Nゲージ蒸気機関車>蒸機の紹介>キングスホビーの蒸機

キングスホビーの蒸機

キングスホビーの蒸気機関車キット

2004.10.28

1997年、長らく予定品だったKATOのC55がようやく発売され、スポーク動輪のパシフィック型動力ユニットが手に入るようになりました。 その翌年以降、キングスホビーから順次発売されたC51・C53・C54のボディーキットは、このC55動力を利用するものです。
設計がよいためか、全部同じ足回りなのにそれぞれの形式らしく見え、しかも確実に走るありがたいキットです。
しかも、説明書にはきちんと組み立てのすべての手順が書かれており、組み立てのアドバイスも豊富に記されています。

大正末期から昭和初期の、試行錯誤で形態変化に富んだ時期の蒸機が短期間に揃ったのは驚きです。


C51(1998年2月)

C51

シリーズ最初の製品で、ナカセイ以来のC51です。
組み立てで難しいのは、ランボードと給水温め機の配管でしょう。
ランボードは前部・後部の2分割で、それぞれにフチをハンダ付けする構造です。

給水温め機は真鍮丸棒で、これに太めの真鍮線を曲げて突合せでハンダ付けするようになっています。途中に小さいフランジが2つ付くのですが、コテの熱でどれかが必ず外れてしまい、かなり苦労しました。
キットではコンプレッサーと給水ポンプからの蒸気管が省略されています。

ご覧のように全体的には大きいのですが、形の捉え方が上手で、特にキャブはよく似ていると思います。動輪が大きく見えるので、いかにも足が速そうな感じがします。水かき付きなのもそれほど気になりませんでした。
また、組み立てが難しかった給水温め器と配管は、あとでロスト一体のパーツとなりました。

動力ユニットはボディーにはめるため、何個所かを削る必要があり、いったん動輪を外して作業します。

その後燕仕様・門鉄デフ仕様や、改良された標準・燕仕様も発売されました。後期のものではライトが煙室戸と一体のロストとなり、点灯式になりました。

C51お召し(1998年12月)

C51お召し

C51お召し前方

一般型、燕仕様に続き、お召し仕様も発売されました。
特徴はランボード上の手すりで、ただでさえ難しいランボードの組み立てが、いっそう頭の痛いものになっています。 そのかわり給水温め器がないので、その部分は気が楽でした。<

塗装後にボイラーバンドなどを磨き出すのですが、入り組んだところが多いので神経を使います。私は先の細い彫刻刀で塗装を削り取りました。
本当は軸箱なども銀色のようですが、素材の関係ではがれやすいのでやめました。
磨き出したところは金属がむき出しなので、グンゼの透明プライマーを全体に塗って表面保護と艶出しをかねました。

この製品も動力の加工が必要ですが、説明図は最初の製品よりわかりやすくなりました。最初の製品は写真のコピーで見にくかったのですが、イラストに変わりました。

このあとすぐにお召し編成の客車キットが発売されました。これは5両あるうえ磨き出しも複雑なので、かなり大変でした。
部品を合わせるのにも苦労した覚えがあります。
それでも、この金属製の機関車には、あとで発売されたKATOのお召し編成よりも、キングスホビーの金属の編成のほうがよく似合うような気がします。

C53(1999年5月)

C53

C53前方

シリーズが続いたので大変嬉しかった覚えがあります。
C51で難しかったランボードが、2種類の厚さの真鍮板を張り重ねる方法に変わり、組み立ては格段に楽になりました。

C55のライトを移植する方法で、ライトは点灯式となりましたが、ご覧のように後ろに下がっているので格好はいまひとつです。
ダミーのライトを付け直したほうが格好よくなるのでしょうが、点灯式も捨てがたくてそのままにしてあります。

煙室扉は手すりと一体成形のロストですが、ほかに手すりだけの別パーツも入っています。

組み立てのハイライトは、第1動輪を1mm前方に移設することです。そのため、専用のサイドロッドも含まれています。
第一動輪の軸箱のはまり込むフレームの角穴を、前方に1mm削って広げ、後方には厚さ1mmのプラ板を貼り付けるという方法ですが、見かけ上は思ったほど効果はなかったかもしれません。

