2011.12.11/2012.1.8
車輪に塗ると、摩擦力を高める働きをし、牽引力を向上させるという米国製の商品です。液体ゴムタイヤと書きましたが、材質はわかりません。
商品名は Bullfrog Snot という、おフザケが入っているものです。色からしてそんな感じかも…。
カタカナだとブルフロッグ・スノットとなるのでしょうが、実際のBullfrogの発音は日本人には「ぼうふら」に聞こえます。
KATOのC62 2号機が発売されてから、やや影の薄くなった天賞堂のC62 2号機(初代)で試してみました。この製品にはゴムタイヤがなく勾配は苦手です。
4%勾配+R280mmでは、客車3両程度でスリップしていました(注:あくまで私の環境です)。
なお、天賞堂製品に求められるのはプラ製品の代わりではなく、「製造にいかに手間がかかっているか」という部分であるのだろうと私は考えています。だから通常はそれでよいのです(平坦線なら12両以上は牽けます)。
天賞堂のC62に、スハ43を牽かせ、R280mmの4%勾配を登らせたところです。 しかし、5両となると写真のように立ち往生してしまいます。 |
|
上の写真の機関車部分のアップ。空転しています。 これにガマの油を適用すれば、勇ましく坂を上ってくれるでしょうか? |
ジョーク製品のような商品名なので、説明書きを読むときも、どこまでが本当なのかよく考えませんと…。 出だしから冗談…。 誰がどう作っているのかさっぱりわかりません。 |
ぼうふら液を塗布するには、車両を逆さにして動輪を回転させる必要があります。 問題はどの動輪に塗布するかです。ギヤ駆動している直接のドライバーは第二動輪なのと、重心も第二動輪の少し前あたりのようなので、第二動輪に決めました。 恐らくどの車輪に塗布するかの選定はかなり重要だろうと思います。あまり荷重のかからない車輪に塗っても、集電が悪くなるだけで効果は少ないかもしれません。機関車によっては、効果のある車輪が見つからないこともあるかもしれません。 |
|
つまようじの先に1滴つけて塗布するようにという説明がありますが、海外サイトで筆のほうがよいという体験談がありましたので、筆にしました。 液体の粘性は結構高く、塗料ならほとんどまともに塗れないような粘度です。見かけもそうですがマスキングゾル並みです。 |
いよいよ本番です。 粘度が高いので、うまく踏面に馴染んでくれません。均一に広がりませんし、塗り足りないところに追加しようとしても、なかなか乗りません。 動輪の回転をあまり早くしても意味がありません。単に全周を塗りやすくするために回転させるようなものです。早すぎると、筆先の液体が飛んで、本当にブレーキシューに詰まったりします。 |
|
そのまま15分ほど回転させます。しかし、先ほどのような粘度なので、この回転によって均一に馴染んでいくということはないと思います。 15分たって止めてみると、メリットシャンプーのような色だった塗布部分が、写真のように透き通ってきて、ほんのり緑色という感じになりました。何か厚さも薄くなったように感じます。塗ったときはデコボコだったのが、むらはあるものの適度な薄さになったような気がします。 |
このまま一晩、最低でも数時間おくようにとあります。私は6時間おいてから試しました。
指で軽く触ってみると、ゴムとまではいきませんが確かに軽い粘着性を感じます。これが効くことを期待!
