トップページへ              箱舞台・第八幕 ミニチュアワークの部屋

 第一場

静岡・静岡 『丁子屋』

  
平成23年(2011年)の秋、静岡市の「静岡ホビースクエア」で開催の「小さな夢の世界・ドールハウス展」へ出展するため、依頼されて製作したご当地作品です。今回もいくつかの候補の建物を見た後、この「丁子屋」に決めました。ご当地作品には、単に建物としての魅力のほか、その建物が地元の人に広く認知され、自慢とされているのも重要な要素です。「とろろ汁」の店として400年の歴史を持ち、歌川広重の浮世絵「東海道五十三次」にも描かれているこの「丸子の丁子屋」は、そういう意味においても静岡を代表する建物だと思います。
 今までの作品では、上は軒までとし屋根全体は作らなかったのですが今回の「丁子屋」は、どっしりした茅葺屋根が特徴で、浮世絵の印象からも省略することは出来ませんでした。ただ茅葺屋根の製作は始めての体験で、そのうえ取材から納入まで2ヵ月という超短期間のスケジュールで、材料の選択や加工の方法等、ミニチュアで表現する難しさを感じました。
 店の前に置かれた信楽焼きの「たぬき」の置物に自分の作風からすると違和感を覚えられるかと思いますが、実は7月にテレビ朝日系列で放映された「人生の楽園」を見られた方から「高田酒造店」の製作の注文があり、その方が「樽の上の狸がかわいいですネ」と言われ、知り合いに頼んで京都(京都の参年坂あたりにミニチュアの置物を売っている店が多く有ります)で狸の置物を買って来てもらったのですが、サイズが大きすぎて使用できず模型を製作中、角においていたところ(実際の「丁子屋」には樽が置いてあります)だんだん存在感が強くなり、そのうちに他の置物が考えられなくなりました。展覧会を見た方からは、「お店なので柔らかい感じが出て良いんじゃないですか」と比較的好評なのでそのまま鎮座することとなりました。

 『丁子屋』

縮尺 1/20〜1/24

畳製作:舛田ゆか
茅葺屋根製作:島木啓子
小物製作協力:柳田美紀子

560W×400H×600D