子供の頃の変な体験


私は子供の頃の一時期、古い社宅の長屋の街に住んでいました。
社宅街は何箇所にもあって、そこを数年ごとに引っ越しました。1箇所に居座られないようになっていたようです。
このとき住んでいた社宅街は、山肌に面した坂に段々畑のように作られていました。建物は昭和初期に作られたものでボロボロでした。風呂も下水もなく、プライバシーなどという言葉もありませんでしたが、皆助け合って互いの子供を地域で育てながら暮らしていました。

社宅街の上には、野球ができるぐらいの広さの空き地があって、バックネットもありました。まだ学校に入る前の私は、よくそこで近所の子供たちと遊んでいました。
スケッチブックを持っていって、遠くにちらりと見える汽車の絵を描いたりもしました。

あるとき広場に行ってみると、珍しいことに誰もいません。
つまらなくなって、広場を囲んでいる笹薮の中に潜り込んでみました。どこまで続いているかわからない藪なので、いつもはそんなことはしません。

ここからが変です。

ほんの5、6メートルも進むと、突然笹薮を抜けました。
そこにはなんと、もうひとつの広場があって、山側からキレイな水が沸き出ており、天然のプールができていました。
普段の長屋の子供たちとは違う、知らない子供たちがたくさん楽しそうに水遊びをしていて、監視役のような大人も何人かいました。 こんな近くにそんな場所があったなんて、すごい大発見です。

しかし、翌日にまた行ってみると、そんな泉も広場もまったくありませんでした。

唯一、ほとんど干上がった小さな水溜りのようなものが藪の中にあっただけ。
近所の子供や大人も、そんな泉やプールについて誰も知りませんでした。

あれは何だったのか今でも不思議です。
認知機能がきちんと発達していない子供のこと、脳の中で一瞬にして形成された偽の体験だったのかもしれません。 あるいは翌日に見た夢か何かが現実とくっついて、偽の記憶が作られてしまったのかもしれません。しかし、ともかく私の頭の中では事実として記憶に刻まれてしまっています。

どなたにも、今から思うと不思議でちょっと怖い子供の頃の体験が、ひとつふたつありませんか。


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