70万歩の旅~巡礼の路を歩くⅡ-⑦     2016・08・06~08・29

Limoges(リモージュ)----Perigueux(ペリグー)----Port Saint Foy(ポート・サン・フォイ)---Bazas(バザス)
                   ---
Mont de Marsan(モン・ド・マルサン)---Orthez(オルテズ) 実歩行日数24日間
   歩行距離:493.3km 歩数:725、063歩 (万歩計) 1日平均:20.55km ザック重量:約10kg

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=第16日目=

8月21日(日)晴れ:Brouqueyran---Bazas 13.4km(329.37km)  19,701歩 CH泊(1泊2食:25€)

 

 昨日の疲れのためか、朝目覚めたのは7時前だった。ぐっすり寝たのは良かったが、余りの遅さにびっくりして飛び
起きた。急いで出発の準備をして階下の食堂に降りて行くと、ジルたちは朝食を食べ始めていた。『ボンジュール!
あ~良く寝た!』 彼らはマダムとニコニコしながら迎えてくれた。朝食は簡素なものだった。しかし、話が弾んで食べ
終わったのは8時半を過ぎていた。『さ~出発するか!』とジルが立ち上がった。エッ!まだ、顔も洗ってないし、歯も
磨いていない。私のそんな事情もお構いなく、彼らはリュックを担ぎ、外へ出て行った。私は、トイレだけを済ませ後を
追った。ジョセフィーヌは歩きながら歯を磨いていた?お城から出て、暫く行くと小さな湖に出た。『昔、王様は湖で遊ん
だり、辺りで狩りをしたのだろうな。』と勝手に想像しながら歩いた。

 ジルは3年前までの10年間、一人でアジア、オースツラリア、ニュージーランド、南米と750ccのオートバイで世界
一周をやったとか。その頃ジョセフィーヌは現役で働いていたので、イラン、パキスタン、カンボジア、中国の4か国
にだけはそれぞれ短期間同行したらしい。その時の写真を見せてくれた。途中、南米ではTV局の取材を受けたり
して、現地では一時の有名人だったとか。話が大きくて面白い人物である。また、茶目っ気もたっぷりだ。

*緑葉(みどりは)に 陽(ひかり)かがやく 巡礼路*

 
《ブナの葉の緑が陽にあたって本当に綺麗》

 Bazas
(バザス)までの道は快適だった。特に、広大なブナ林の緑は、大きく深呼吸をすると、少し冷気を含んだ空気と共に
身に沁み込んできそうな気さえした。そして、できればいつまでもそこに身を置いていたいような思いを抱かせた。

 午前11時40分にバザスの大聖堂に着いた。教会の中では日曜日のミサをやっていた。ジルはこのミサに間に合いたい
思いで歩いたようだ。荘厳なパイプオルガンの音が響く。ほぼ満員の人々はお互いに手を繋いで、静かに肩を動かしながら
讃美歌を唄っていた。もう少しゆっくりしても良いと思ったが、15分もすると、ジルは外へ出た。私は一時おいて彼を追った。
すると、彼は、大きな教会の前にはよく居る『お乞食さん』と話をしていた。そして、暫くして財布を出して、いくらかの恵みを
彼に渡した。ジルの人となりを覗いた気がした。
 街のビストロで昼食を取った。私は、仔羊の串焼き。美味この上なく美味しかった。勿論、ワインも飲んだ。ジルは大きな
お皿一杯に並んだチーズをビールと共に旨そうに食べていた。また、ジョセフィーヌは牛肉の串焼きを食べた。天気も良く、
ゆっくり1時間程休んだ。

 

*すばらしき 出会いに感謝 巡礼路*

 

    

 午後3時にCH(シャンブルドット)のマダムと大聖堂前で待ち合わせをしていた。全てジルが手配をしてくれた。
マダムは時間通りに来てくれた。車はトヨタだった。私が日本人だと知って、『トヨタの車は最高よ。』と。私にとって
は嬉しい一言だった。
 今日のCHは、昨日のお城とは打って変わって、近代的な今様の個人のお宅だった。ご主人が丁寧に迎えてくれた。
私たちは2階の部屋にそれぞれ案内された。『息子と娘が使っていた部屋よ。彼らは今は結婚して外に出ているの。
今日はあなた方の部屋よ。遠慮なく使ってね。』とマダム。壁には小さな絵が上品に飾ってあり、大きなベッドの白い
シーツが目に滲みた。清潔感があふれており、リュックを背負って何日も歩いている自分には似つかわしくなく、また、
少しもったいないような気もした。

 ジルたちは2階の自分たちの部屋で休んでいる。私は、1階の大きなロビーのTVでオリンピックを見ていた。そこへ
マダムが来て、『日本は凄い。41個もメダルを取った。』と教えてくれた。歩いている間、テレビは全く見ていないし、
オリンピックをやっていることなど忘れかけていた。彼女は新聞を見せてくれて、『金は12個、銀が8個、銅は21個よ。
世界で6番目に多いのよ。』と日本の健闘を称賛してくれたが、ただ、フランスが直ぐ次の7番目であったことが少し悔し
そうだった。

 7時頃から居間でアペリティフ。その後、庭のテントの中で食事となった。『今日はバーベキューよ。』とマダムが言った
ので、肉や野菜を炭火でジュージュー焼くのかと思ったら、何と3kgもありそうなドでかい肉の塊をご主人が別のところで
焼いて、ステンレスのお皿に乗せて持ってきた。それを5人で食すのだ。ご主人がカットして皆に取り分けてくれた。後で
ジルの言うことには、ご主人はその筋の専門家で、レストランで働いているのだとか。日曜日で忙しいのに、私たちの
ために休暇を取ったらしい。
 そのことを聞いた時、本当にありがたいことではあるのだが、正直『今日だけでなく、なぜ巡礼者に対して、こうまで
親切にしてくれるのだろうか。』と思った。
感謝!

