泊 昌孝 の学術論文

1) On the resolution process of normal Gorenstein surface singularities of 
multiplicity two with $p_a \leq 1 $


昭和58年,Proc. Japan Acad., 第59巻 第5号 Ser. A (211-213項)
2次元正規孤立特異点の分類をZariskiの標準特異点解消の言葉でおこなうことを
めざし論じている。これに引き続く論文の結果および例を交えて,2重点について 
Brieskorn による絶対孤立性による特徴付けを、弱楕円型であって完全交差まで
拡張した。また、ゴレンスタイン 特異点について、自然に特異点解消課程の言葉
で特徴づけられるクラスを筆者の導入した不変量を用いて特徴づけられることを
のべた。

2) A geometric characterization of normal two-dimensional singularities
 of multiplicity two with $p_a \leq 1 $ 
 昭和59年 Publ. RIMS.Kyoto Univ.第20巻 (1-20 項)
 
 幾何種数が一般の楕円型2重点を特徴付るアルゴリズムを
 E. Brieskorn と H.Laufer の結果の拡張として示しています。 
 結論はZariski's canonical resolution における正規化が、被約 
 有理曲線を中心とする blowing up 一回でそれぞれ得られるというもので、
 絶対孤立性の自然な拡張になっている。当時、S.S.-T. Yau は Wagreich 
 の分類を発展させて、楕円型2重点には特異点解消の例外集合の形
 から約130系列の類があること示していた。 当論文は内在的な
 性質を与えることによるの分類である。

3) A $p_g$-formual and elliptic singularities 

  昭和60年 Publ. RIMS. Kyoto Univ.第21巻 (297-354項)       

 [博士学位論文] 2次元正規ゴレンスタイン特異点について、特異点の算術種数
 による環論的不変量の評価と、堀川の幾何種数の計算公式を拡張することで、
 blowing-up の 合成で得られる 特異点解消課程 を考察した。
 特に、ゴレンスタイン楕円型特異点 に関してH. B. Laufer や S S.-T. Yau  らの
 特殊な状況でしていた形式の命題を、 幾何種数に制限のない形に拡張した。
 特異点論にコーヘンマコーレー環の環論的性質を様々に反映させることを
 できることを示したのが本質的である。 

4) Maximal-ideal-adic filtrations on $R^1\psi_*O_{\tilde{V}}$  for normal
 two-dimensional singularities              
 
 昭和61年  Advanced Studies in Pure Mathematics 第8巻 (633-647項) 
 
 この論文のテーマは特異点解消からの直像$R^1\psi_*O_{\tilde V}$
 自身を調べることである。この加群上に
 極大イデアルによって定まる filtration の長さと
 幾何種数や算術種数などの他の不変量らとの関係をいくつかの不等式によって
 明らかにした。これより、幾何種数と算術種数が一致するゴレンスタイン特異点が、
 有理特異点と最小楕円型に限るというLaufer達の予想などが直ちに従う。
 特異点をfiltrationの観点から調べる有効性を具体的に示し大きく発展していった
 作品です。 
 
5) On singularities arising from the contractions of the minimal section of a 
 ruled surface             
( with F. Hidaka)
 
  平成1年    Manuscripta math 第65巻 (329-347項)       
  
 ruled surface の minimal section をつぶして得られる2次元特異点のゴレンスタ
 イン性を ruled surface を定める extension 類のフロベニウス写像に関する性質
 での特徴付けた。
  ここでゴレンスタイン性は泊-渡辺のfiltered ring の理論により、特異点解消から
  の標準因子から決まるある加群から局所環の局所コホモロジー
  への写像の単射性と密接に関係する。これを非常に具体的に調べ、同時に、
 得られた例の他の  環論的不変量の分類もおこなった。
  星型グラフを例外集合にもつ特異点論にたいして、最初の困難を具体的に
  調べるクラスとしてこれからも更に詳しく計算されるであろう。

6) Filtered rings, filtered  blowing-ups and normal       
 two-dimensional singularities with \lq\lq star-shaped \rq\rq resolution 
(with Kei-ichi Watanabe)
 平成1年  Publ. RIMS.  Kyoto  Univ.  第25巻 (681-740項)        
 この論文の目的は、通常の maximal  ideal adic filtration と  graded  ring の次数付き
 (重み付き)filtration に代表されるfiltration と filtered blowing-up  による特異点論
 の一般論 を展開し、2次元特異点であって、”星型特異点解消”を持つクラスの
  詳しい基礎づけと考察を行う事にあります。特異点の性質として、
associated graded ring の性質は 一般的にどのようにもとの環と比較されるか、
また、その差を表現する一般論を構築し、差が明確にわかる良い filtration 
が存在する為の条件を考察した。
 7) On $L^2$-plurigenera of not-log-canonical Gorenstein  isolated 
  singularities
  ( with Kimio Watanabe )
平成2年 Proc. of the Amer. Math.Soc. 109巻第4号 (931-935項) 
この論文の主結果は「log-canonical でないゴレンスタイン孤立特異点は、
$ L^2-$多重種数の意味にて一般型」 という特異点の小平次元に 関する
分類定理です。この命題の証明には、 泉脩蔵氏の解析空間上の局所環 
 の解析的 ordersの理論が essential であるとことを示しました。その後、
石井志保子氏によっての重要な 発展結果(Math. Ann. 286)
が続きますが、そこでも我々の議論が評価されています。
 8) The canonical filtration of higher dimensional purely
 elliptic singularity of a  special type                
平成3年 Invent. math. 第104巻 (497-520項)    
  
この論文の主題は、filtered ring の 理論の応用として、特異点解消についての 
relative canonical algebra の有限生成性 を調べることです。
Newton 境界のコムパクトフェイスは、それぞれlocal ring の filtration をひきおこ 
すが、かなり弱い条件のもとにcanonical filtration になってしま
い、これより特異点解消の relative canonical ring の有限生成性が特殊
な純楕円型特異点に対し証明されます。
定義式の Newton 境界について有限分類に結び付く具体的な 情報が得られた。

9) Normal $Z_r$-graded rings  and normal cyclic covers 
(with Kei-ichi Watanabe)
平成4年 Manuscripta math. 第76巻 (325-340項)     
 
 
目的は正規特異点の 巡回被覆の環論的研究の為の既約性、正規性やゴレンス
タイン性の基礎づけとして書かれまし た。環 $R$ の巡回被覆を分岐データ 
$D \in Div(R), f \in Q(R)$ を用いて表し、それらによる正規性の判定及び因
子類群の対応が結果です。応用として、巡回被覆が regular に成
るための条件を決定し、normal graded ring が Pinkham-Demazure 
  表現(ポーラライズド表現)されたとき孤立特異点を定める為の必要充分条
件を与えました。
10) The inequality $8p_g < \mu $  for hypersurface two-dimensional
 isolated double points 
 平成5年  Mathematische Nach. 第164巻  (37-48項)
2次元正規超曲面特異点の milnor 数 $\mu$ と geometric genus $p_g$ の間に
$ 6 p_g  \leq \mu $ という予想があります( Durfee予想 ). この論文の主定理は 
「重複度2の場合には、更に強く  $ 8p_g + 1 \leq \mu $ が成立すること」です。
技術的には 堀川の幾何種数計算公式と Laufer の公式のうえに乗って
 います。更に泊の楕円型2重点の特徴付けに関する 主結果の応用として、Yau-Xu 
が示した不等式の   別証明も与えて、現在までに得られ
てきた結果との位置関係も与えました。
11) Hypersurface non-rational singularities which look canonical from
their Newton boundaries
(with Shihoko Ishii)
 平成13年  Mathematische Zeitschrift、第237巻, 125-147 (2001)
超曲面特異点のNewton boundary を filtered blowing-up という観点から
研究しています。とくに、Prof. M. Reid 氏よる「有理特異点(または非有理特異点)
の判定に関する、良い埋め込みの存在」に関する予想に反例を構成することが
できました。また、同時にある意味では拡張した形での肯定的な回答も与えていま
す。われわれの3次元の反例のなかには、有名な95のクラスからちょっとはずれる
単純K3特異点も含まれています。
   Reid 先生の予想の単なる反例の発見というだけでは無く、filtered blowing-up 
による有理特異性の判定に関して、新しい局面を切り開く端緒になって欲しいと、
著者達は考えています。また、Reid 先生御自身からもいろいろアドバイスをいただき
ました。

12) Cyclic covers of normal graded rings
(with Kei-ichi Watanabe)
Kodai Mathematical Journal vol.24 (2001), 436-457
正規次数付環$R$ の次数付巡回被覆に Pinkham-Demazure 表現の言葉による
polarized 表現を与え、いくつかの応用をおこなっています。
とくに、index one cover, class group の巡回拡大に関する比較、
を通じて、$R$ の Kawamata log terminal property の判定、
そして、Kummer 型の 巡回被覆と Veronese 部分環をとる操作の関係
が論じられます。後者は、森重文氏の 次数付UFD の構造定理をすこし
拡張しています。
13) Multiplicity of filtered rings and simple K3 singularities of
mutiplicity two
Publ. RIMS Kyoto Univ., vol.38-4, 693-724(2002)
特異点の重複度をfiltered blowing-up の理論によって研究しています。特に、
その associated graded ring (tangent cone) の算術的なデータから、重複度
を下から抑える不等式を得ました。これによって、重複度2に単純K3特異点に
ついては、定義式の Newton boundary が $(1,1,1,1) \in {\bold R}^4$ を
含むような良い座標系の存在をしめしました。これは、(11) でも触れている
Reid 氏の予想をオリジナルな形で確認していることになります。
14) A characterization of semi-quasihomogeneous function
in terms of the Milnor number
(with Masako Furuya)
Proc. Amer. Math. Soc. vol. 132, no.7 (2004) 1885-1890
 超局面孤立特異点を定義する関数 f に対して、その Milnor 数 $\mu(f)$ を
座標に与えられた 重みと、それによる weighted Taylor 展開 $ f= f_\rho +
f_{\rho+1} + .... $ の言葉により、下から評価しました。この不等式の等号
が成立する為には、初項 $f_\rho$ が孤立特異点を定めることが必要十分
であることがわかります。このことは、Milnor 数の言葉による semi-
quasihomogeneous 関数になる為の $f$ に関する判定基準を与えています。
我々の証明では、filtered ring に関する重複度の理論が使われ、議論は
代数的なものであたえられます。
 この話しは、元々は共著者の古谷雅子氏が Newton 境界の言葉により得て
いたものを、代数的手法で等号成立条件をこめて別証明したものです。
15) A geometric characterization of normal two-dimensional Gorenstein 
singularities with $p_a=1$
Proc. The Inst. of Natural Scie. Nihon Univ. Vol. 40 (2005) 179-184
(日本大学文理学部自然科学研究所、研究紀要)
 主定理は、本リストの(1)(2) で示された2重点を含むある種の2次元楕円型
 ($p_a = 1$ で定まるクラス)特異点の特異点解消課程の幾何学的性質による
 特徴づけ定理を、一般のGorenstein である楕円型特異点にまで拡張したこと
 である。実は、この論文では、楕円型というよりは、性質 " $ L = p_g$ " を
 満たすクラスを幾何学的に特徴づけるという結果が示されている。筆者は長年、
 (1),(2) のころより、" 楕円型 --> $ L = p_g $ "  を予想し、この解決によって、
 完全な特徴づけ定理を目指していたが、近年この予想が、奥間智弘氏によって
 肯定的に解決された。結果として、この論文 に書かれている議論が表題の結果
 を導くこととなった。
  この論文の本質結果については、(1) に於いても少し述べられている部分は
 あるが、完全な証明を書いたものはどこにも出版されておらず、日本大学の
 紀要に論文として残させていただく事にした次第である。
 
16) Tomari, Masataka; Tomaru, Tadashi
The maximal ideal cycles over normal surface singularities with C^*-action
Tohoku Math. J. (2)69(2017), no.3, 415430.
(X,0) を C* action と π:(X~,E)->(X,0) の (X,0) の最小 C* good 解像度を持つ正規複素曲面特異点とします。
この場合、E の重み付き双対グラフは星型になります 
この状況で、Mで示される E 上の極大イデアル因子と E 上のArtin 基本サイクルを比較および研究しました。
特に、中心直線上で、M = Z であるとき、E 全体での等号が成立するかを問題にし、以下の結果を得ました。
  定理 3.5。
  (i) h1、h2 を deg(h1)≧deg(h2) を満たす同次元とする。 h2 が被約であるとき、(h1・π)E ≧ (h2・π)E である。
  (ii) h1、h2 が同じ次数の被約同次要素である場合、(h1・π)E=(h2・π)E となります。
  (iii) (f π)E=MEを満たす被約同次要素fが存在するとする。次に、E の中心曲線 E0 について CoeffE0ME=CoeffE0ZE <=>、
ME=ZE になります。

E0 が P^1 に等しいという特定のケースでは、 CoeffE0ME=CoeffE0ZE が常になりたちます。では、定理 3.5 の条件が
成立しない状況でどのような事がおきるか?論文hでは、例 3.8 で等号が成立しない現象を報告しています。この例は、都丸氏に
よる発見です。のちに、私は、超曲面4重点でどうような現象が生ずることを発見しています。
 
17) An Upper Bound of Geometric Genusof Normal Two-Dimensional Singularities
Proc. The Inst. of Natural Scie. Nihon Univ. Vol. 56 (2021) 
(日本大学文理学部自然科学研究所、研究紀要)
https://repository.nihon-u.ac.jp/xmlui/handle/11263/2335
We will define an invariant Lf for a normal two-dimensional singularity defined as a ratio of K′ divided by Z0,
 where K′(resp.Z0) is the numerical canonical cycle (resp. Artin’s fundamental cycle). 
Then we can show a simple upper bound of the geometric genus which have a similar style as the inequality by 
the length of elliptic sequence due to S.S-T. Yau. ((1)ofTheorem1).
 The Gorensteinness of maximally elliptic singularities is extended into (2) of our Theorem 1. 
18) The canonical covers of normal two-dimensional rational triple points
Proc. The Inst. of Natural Scie. Nihon Univ. Vol. 56 (2021)
(日本大学文理学部自然科学研究所、研究紀要)
https://repository.nihon-u.ac.jp/xmlui/handle/11263/2336
Given Pinkham-Demazure’s description R=R(P1,D) of normal two- di-mensional rational triple point R,
 we can calculate systematically the canonical cover S=R(Y,D~) by our theory of graded cyclic cover[19]
 as in Theorem(1.5). 
If pg(S)=0 then R is aq uotient singularity and there are infinitely many such cases Theorem (2.3).
 However, in the case of pg(S)=1, we can show the finiteness of such R in Theorem (3.1). 
Further in Theorems (2.4) and (2.6), some special infinite series of rational triple points of A-types,
 we will see the finiteness of R when the invariants a(S)=a′/s or pg(S) are bounded from above. 
Our results of the present paper give a good evidence of affirmative direction for finiteness problem about 
weights of singularity which have been developed in recent studies [17,25]. 


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