比の今月のカメラ 2005年4月号   Nikon EM

今月のカメラとしてははじめて
手元に無いカメラです。
理由は簡単。頼まれ物なのです。
ただし、短時間は、私のほぼ所有物として扱ったため、今月のカメラに出します。
かわいい娘を嫁にやったというところかな。でも、うちには実際には息子しかいないので、想像ですけど。

EMを入手することになったのは、ちょっといわくがありましてね。会社の本社からネットワーク関係の仕事でちょくちょく出張でやってくるOさんは、「ロシアカメラ使い」と人から聞きました。まわりに今までロシアカメラ使いはいませんでしたので、興味しんしん。声をかけました。所有のロシアカメラは不調で、最近使っていないとのこと。ロシアカメラにはこだわっていないとのことで、別なカメラが欲しいという話になりました。いろいろ話しているうちに、私が中古カメラを入手して。メンテすることになりました。まあいつものことですし、少しでも絶滅に近いフィルムカメラユーザーを保護するということで、OKしました。内心楽しみでもありますが。

特にカメラへのこだわりは無い人でしたが、お話を聞いてまとめたのは、第1候補としては、デザインで、Olympus OM-1かOM-2が良いということ。第2候補としたは、お父上がNikonを以前使っていたので、実家を探せば出てくるかもしれないので、Nikonであれば、レンズとボディーの互換性が取れるのでNikonもよさそう。ただ小型軽量なのが良い。ボディーは、ブラックが好き。予算は1万円。

Olympus OMは
中古価格が以外に高くて、予算内で探すのは出来そうにないことがわかりました。でも、私の手持ちのOMたちは、思い出のカメラなので手放せません。それはOさんはわかっていました。見つからないときの暫定として、Pentax MV1に50mm/F2を付けて貸し出しました。とりあえず、日本製の一眼レフに触れてもらうため。

Nikonでも良いというターゲットでしたが、私のFEを触らせると、さすがにOMより大きくて重いので、イメージに合わないようでした。良いカメラなのになあ。
それで、ターゲットをEM,FG,FG-20としました。使い勝手からすれば、FGがベストですが、なぜか、中古価格が高いのです。何ででしょう。Nikonユーザーは、電子シャッターを嫌う傾向があり、電子シャッター機は、中古価格が低いと思ったのに。
ということは、EMしかありません。

ときどき利用している某カメラ店の在庫にEMが出ました。電話で話すと、外観は良いのですが、低速シャッター精度が出ていないとのこと。手持ちの出来ないほどのスローシャッターの時ということだったので、通常の使用には問題ないだろうということで、購入することにしました。予算内です。通販となりましたので、電話での説明がすべてですが、そのお店を信じていましたので、気にせず頼みました。

来ました。この写真のやつです。手持ちの50mm/F1.4をつけたら、なんとなくレンズが大きくふしぎな感じに見えます。

驚きました。話が違います。スクリーンがゴミだらけ。ゴミの原因は、スクリーン周りのモルトプレーンがポロポロに変質して、崩れたものがスクリーンに貼り付いています。このままではだめです。モルトプレーンの貼り替えは出来ますが、スクリーンについたモルトはきれいに掃除できるのでしょうか。
カメラ店に電話したら、それは不良品扱いで、返品でしょうということになりました。着払いで送ってくれと言ってくれました。しかし、このスクリーンのゴミ以外は問題の無いきれいなEMだ。最近EMの中古が出にくくなっているので、これを逃せば、いつきれいなEMが出てくるかわからない。ここは考えるべきだ。

しくじったら、自分のものにして、また探すかと決心した。そう、スクリーンの掃除だ。
拭き取ろうとして、クリーニングペーパーで拭いたら、それこそだめにする元であることは明白だ。まず、ブロワーで飛ばす作戦で、根気よく吹きつづけた。思ったよりゴミは飛んだ。内部側、つまり、スクリーンの上面にあまりまわりこんでいないようだ。それが幸いした。ゴミ取り用の柔らかいハケで軽く掃いたらかなり無くなった。さて、次は、内部面と、スクリーン周りのモルト貼り替えだ。



