修理の部      ミッチェル308の修理

ミッチェル308です。
さてさて、壊れてしまいました。2000年のシーズンが始まって、初めてのルアーでの釣行でした。近くの川でした。もうそろそろ上がろうかと、上がる予定の場所が見えていたときですから、もう数回キャストするだけでした。いつもなら軽やかに返るベールが、何の音もせず、巻き上げの負荷もありません。あれっと思って見ると、ベールは返っていない。触ってみるとブラブラ。「またバネが折れたか」。

いま使っているのは、3代目です。
まず、私のルアーのキャリアから説明すると、アマチュア無線で知り合った方が、ルアーをするというので、教えてもらうことにしたのは、14年くらい前になります。そのかわりに、フライフィッシングを教えるという、交換条件でした。その方、つまり、ルアーの師匠様は、ミッチェルの408を使っていました。その時点で、10年以上使っているということでしたが、問題無く動作していました。私もほしくなりましたが、当時は、ミッチェルは代理店の無い時代で、通常のルートでは、入手しにくい時でした。別な友人が、ある釣具屋にミッチェルの売れ残りがあるというので、入手しました。残念ながら、408ではなく、アウトスプールの908でした。
908は1年ほど使ったのですが、なにしろ、唯一無二のリールですし、替スプールも入手できないので、なんとかならないかというところで、アメリカ出張でした。当時のアメリカでは、308を簡単に安く買えました。日本で言うところのホームセンターのようなところの釣具売り場で、プラスチックケースに入って、ぶら下がって売っているのです。たったの30ドルでした。とりあえず2個買いました。今考えると、なんであのとき、もっとたくさん買っておかなかったか、後悔しています。
そのあと、使い込んで現在は3代目になっています。

右は、1989年に購入の、308Aです。これは、フランス製でした。
ベールのバネではなく、ベールのロックの金具が磨り減って使えなくなりました。


なお、4,5年前にミッチェルの広告で、「ミッチェル初のアウトスプール」という書き方で、新製品の発表をしましたが、あれは間違いで、900番代は、アウトスプールのモデルに割り当てられた番号で、908と言う、左手巻き上げのモデルが実在しています。ミッチェルは、偶数番を左手巻き上げに割り当てていますが、奇数番の実物をまだ見たことがありません。

アブのC33やC3を使ったことのある人はよくわかると思いますが、ベールのバネが、コイルスプリングになっていて、それが折れやすいのです。友人のC3は、もう何度折れたか数え切れません。彼は、必ず2台のC3を持って釣りに行きます。ただ、私のC4Xは一度も折れないのは不思議です。

さて、右は、スプリングの折れた、308です。これは、アメリカの某有名アウトドア用品の通信販売で購入しました。台湾製でかなりがっかりしました。

フランス製と、台湾製の比較です。
左側で、ラインを巻いていないのが、引退した1台目の308です。右側の台湾製と、ベール部分の曲がり方がわずかに違っています。互換性に関しては、かなり疑問ですが、使った感触は近いものがあります。
フット部に、「FRNCE」と「MITCELL TIWAN」と書いてあります。

今回は、フランス製と台湾製の違いの話ではないのですが、ついでの話として、ご覧ください。
実は、408も含めて、ミッチェルは、コストダウンのためなのか、かなり設計変更を行っています。我がルアーの師匠の408に比べると、内部のギアは見る影もありません。それでも、そこそこの感触を保とうとはしているようです。






スプールをはずすと内部も少し違っています。ベールのロック金具部が一番違います。互換性は無いようです。一台目は、この金具が削れてしまったので、交換したいところですが、だめのようです。左のフランス製はマイナスネジですが、右の台湾製はプラスネジです。フランス製のバランスウエイトの固定ネジは緩みやすかったので、接着剤で固めています。

スプール外側部の下は、左のフランス製は、MADE IN FRANCEの文字が見えますが、右の台湾製には何もありません。
 


これがバネです。左の2個が折れたもの。2個とも、垂直に立っている部分がちょうど根元の90度曲がっているところから折れています。一番力がかかっているのでしょうか。

右が試作したものです。

一台目は、ベールのロック金具が削れて、ロックが甘くなったため使用できなくなりました。すこし削ったり曲げたりして、だましだまし使ったのですが、ついにだめになりました。正確には2台目もフランス製だったのですが、とりあえず、保守用としてキープすることにしました。USから通信販売で、買ったものが台湾製だったので、とりあえず2台目として使用することにしました。2台目の台湾製は、ベール部のローラーのネジが緩んでいたのに気づかずに使用して、川の真中で、部品を落としてしまいました。3台目も、台湾製を使用しました。また30ドルでした。その3台目のバネが折れたし、巻き取りのレバーも曲げてしまったので、2台目から、部品をとりましたが、結局また、バネが折れました。

山形県内に何店かある、釣具とアウトドア用品のS屋さんは、品揃えと店員の対応が良いので、よく行っています。米沢店の店員ではなく、山形店から時々、米沢店にベテラン店員さんが来ます。そのベテラン店員さんに相談しました。「308は修理できますか」と、「バネが折れたの?」。ズバリ言い当てます。「僕も持っているけれど、あきらめるしかないね」。
ミッチェルの代理店は現在なくなっているということで、部品の入手は無理とのこと。常連の口の悪いお客さんは、話を聞いていて、「そんな古いリールは、もう神棚にお供えしておきな」と、いたって冷たい。

替わりに、アブのC33を使ってみましたが、しっくり行きません。もはや、308は自分の手の一部になっています。

ダメモトで、修理してみることにしました。
まず、手持ちのピアノ線で作ってみましたが、50回もベールを動作させると、バネとして動作しなくなりました。
ホームセンターに行くと、バネがいくつか置いてありました。何のためのバネかよくわかりませんが、とにかく探しました。決定的なことは、巻きの方向が、通常のバネとまったく逆です。リールの構造上、逆にならざるをえません。巻きなおししかありません。バネは作ったことはありませんが、送信機のコイル巻きなら経験があるので、どうせ同じだろうということで、始めました。
すこし径の細身のプラスドライバーの軸に、ラジオペンチを使って、巻いて行きます。さすがに送信機のコイルのための銅線のようには行きません。上の写真の右3個は失敗作です。4個目で、何とか使えそうなものができました。
どうにか押し込んでみました。ベールを50回は、おそるおそる返しました。しかし、こんどは、問題無く動作しました。そのまま100回まで、動作させても、変化が無いので、実際に使用してみることにしました。一応予備として、アブのC33は、必ず持つことにして。
しかし、今年のシーズンは、回数は、あまりこなしてはいないのですが、とりあえず、無難に動作しました。修理成功といえます。

今、手元には、未使用のフランス製1台と、未使用の台湾製1台があります。修理しながら使っても、一生もつとは思っていませんが、使えるまでは、使って行こうと思っています。
308がなくなったら、アブのC33を使うかと言われても、どうもC33はしっくり来ません。どうにか国産のものを探そうとするでしょう。実際、2人の息子と、ヨメさんは、国産のリールを使っていますが、最近のテクノロジーで、ラインのヨレもなく、古いリールを使ったときのあの、1日に3回も、ライン巻きなおしという、ひどいことにはならなくなりました。




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