70万歩の旅~巡礼の路を歩くⅡ-⑨     2016・08・06~08・29

Limoges(リモージュ)----Perigueux(ペリグー)----Port Saint Foy(ポート・サン・フォイ)---Bazas(バザス)
                   ---Mont de Marsan(モン・ド・マルザン)
---Orthez(オルテズ) 実歩行日数24日間
   歩行距離:493.3km 歩数:725、063歩 (万歩計) 1日平均:20.55km ザック重量:約10kg

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=第21日目=
8月26日(金)晴れ:
Gailleres--Bougue--Mont de Marsan 16.3km(417.6km)  23,955歩 Gite泊(1泊2食:35€)

 
《Bougue(ボーギュ)の教会:柱がユニーク》                                     《巡礼路は市民の自転車道と共用》

 
今日のコースは殆ど完璧に歩けた。鉄道跡の道は一直線。森の中を歩く。快適であった。途中、ボーギュという村
の古いロマネスクの教会に立ち寄った。扉は閉まっていて中には入れなかったが、木の柱の彫刻が素晴らしかっ
た。ロマネスク様式の教会の装飾としては珍しく思えた。ジルもその巧妙な技巧に感心していた。
 宿泊地のモン・ドゥ・マルザンが近づくと、巡礼路がサイクリングルートと共用になった。大勢のサイクリング愛好家
たちが森の中、風を切ってサイクリングを楽しんでいた。街の入り口でジルたちを待った。今日のジットの場所が街中
で分かりづらいので、一緒に行こうと考えたのだ。ところが、なかなか来ない。確か、少し後ろを歩いていたのだが。
15分程待って、後5分、後5分と待ち、とうとう30分位待った。《ジルの足に問題が生じたのかな?》と心配している
ところへ2人が来た。『やあ、済まん、済まん。果物市場があって、そこで買い物をしていたんだ。』《そう言えば、確か
にあった。足のことではなかったらしい。》と思い、ホッとした。そして、3人して歩き始めた。《待っていてよかった。》と
思った。サン・ドゥ・マルザンは大きな町である。ジットの住所は分かっているが、ジルがスマホ片手に探してくれるの
だが
なかなかたどり着けない。街中を20分程ウロウロしてようやく見つけた。ドアに張り紙がしてあった。ジルがそれ
を読んで、『近くのスーパーで鍵を貰って来なくてはいけない。
AKI,一緒に行ってみるか?』『ウイ!』
《彼らと一緒で良かった》と思った。一人で住所をあてにして、聞きながら探していたらもっと時間が掛かったであろう。


 
《巡礼宿には目印があった》          《カプチュールのジットで一緒だった、イギリス人のアンドリュウの私へのメッセージ》

 
シャワーを浴びて、一休みした後、予定通り一人で《散髪》に出掛けた。長旅の途中では散髪に行くことにして
いる。ファッションの国フランスでの散髪。これも楽しみの一つである。ただ、エイズが世界中で問題になって以来、
フランスの散髪屋では髪を切るだけ。顔や髭は剃ってくれない。ジットから少し歩いて行くと、直ぐに美容院が
あった。『ボンジュール、髪を切って貰いたいのですが、できますか?』と言うと、《5分も待ってもらえばできます。》
とのことだったので、隅のソファに腰掛けて待つことにした。グラビア誌などを見ながら待っていると、マダムが、
『どうぞ』というので、私は眼鏡を取ってそれを椅子に置こうとすると、
どうしたことかメガネが手からポロリと落ち
た。そして、片方のレンズまでが床に落ちて、音がした。
《アレ!》(>_<) マダムもチョットびっくりしたようであっ
たが、私は敢えて平静を保って、『OK、OK、大丈夫だ!』と言って、促された椅子に座り、まずは洗髪。そして、
その後で散髪をしてもらった。その間約20分。18€だった。

 床屋のマダムに聞いて、近くの眼鏡屋に行ってみたが、ツルが折れたので修復はできなかった。仕方なく以後、
メガネなしで歩くことになった。
(´Д`)


         
        
*アゴヒゲに 貫禄つきし 巡礼路* 美容院・散髪屋のマダムと


《さすがに立派なサン・ドゥ・マルザン大聖堂と内陣》

          《サン・ド・マルザンの市役所:暑いので人も疎ら》
      


 
散髪の後、折角なので街を散策してみようと思って、市役所やら大聖堂にも行ってみた。さすがに、この地方の中心
都市の大聖堂だけあって威厳があり、堂々としていた。
 5時頃ジットに戻った。すると、ジョセフィーヌが待ち構えていたかのように、『
AKI,
申し分けないのだけど、ジルの
足の調子が良くないのよ。彼は、明日、電車に乗って自宅に帰ることにしたワ。悪いワネ。』《サン・ドゥ・マルザンの町
の入り口で、30分位待っていたのは、やはりその為だったのか。》と思った。『足はかなり悪くなったの?仕方ないよ。
で、ジョセフィーヌは?』『オルテズにジルの娘夫婦が来て、そこから1週間一緒に歩くことになっているから、私はAKIと
一緒に歩いて行くワ。』とのことであった。
 ジルの足、右アキレス腱あたりの調子が良くないらしい。これ以上歩くと大変なことになりかねないという判断のようだ。
歳も歳、大事を取った方が良い。彼は、私が彼らと出会って2~3日後に足を痛め、その後だましだまし来たが、どうにも
心配になったようだ。誠に残念であったが、仕方ないことであった。一緒に歩いたこの10日間、ジルには本当にお世話
になった。私はジルの休んでいるベッドのところへ行き、『ジョセフィーヌから聞いたよ。残念だが仕方ない。大事にして
ください。』と彼を見舞い、10日間のお礼をたどたどしいフランス語で言った。『今度、フランスに来るときは奥さんと一緒
に我が家に来てください。』と言ってくれた。
(^_-)-☆