EMは、後期型だと、スクリーンがはずしやすい
ということは、このEMの作業のあと知りました。
あやしいネジがありました。うまくすると、軍艦をはずすことなくスクリーンがはずせそうでした。だって、この写真の左を見たら、はずしてくださいといっているようなもんです。
ネジをはずすと、右側の写真の通り、ばっちりと外れてきました。しめしめと、ほくそえんだ瞬間です。これだと、もう計画成功も同然です。

でもね。良い子のみなさんは、やらないように。ここらへんは、スクリーンとミラーという、傷と汚れが大敵で、触っちゃいけない部品があるところですから、手を出してはいけないところです。
私は、良い子じゃないので、どんどんやります。


しめしめという状態です

FEやFM2と違って、押さえの金属枠にがっちりと固定された状態で外れてきます。スクリーンは交換式ではないため、交換用ピンセットでつまむ突起は存在しません。チャンスなので、スクリーンサイズをノギスで測りました。別なスクリーンと交換できるかもしれないので、その時の資料用です。

はずしたので、掃除とモルト貼り替えは、ばっちりでした。
作戦成功です。
このあと、他のモルトも交換して、メンテ完了です。

ところで、Nikonの場合、EMも、FM,FEもスクリーンのマット面は、上です。そのため、ミラー側、つまり下の汚れは取りやすくて、良いのですが、ピント精度からすれば、空気以外の屈折率のものが、マットの前にあるため、物理的に、フランジバックと同一寸法では、ピント精度をあわせられないので、設計と工場での調整、確認が大変だろうなあと感心します。

Aiレンズの説明で登場する
開放F値設定のための突起を利用しているボディーは少ないのですが、このEMは
この矢印の部分で設定するような仕組みがあります。でも、絞りリングの引っかかりも使っていますから、特に必要性は無いように思いますが、絞り優先AEの対応の仕方を理解していないので、疑問のままですけどね。









きれいになりました
スクリーンもミラーもきれいです。これで、動作が問題なければ、成功です。











EMは、絞り優先AE 
ですから、ファインダー情報は、シャッタースピードだけです。上と下が赤いのは、オーバーとアンダーです。シンクロは90分の1秒で、そこのぶぶんに黒い出っ張りがあって、専用ストロボを使用すると、チャージランプがその部分で赤く光ります。珍しい仕様です。
センター部分は、スプリットとマイクロプリズムです。発売当時に初心者向けカメラの標準的な設定ですが、どうもなじめません。全面マットか、ただのスプリットが好きなもので、スプリットとマイクロと二つもあると、邪魔です。

試し撮りをしました。露出はネガでは問題なく合っていました。一眼レフでAEで撮影するのは、なんとなくどきどきです。昨年は、Pentax MV-1とMEの試し撮りでAE撮影しました。



底ですが 
Nikonは、フランジバックが長いだけあって、ボディー自体が、デブに見えます。必要最低限で、モータードライブの接点、カップリングには、キャップもつけないし、位置決めと巻き戻しのボタンと、電池室そしてちゃんと真中に三脚穴。
真中の三脚穴は、F-501で、実現しませんでしたけど、EMでは手は抜いていませんね。








ここらへんは 
シンプルです。ジウジアーロのデザインからでしょうか、F3と同じで、巻き上げレバーにレリーズボタンがあります。私はどうもなじめませんが。シャッターは、BとM90とAUTOしか設定がありません。そして、バッテリーチェックのボタンとLEDがあるだけ。でも巻き上げレバーの構造は、どうも安っぽい。Leica M4だと、安っぽいと言われないのは差別かな。








EMだよ 
試し撮りも完璧だったし、お約束だったけど、手渡したときは、さびしかったなあ。
Oさん。良い写真撮ってますか。貴重なフィルムカメラユーザーとして、絶滅しないようにがんばりましょう。

そのうち、別なEMが手元に来るといいな。
待ってるよ。














Oさんは、まだMV-1も貸し出したままだけど、気に入っているようだから、そのまま養子に行っちゃうのかな。全部ばらして掃除したMV-1だから、愛着もあるけど、かわいがってくれる人のもとがベストだなあ。
(2005.4.4)




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