居酒屋W
「星が見たい・・・・・」
「う?・・・・行こうか♪」
「えっ♪ 連れて行ってくれるの?〜ほんと?」
「何処なりとも お連れしますよ〜姫♪」
「姫だって♪ いつ連れて行ってくれるの?」
「今すぐでも いいよ・・・・・今日予定ないし・・」
君は 俺が注文のしたビールの栓を抜く手を止めた。
「貴方まだ 飲んでないもんね♪・・・待ってて!」
君は カウンターから飛び出すと 入り口の暖簾を外し 手早く 臨時休業の張り紙を出した。
「おいおい〜 いいかい?店?」
こちらを 振り向いた君は ちょっと頬をふくらませ
「嘘なの?連れて行ってくれるって?」
「えっ 嘘じゃないよ 連れて行くよ・・・」
俺は 慌てて答えた。
微笑んだ君は 「行こう♪」と俺の腕にしがみ付いてきた。
「お風呂・・・・露天風呂に入って星が見たい・・・」
俺の胸で 君がつぶやく・・・・君は 店を開けてから 俺の来るまでの間 一人で飲んでいたみたいだった。
君の香りが アルコールの匂いと一緒に 俺の心に届く。
山道を 小一時間走り 友人から聞いた事のあった露天風呂へ着いた。
「着いたの?」
酔いの為 睡魔に襲われ仮眠していた君が眼を開けた・・・・
「この 少し上にあるはずさ。大丈夫?」
いろいろな意味を込めて君に聞いた。
「えっ?・・・・大丈夫よ♪」勘の鋭い君は 微笑と同時に 言葉を返してきた。
「あのね、昨日のお店・・・・変わったお客さんが・・ね」
車を降り いろいろ話しながら さらに山道を登り山の露天風呂へ着いた。
ランプの灯かりの脱衣所で 君は無口になった。
「あっち向いてて・・ね」
「う? ランプの灯りじゃ 暗くて見えないよ。」
「でも・・・・あっち向いてなさい♪」
「うん わかったよ。でも外は灯りが無いみたいだから 一緒に行こう。準備出来たら声かけてね。」
俺は 裸になるとタオルを腰に巻き 窓から外を見ると夜空一面に星が輝いていた。
「綺麗・・・・・ お待たせ♪」
バスタオルを素肌に巻いた君が 俺の隣りに並び 窓の外へ視線を向けた。
星の明るさの中でも 彼女の肌の白さがわかる・・
「白い肌 自慢なの・・・見せた事あまりないけど・・・」
俺の視線を感じた君がつぶやく・・・そして思い出の中を覗いたみたいに つぶやく。
「さぁ 行こう あの岩陰がお風呂みたいだね。ここ俺もはじめてだから・・・・」
「誰もいないね・・・・」
「うん でも聞いた話だけど お猿さんも入りに来るらしいよ♪」
「え〜 良いね♪・・・・熊は?」
「おいおい この辺には熊はいないよ」
「パンダは?」
「うふふ♪ここは 中国じゃないよ。」
「うふふ♪」
「星に手が届きそう〜♪星がいっぱい〜♪」
「上ばかり 見てると危ないよ。」
「大丈夫よ 貴方の手を握っているから〜」
そう言うと 君は俺の腕を強く握った。
「お湯 熱いかな?・・・・ちょっとぬるめだね♪・・・良かった♪ちょっと酔ってるから・・・・・貴方に・・うふ♪」
彼女は身体にお湯を掛け 湯の中へ 俺も後に続いて入る。
「最高!!気持ち良い♪・・・・・ありがとう。連れてきてくれて♪」
そう言うと君は バスタオルを外し 全身で秋風を浴び湯に浸かった。
眩しかった。星明りのみ闇でも 眼も慣れこの距離では 彼女の身体の線ははっきり確認出来る。
しばし 眼を奪われ時を忘れた。
「ねぇ・・・」
「う?」我に返った・・・明るければはっきり俺の顔が赤らんだのが君に判ってしまっただろう。
「あの星・・・・・綺麗・・・・やさしい光でしょう。」
彼女の目線に目を移すと 夜空に君の顔が その輝く瞳にやさしい光の星が瞬く。
「星の捕まえ方知ってる?」「何?何?捕まえられるの?」
「うん このてのひらで♪」彼女にゆっくり捕まえ方を教える
「な〜んだ、知らなかったのか?・・・・実話ね」
「水に映った星を・・・・・ほらゆっくり両手ですくう・・・・どう?星、手のひらに捕まえたろう♪」
「うん なるほど・・・・やってみよう〜♪」
しばし 夢中に戯れている君を見ていた。そして君の肩に手を置き ゆっくりこちらを向かせる・・・・君に顔が近づく・・・・・・・・・・
「・・・・うっ?あれ?」
「あ♪ やっと起きた。うふふっ 珍しいね、カウンターで寝ちゃうなんて・・・・お疲れ? みなさんも起こさないように気を使って飲んでたみたいよ♪うふふっ♪」
ここは? いつもの居酒屋・・・夢?今のは夢?・・・・つい寝てしまったのか?・・・・
「ねぇ ねぇ どんな夢みてた?幸せそうに 鼻の下伸ばして・・・・うふふ♪星が綺麗って?寝言言っていたよ。」
「う?うん・・・そんなこと言った?」とても君と露天風呂へ等とは言えないもんなぁ〜「覚えてないよ・・・」
「う〜ん?ひとりじめ?幸せ?」ちょっとつまらなそうな顔をした君。
「早く帰って 夢の続き見たら?」冷たく彼女が言う・・・・そして微笑む
「もう誰もいないから 奥の部屋へ行く?何度か連れて行こうかと思ったんだけど 他のお客様は教えていないから・・・・」
「うん・・・・・いや・・今日 帰るよ。」今日は 自分を抑える自信がなかったから ふたりきりになったら・・・・「まだ 眠いから・・・失礼するよ」
一瞬 君の顔が暗くなったが すぐいつもの笑顔に戻り「そうね 疲れているみたいだから 身体大事にね♪」
その言葉に送られるように 居酒屋を出た。
清清しい、湯上りの気分・・・あれ 夢だったのかな?改めで疑問に思った・・・
君の裸像を思い出し 微笑みながら家路を急ぐ、夢の続きを見たくて・・・・もう風は秋風 爽やかな風に乗って・・・・・
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