C53流線形(1999年10月)

C53流線形

C53流線形前方

なんとこの時期、ワールド工芸と競作になってしまいました。
ただし両者の形の捉え方や各部の表現は、結構違っています。

上廻りはちょっと複雑な方法です。
煙室の両サイドが真鍮プレスのパーツになっており、それを周囲のエッチング板とつなぎ合わせます。形を作るのには少し苦労します。

砲弾型のライトはロストで、取り付け足内部に光ファイバーを貫通させて点灯する方式で、少し大きいような気もしますが明るく点灯します。

前方の手すりはすべて線材で作るようになっています。
裾の絞りは曲線ではなく、直線でパキッと折り曲げてありますが、ワールド工芸もそうです。

これは9mmゲージの日本型蒸機の中で、一番大きく見えるかもしれません。
ただし横幅に関していえば、マイクロエースのC53のほうが上です。
下廻りの加工はほとんどいらないので、組み付けは楽です。この作例では第一動輪の移設も省略しました。

この頃になるとKATOのC55標準型は市場で底をついていましたが、タイミングよく門デフが発売されました。
初回のC55に比べ、先輪の形状が良くなっているので好印象です。

C54(2000年1月)

C54

C54前方

限定品として販売されたので、問屋さんルートでは出回っていないようですが、もともと「限定品」というのは何をさすのか、ユーザーにはよくわかりませんね。
説明書はこれまでの蒸機シリーズで最高のわかりやすさで、他社を含めて考えてもかなりの出来です。 説明書を作るのには相当な手間がかかるでしょうから、こういう配慮には嬉しくなります。

残念なことに、C53で組み立てやすくなったランボードが、またC51方式のフチをハンダ付けする方法に戻ってしまいました。
ライトはホワイトメタル製の煙室扉についており、ライト下部へボイラー内部から光ファイバーを差し込んで導光する方法です。形態と機能が両立されていて、現実的なアイデアだと思います。

それにしても、まさかこんな形式まで発売されるようになるとは思っていませんでした。
シリーズ中、一番頭が高く見える形式です。

この一連のシリーズでは、テンダーの上下なども使うので、機関車の動力部のASSYだけを買っても作れません。
また、テンダー台車枠が付属しておらず、KATOのD51のテンダー台車を用意するように指定されています。
このパーツが入手しにくいため、キングスホビーから発売された完成品では、C55の台車のままだったりしました。
C53流線形だけは台車がカバーに隠れるため、台車が違っていてもあまり目立たないので、私の作例ではC55の台車のままとしました。

C55(1997年12月)

C55

すべての種車になったKATOのC55です。
すでに発売されていたC57と形態的な共通点がたくさんあるので、発売までには予告から結構な時間がかかりました。
その間、ワールド工芸から小さくてスポーク抜きの製品が先行発売されたり、マイクロエースがD51で本格参入したりと、この分野の市場環境も変わっていきました。

このC55の下廻りが一番似合いそうな、「C55流線形」がキングスホビーからも出るかと思ったのですが、それはありませんでした。同社が手がけていればどんなものになったのか、見たかったと思います。


中村製品の同形式製品

これらの形式はすべて、キングスホビーの10年以上前に、中村精密からも製品化されています。
同じアングルで写真を撮ってみましたので、下記リンクで比べてみてください。
中村精密版の同一形式
どちらのメーカーも、個性的な製品ばかりです。

さて、C55を使ったキングスホビーのシリーズはこれで終わってしまいましたが、今までもそうだったように、たまにマイナーチェンジをして発売されるかもしれません。
続きとして、C57を利用したC59が出ないかな?と思いましたが、そんなに甘くはなかったですね。
(後日追記) 大変残念なことに、2012年2月、キングスホビーは休業となってしまいました。


「Nゲージ蒸気機関車」トップページに戻る