私をスキーに連れていって
2度目の眠り入って間もなく 周りのざわめきによって 呼び戻された。それは丁度 しばしの休憩をとるためにバスがドライブインへ入った時の事である。
県立高校、冬休みの行事として自由参加の「スキー教室」蔵王4泊5日、部活もその時期行われず ただ暇を持て余すのもと思い参加を申し込んだのだった。
夜8時駅前に集合、約40名の教員・生徒を乗せた観光バスは一路雪国を目指した。
教員が一緒と言っても体育系の教師、一応の注意事項を説明した後は自由にという配慮で和気藹々での車中であった。余談だが 飲酒した生徒にはそれなりの罰は下った事は付け加えておく。
一通り騒いだ疲れもあり 睡魔に襲われ仮眠・・・微かに戻った正気の眼に入った雪景色。もうすでに車中と外気との寒暖の差に窓は曇りガラス化していた。
雪はもちろん降ったし知っているが 一面の雪景色と闇の中の微かなライト 薄いオレンジ色の世界、凍るような、そして澄んだ空気。
神秘的な雪景色を見ながら タイヤチェーンの音にも慣れ 2度目の眠りについた。
「女子高!」「隣のバス、女子高だぞ!!」友人たちの悲鳴に近い雄叫び、ざわめき、
ちょうど窓際にいた俺は 焦点の定まらぬままの視線を窓の外へ向けた。
「あっ!」一瞬に眠気がとんだ!隣のバスの通路を・・・買い物が終わり自分の席へ戻ってきた彼女が眼に飛び込んだ!
もう車窓は半曇りガラス状態、そしてその向こうにも もう一枚のガラス・・・
紗の掛かったような視野の中で彼女が幻想的に現れたのだった。“う〜 どうしよう?”半信半疑の混乱した頭の中に浮かんだ時
彼女がこちらを向いた、席につく為に身体を入れ替えた瞬間 視線が合った!!偶然・・・でも当然のように確認し合えた。
驚きの顔から喜びの顔へ 幻想的視野の中で彼女の顔が変わっていく。輝いている!周りの誰よりも・・・光させ発しているかのように・・
出口を指差し 彼女のうなずく姿を確認して みんなを押しのけバスを降りた・・・先に隣のバスの降り口に着いた俺はそこで彼女を待つ。
急いで出口に向かって来た彼女だったが階段で立ち止まった。そして俺を確認して 笑顔で駆け寄って来た。
この時の彼女の笑顔いまだに忘れていない。突然の再会 驚きと喜びと嬉しさを一気に発した あの笑顔。
そして 目覚めたばかりの眼に写った 彼女の横顔・・・・曇りガラスの隙間から幻想的な雰囲気の中浮かび上がった彼女の横顔
同じ中学で知り合い 2年時代交際宣言 しかし3年転校 文通で続くも高校受験のため 中断を二人で決めた
お互い希望の高校へ進学 1〜2度の電話 手紙は月一ぐらいで継続はしていたが スキーの件はお互い知らせていなかった。
他校の情報が無かった事、実際集合時間・出発時間も違って 先に出た彼女達のバスが渋滞に巻き込まれた偶然によって
会える結果となったらしい。12ヶ月ぶりの雪の中の再会でありました。
確かに目的地、期間が一緒だったので この期間中に再会があったかもしれないが・・・あの幻想的な彼女を、感動は味わえなかっただろう。
運命の赤い糸 この時実感したふたりだった。
この時から7年間 彼女と供に歩いた・・・
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