2. 私の大学院体験記:総括と評価
2-2-2 ある習慣
私は、大学院における閉塞状況への活路を見出すために様々な行動を起こしました。しかしその際、失敗したときの対応を少しは考えはしましたが、成功した場合について考えがちでした。幼稚で甘い態度です。しかし現実はそのような甘い幻想を裏切るだけでなく、想像もできなかった大失敗、例えば大金を使って旅行までして話を聞きに行ったのに何も得られなかった、単に論文を読んでもらえなかっただけでなく、仲介してくれた人にまで迷惑をかけた、といったこと(その他ここには書いていない/書けない多数の事例を経験しました)が生じました。そしてその度に精神的に大きな衝撃を受けました。このような経験を繰り返すことによって、私はある行動を起こすとき常に自分が考え得る最悪のケースを複数想定しておく習慣を身に付けました。想像を越えるような悪い結果が生じた場合、甘い幻想を抱いていると現実に直面したときに衝撃が大きいのに対し、最悪のケースを考えていれば想定との落差が小さいので精神的衝撃が少なく、次の対応を取ることが容易になるからです。これによって、その後確かにいくつかの事例でうまく対応を取ることができました。しかし考えてみると、常に最悪の結果を予想して行動を起こすと言うことは、常に成功例を想像して行動すると言うスポーツのメンタルトレーニングの逆を行っていることになります。私が大学院で生活する上では必要不可避な習慣でしたが、望ましいものでないことは明らかでしょう。そういうわけで、私はこのような習性を身に付けることを学生の方に勧めるべきか、そうでないか、意見を決めかねています。