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2012年(平成24年)の秋、島根県浜田市での展覧会に出展するため、依頼されて製作したご当地作品です。 熊谷家は鉱山業や酒造業などを主な生業とする石見銀山御料で最も有力な商家でした。2010年、松江での展覧会での帰途、石見銀山の大森集落に立ち寄りました。集落の中にある「熊谷家住宅」の主屋土間に入り、太い梁組みと、その上部から降り注ぐ柔らかい光に包まれた瞬間「あぁ、この空間を作ってみたい!」という思いが自然に浮かんできました。 展覧会にあたり主催者側からご当地作品を製作して欲しいとの依頼がありました。ただ、浜田市内には古い集落や建物が残存していないので石見地方の中から津和野の森鴎外の生家など、いくつか提示された候補地の中に「熊谷家住宅」も含まれており、躊躇することなく、この建物に即決しました。 この度、取材のため再度訪れ、いざ製作する視点で建物を観察すると、前回感動した太い梁組みで構成された土間空間は、やはりダイナミックで魅力があるのですが、それ以上に、いくつかの部屋の闇の奥に浮かび上がる灯篭の立つ庭の存在に興味を惹かれました。「宇野千代生家」や「ヘルン旧居」など庭まで作り外光を取り入れた作品に、鑑賞者の人たちが大変感動されるのを展覧会の度、感じていたので今回の作品では表通りからの構図ではなく裏口から見た風景を作ることにしました。 今までの和風の作品では、殆どが建物を真正面からとらえた構図が多かったのですが、この作品では配置に角度を持たせ、ちょうど写真や絵画のように、風景の一部を切り取った様な演出を試みました。ミニチュア製作の原点であるスペインの「風景の標本箱」の製作手法にチャレンジしてみました。。 |
『熊谷家住宅』 縮尺 1/20〜1/27 畳製作:舛田ゆか 594W×272H×752D |