=第17日目=
8月22日(月)晴れ:Bazas---Captieux 18.4km(347.7km)  27,093歩  Gite泊(素泊:10€) 

    
    
《どこまでも真っ直ぐな道:綺麗なブナ林が続く》

 
《ここは駅のホームの跡》                                                     《健康、安全を祈って石を積む》

*巡礼路 今は昔の 鉄道路*

 マダムが森の入り口まで車で送ってくれた。『とにかくここからはズーット真っ直ぐ行けば良いわ。』8時30分。私たちは
歩き始めた。自宅でルートを調べているとき、『どうしてバザスからの道は真っ直ぐ続いているのだろう。』と少しく疑問を
持った。とにかく、3日間、ほとんど真っ直ぐの森の中の道を歩くのだ。信じられない。約20km毎にジットやCHがあるが、
行く前までは本当に歩けるだろうかという不安もあった。しかしこの時は、ジルたちと一緒だったので、『何とかなるだろう。』
と、不安は全くなくなっていた。
 1961年まで森の木を伐採して英国に運んでいた鉄道があったのだそうだ。勿論、人間も利用していたのだろうが
55年
前に廃線となり、その後、巡礼路になったとか。真っ直ぐの理由が分かった。
ガッテン! 
 森の中のシュマン(巡礼の小道)は日陰で涼しい。32°Cの今日もあまり汗をかかなかった。3人で追いつ、抜かれつ、
又、一緒に『一歩』『カミーノ』『頑張ろう』と交互に口ばさみ、繰り返し言葉遊びをしながら歩く。
 ジョセフィーヌが『1~10までを教えてほしい。』という。『1,2,3・・・』とやってみる。何回も繰り返している内に、1~10
まで完全に言えるようになった。私は"Tres bien!"(トレ・ビアン!)と言って、年末大売出しの福引に大当たりした時よろしく、
カウ・ベルをカラン・カラン・カランと連打すると、彼女はバンザイと叫んだ。
 
 ジル曰く、『自分は冗談を言うのが好きで、ジョセフィーヌも明るい性格のところがとても良い。
AKIもいつも大きな声で
笑うが本当に良いことだ。』とお褒めの言葉を貰った。『ありがとう。私もあなたたちと友達になれて嬉しい。』と言って握手
を交わした。


 

       

 カプチューの市役所は1時半に開くということは分かっていた。その時間を目指して歩き、着いたのは1時40分だった。
『当然、先客は誰もいないだろう。ベッドを好きな処に確保できそうだ。』と思って行くと、あにはからんや、既にイギリスの
若い(40代)の夫婦がおり、奥の4人部屋に陣取っていた。仕方ない。私たちは、表の部屋のベッド、ジルは下、ジョセフィ
ーヌは上、私は、もう一方の2段ベッドの下とした。
 イギリス・ブリストルのご夫婦、アンドリューとサラはさすがに若く、『今日はポルト・サンフォイから30km歩いてきた。明日
はモン・ド・マルソンまで行く。』と私たちが4日掛けて歩いているところを2日で歩き、毎日30km前後進んで行く。『10月の
始め頃には、サンチャゴ・デ・コンポステーラに着くだろう。』と言っていた。

=第18日目=

8月23日(火)晴れ:Captieux---Bourriot Bergonce 23.1km(370.8km)  33,863歩  CH泊(1泊2食:35€) 


 
《エリカの花がいっぱい咲くシュマン(巡礼の小道)を行く》

 アンドリューご夫妻は、午前4時に出発したとか。私は寝込んでいて全く知らなかった。何と今日は一日で
37km程歩いてRoquefort
(ロックフォール)まで行くと言っていた。私たちの2日分を一日で歩くのだ。10時間位
は掛かるらしい。『若い人は丈夫だなあ。』と改めて思った。

 私たち3人はいつものように午前7時にジットを出た。行程のほとんどが森の中で、平坦の道が続いた。
極めて順調に進み、疲れは殆ど感じなかった。ただ、ジルとジョセフィーはそれ程早く歩いているわけでは
ないのだが、私が一生懸命歩いてもなかなか追いつけない??? 『アッ!足の長さが違う。』思い知らさ
れた一日だった。

 道筋にエリカの花が一杯咲いていた。私たちはその道端で昼食を取った。『ジルは、この花から蜂蜜を
取っていたのよ。』とジョセフィーヌが教えてくれた。彼はハチミツ採取を仕事にしていたらしい。ただ、今は
もう止めたとか。 
 彼は、『座って食べると、立ち上がった時に足が痛む。』と言って、辺りをうろうろ歩きながら食べていた。
そんな分けで、15分で昼食を終え出発した。
 予定よりも1時間も早く宿泊地Bourriot Bergonce
(ブリオット・ベルゴン)の村に着いた。一軒しかないカフェが
開いていなかったのが残念だった。『
CHに行くにはまだ1時間も早い。』ということで、近くのロマネスクの
古い教会で待つことにした。教会の中はひんやりしていてとても気持ちが良かった。ジルはのんびり昼寝を
していた。私は日記を書いたり、明日のことを調べたりしながら過ごした。

   

  

      
       《今日も元気に歩けた。お疲れ様。乾杯!》

       *歩むほど 心の通う 巡礼路*

                                                        つづく