 
6時半頃になり、3人で食事に出た。ジットのマダムに聞いたピザレストラン。ピザだけでなく普通の食事もできた。
ただ、時間が少し早く、《飲むのは良いが、食事は少し待ってくれ。》と言われ、私は赤ワイン、彼らはビールを飲みなが
ら待った。ジルが、オルテズから一緒に歩く予定の娘に電話した。《自分は足を痛め明日帰る。ジョセフィーヌはオルテ
ズまでAKIと一緒に歩くから、その後、ダンナと三人で歩けば良い。》というようなことを言っていた。ジョセフィーヌも電話
口に出て、『楽しみにしているワ。』と言った。更に、私に電話が回されたので、『私はAKIです。お父さんたちにお世話に
なっています。』と言うと、彼女は『知っているワ。父から聞いているワ。』と軽やかな声が聞こえてきた。
 
 食事から帰り、9時過ぎであったか、ジットの食堂で私が他の人と話していると、ジョセフィーヌがやって来て、『
AKIごめ
んなさい。私も明日ジルと一緒に家に帰ることにしたワ。』
(´Д`) ジルが家に帰るということで、《娘さん夫婦も来なくなっ
た。》ということらしい。『そう。仕方ないよね。この10日間本当にありがとう。お世話になりました。楽しい10日間だった
よ。』と私はお礼を言った。


=第22日目=
8月27日(土)晴れ:Mont de Marsan--Sainte Eutalie--Saint Sever 23.2km(440.9km) 34,048歩 Gite泊(1泊素泊:10€)


 
午前7時にジットを出た。ジルとは固い握手をして別れた。ジョセフィーヌは『途中まで送っていくワ。』と言って、同行して
くれた。朝が早いので町は寝ていた。静かな町を二人は歩いた。『
AK
I!今度フランスに来るときは、わが家に来てよ。
奥さんと一緒に。』と、ジルと同じことを言ってくれた。有難く、又、嬉しいことであった。
(^_-)-☆ 10分程歩いて、私たちは
《またきっと会いましょう。》と言って、ビズをして別れた。

 一人旅が始まった。夜中の雨が嘘のように晴れあがり、天気は上々で、むしろ暑いくらいであった。これまでと違い、
森の中ではなく日影が少ない。水を飲む。汗をかく。その繰り返しだった。途中、標識に注意して、迷わないように歩いて
いたのだが、ガイドブックとは明らかに違うルートを歩いていることに気付いた。ルートが変更されているのだ。12時近く
になり、教会(Sainte-Eutalie)の前にベンチがあったので、そこに座って昼食を取った。缶詰、リンゴ&パン。あまり美味しいとは思えなか
ったので、水をがぶがぶ飲んで流し込んだ。

《Sainte-Eutalie(サン・トタリ)の教会の前で昼食》


      
      
《サン・セヴェールの町の入り口のカフェにて》

 昼食後の2kmがやけに長く感じた。サン・セヴェールの街が高台に見えた。急な本当に急な坂を上り切ったところで
4人の男女がワインを飲んでいた。『着いた!ビール!』と思って、彼らの側にリュックを降ろし、椅子に座り込んだ。
黒い前垂れをした若いお兄さんが来たので、『ビール!』と言うと、『ビールはありません。』
(>_<) 『仕方ない。白ワイ
ン』を貰うことにした。ただ、これはこれはで冷えていて美味しかった。


 今日の宿泊は予約がしてない。ジルが予約なしでも泊まれる。《大丈夫!》と保証してくれた。ジットのある修道院は
直ぐに分かった。行ってみると、《午後2時から》とある。15分程だったので、日陰で待つことにした。しばらくすると、
昨日のジットで一緒だったスイスのおじさんがやって来た。『やあ、一緒になりましたね。』と言って、ドアに設置してある
キーの番号を押して開けてくれた。『取りあえず、入りましょう。』
 私たちは、2階の部屋に行きベッドを確保した。『教会の前の観光案内所に行き、宿泊代10€払うと、ドアの番号を
教えてくれるよ。』と教えてくれた。で、取りあえず、私は観光案内所に行き、手続きを取ることにした。外は猛烈な暑さ
だった。35度は裕に超えているような暑さだった。
(´Д`)
 手続きをしての帰り、我慢ならずカフェでビールを飲んだ。

 3時半頃、管理人の方が来て、《今日は暑い。この夏一番の暑さだ。冷蔵庫にあるジュースは自由に飲んで良いよ。》
《洗濯機も自由に使ってください。》《洗濯物は外に干せばすぐ乾くよ。》といろいろ世話をしてくれた。
(^_-)-☆
私は、自分の洗濯物を乾かそうと思い、《エーイ!面倒臭い》草履を履かずに裸足で外に出た。外は石畳でジンジンに
熱かった。フライパンの上に乗った感じ。
《熱い!、こりゃ、ダメだ》 直ぐに中に入ったが、足の裏がジーンとしている。
幸いにもやけどはしなかった。
 ここまで豆も造らずに頑張って来た自分の《足の裏》に《申し訳ないことをした》と思い、
その後、ベッドに戻り、擦って謝った。《足の裏さん、ごめんなさい!》 
 後で知ったことであるが、この日の外の気温は43度だった。
( ゚Д゚)


  
  《ジットのある立派な修道院》

                                                        つづく