった。