トップページへ | 箱舞台・第十二幕 | ミニチュアワークの部屋 |
2014年(平成26年)の夏、青森県の青森県立郷土館で行われた展覧会のために製作したご当地作品です。 奥の板の間の囲炉裏の上の自在鈎を取付ける最後の作業を終えた時「あ〜終わった」という解放感より「難しかった。重かった。」という思いが湧いてきました。今回の作品ほど、透視図法で作る難しさに直面させられた作品はありませんでした。 この建物に入って、まず最初に出会い印象付けられる「長通り」と呼ばれていた玄関から奥の米蔵まで続く14間(約25m)の土間空間の奥行き感を、どう表現するか。今までの作品では途中に部屋や建具があり、それらの操作で遠近感を演出できたのですが、この空間には、それらの装置となるものがなく、納得できる奥行き感を得るまで、ほぼ2ケ月、12個のスタディ模型(検討用模型)を作りました。 『玄関横の帳場の前で、米俵にサシをいれられて検査された小作米が、使用人の肩に担がれ、賑やかに長通りを運ばれていった。帳場の前に立ち並び、醤油で煮染めたような頬被りをとって握りしめ、検査の合格を哀願している小作人の姿を見るのが「つらくて、つらくて仕方なかった」と太宰は語っていたという。』(織田慧「アナーキーな祈り」) また、この建物についても「風情も何もない。ただ大きいのである。(中略)おそろしく頑丈なつくりの家ではあるが、しかし、何の趣もない。」(苦悩の年鑑」)と語る、この家に対する太宰の感情を、空間的にどう表現するか?それが今回、自分に突き付けられた重い課題でした。実際の建物より光の表現を控えめにし、木材の着彩も黒っぽく仕上げたのも自分なりの解釈の答えです。 |
『斜陽館』 縮尺 1/20〜1/42 畳製作:舛田ゆか 植栽製作:島木啓子 830W×210H×666D |