夢の本

旅先の街角で本屋を見つけた。
古そうだが 小奇麗なその本屋へ 引き込まれるように入った。
客は誰もいない。平日の午後 誰もいなくても気になる時間帯ではなかった。
入り口のレジに人の良さそうな白髪の老人が 落ちかけのメガネを気にしながら本を読んでいた。
しばし 店内を見渡した。新書から専門書まで この店の大きさのわりに揃っているような感じがした。
 漫画や雑誌のあまり置いてないのも子供たちが来店せず 小綺麗な落ち着いた雰囲気になっているようだ。
 別に探している本があるわけでもなく 時間にも余裕があったので 奥の方へと足を進めた。
 ふと不思議な風が 耳元へ 「ねぇ」と話し掛けているような風が吹く
う? 店内のエアコンの風かなと思いつつも その風の方向に身体の向きを買えた。
もう風はやみ 目の前に一冊の本が、
派手な本ではない、そのデザインはシンプルで
夢の一文字だけの本
今にも棚から飛び出しそうに 俺が手を出すのを待っているかのように・・
この本が 俺を呼んだ?まさか?しかし気になる。
そっと手を伸ばす。やはり俺の手の中に飛び込んできた。
うふふ 錯覚か?
ひとりニヤリと微笑み その本を見てみる
表紙は シンプルに「夢」そして〜貴方はどんな夢が見たいの?〜
とサブタイトルがついていた。
淡いブルーの台紙に 風に舞うタンポポの種、そんなイメージの本だった。
表紙を開け 前書きを読んでみる
この本は選ばれし者だけに 与えられるものである。
貴方が描いてる世界を 夢の中で再現する不思議な力を持った本です。
と書いてあった。
2枚目のページを開こうとしたとき
携帯が鳴った。もう彼女の買い物が終わったのだった。
急いで その本を買っていこうと 値段も確認せずレジへ急いだ。
先ほどの老人がメガネの奥から俺を覗きこみ その本を見て袋に入れた。
「はい ありがとう。」というとまた本を読み出した。
「え?おいくらですか?」あまりに自然に渡されので このまま帰りそうになったが 代金を払ってなかった事に気づいて声をかけた。
「それは 無料の本だからいいじゃよ。楽しみなさい。うふふ・・・」
本から 眼を離さず老人は 答えた。」
「なぜ?」と言いつつも 彼女が待っているので 「いいんですか?」のの問いに「良いんじゃ 良いんじゃ」と言う老人の声を聞きながら店を出た。「すいません。」と店のドアを閉める為振り返ると レジには老人の姿はなかった。
何処かへ行ったのかなと思うまもなく彼女がやってきたので そのまま忘れてしまった。

「何を買って来たの?」「探し物はあったの?」の質問に 「内緒 うふふ♪」彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「貴方は何を買ったの?」逆に彼女から質問が返ってきた。
今の本屋での話をしながら 宿泊先にホテルへ戻った。
不思議に思えたところは あえて話さなかった。

食事を済ませ ふと先ほどの本が気になって 袋から出してみた。
そこへシャワーから上がった彼女が やはり今日買った袋をもって俺の脇に 座った。
「それ? さっき買った本?すごくシンプルなデザインだね。面白いのかな?・・・・・今日買ったのは、これ」
「珍しい花の種 見つけたよ♪ お庭にいっぱい花を咲かせて その花の中を 一緒に探検しよう♪ね。うふふ」
「うん」
手にした本を なにげなく 開いたページに 綺麗な花壇の写真が
そして何処からともなく 花の香りが・・・・
「その本見せて〜・・・・綺麗なお花でいっぱい こんなところへ行ってみたいね〜」そういうと 彼女は急な睡魔に襲われたようの 眠りの世界へ 疲れたのかな?彼女の肩に上着を掛け 今 見ていた本を手に取り 今 君はこのお花畑で眠っているのかな?起こしちゃわるいね。
自分の椅子に座ったところで なぜが俺も急に 花の香りを感じ眠りの世界へ落ちていった。・・・・・・・・・・

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