同じ条件の4%勾配+R280mmで試してみました。 5両、6両、7両…まったくスリップしません! 10両を超えてもまだ大丈夫です。 |
最終的に15両までつなぎましたがまったく平気です。見事に大変身しました。
テストコースが畳1枚分の広さしかないため、これ以上つないでも、末尾が下りきる前に機関車が上りきってしまうので、意味がありません。
動きがわかるようにシャッター速度を1/10ぐらいにしています。暴走しているように見えますが、実際には普通のスケールスピードで走行できます。
当初は、せいぜい6両牽けるようになればよいだろうと考えていましたが、なんと300%とは驚きました。
効果はわずかなことも多いようなので、これは大成功した例だと思います。
自宅で天賞堂のC62がこんなに生き生きしているのを初めて見ました。
長時間走らせると、ゴムタイヤが汚れるのと同じように、Bullfrog Snotの塗布面も黒く汚れてきますが、通常通りユニクリーナーを綿棒につけて拭けばきれいになりました。その後の牽引力も落ちませんでした。
長時間の走行で汚れた塗布面。 |
ユニクリーナーで拭いたあと。きれいになります。 |
皮膜は次第にはがれて効果が薄くなってくるそうです。そうなったらナイフで古いものを削り取り、もう一度塗布するようにと書かれています。
最後に注意事項として、凍結を避けるようにとのことです。溶媒は水のようです(使った筆は水で洗えます)。 ついでにクリプトナイトも避けるようにと書かれています…。大事なことですね。そんなものが近くにあるとスーパーマンも来てくれませんものね。 |
今のところ私はこの商品について、これ以上の知識は持っていません。
国内での取扱店は少なく、入手方法について尋ねられてもわかりませんのでご了承ください(海外の方から頂いたのです。税関で開封されました…)。
中身の正体は何でしょう。ほんのりと酢酸ビニル系樹脂のような匂いを感じます。
乾くと透明に近くなる、凍結に弱い、ビニル状の皮膜になるという性質もありますし、これが基本にあるのかもしれません。
類似の試みは昔からいくつかレポートされていますが、今までやったことがありませんでした。
その他にも気になる車両があったため、2つ試しました。結果はまちまちでした。
今回はKATOのスハ44「つばめ」基本+増結でテストしました。よって最大で13両です。
まず先日の後日談です。前回のC62は塗布後6時間ぐらいで試したものですが、日数が経つと硬化が進んで少々性能が変わるようです。
15両を牽いたC62も2週間後に試すと、若干落ち着いて13両くらいになっていました。でも依然十分すぎます。単機で「つばめ」を牽いて4%勾配を登るんですから。
初代のC55流線型は15年前の品です。ワールド工芸のテンダードライブ機の最初のもので、まだ牽引力増強装置はおろか、イコライザの仕組みも確定していません。
無理すれば結構引けるのですが、安定した速度で走れる目安は平坦線で客車5両程度としていました。
塗布前の実験です。 以前に測ったときは、何度試しても2両でダウンしていたのですが、今回は5両までは空転しつつも何とか登りました。何か条件が違うものと思います。ただし6両になると、ほとんど満足に登れませんでした。 |
Bullfrog Snotを塗ります。C55はテンダードライブ機で、集電もテンダーのみのため、どこに塗布するかが問題です。8輪中2輪がすでにゴムタイヤ付きなので、集電車輪は6輪のみです。 説明書のとおり、つまようじで塗布してみたのですが、やはり均一に塗ることはできませんでした。 塗れなかった部分に追加しようとすると、すでに塗った部分がはがれてきたりします。まずは、多少デコボコになってもあまり気にしないことと、塗布には小さい平筆を使うのが一番よいようです(筆は乾く前に水で洗えます)。 失敗したら、爪楊枝などで引っ掻くようにすれば剥ぎ取ることができますが、なかなか強い粘着性があります。 |
結果は9両でした。6両→9両ですから150%ということになります。 |
私のC55流線型(初代)の場合、牽引力は増しましたが、別な不安も出てくるという結果でした。これだけ牽くと走行安定性の面で実用には難しい感じなので、無理なドーピングは禁物です。
天賞堂のNゲージ蒸機としては最後のものです。LEDが前照灯に完全に内蔵され、後部に導光材がまったく見えないという特長があります。
非常に手間をかけて作られている製品であり、コンセプト的にプラ量産品のような牽引力は重視されていません。
塗布前の実験です。 |
最初はC62と同様、第二動輪への塗布のみでうまくいくかと思ったのですが、思ったほど効果が出ませんでした。 そこで、第一動輪にも追加で塗布してみました。集電性は落ちるはずですが、機関部全体で正極、テンダー全体で負極という集電なので、ただのエンドレスなら大丈夫でした(ポイントの密集地帯では影響が出るかもしれません)。 |
今度は最初から筆で塗りました。やはりこのほうがうまくいきます。とはいえ塗りムラを何とかしようと逆に失敗してしまい、数回やり直しました。これは均一にならないものと割り切ったほうがいいんじゃないかなと思います。 要は今まで上れなかった坂を、上れるようになればいいんですから。
今度はガバッと効果が上がりまして、つばめ13両全部行けました。1軸塗布と2軸塗布で結果が違いすぎるような気もするので、軸重のバランスか、塗布の状態も関係しているかもしれません。
元気に登っていきます。 |
必死の投炭という印象ですが、この急坂でもフル編成を何とか牽くことができました。平坦線で使うのが前提であれば大幅に余裕ができたことになります。もしかしたら第一動輪の塗布だけでもよいのかもしれませんが、未検討です。
今のところ、大幅に状況が好転したものからそうでないものまで色々ですが、牽引数が変わらない/減ったというものはありません。どれも一定の効果はあります。
特に天賞堂C62(初代)の変身ぶりは絶大でした。
※自分の手持ちの品しかわかりませんので、個体差や条件差により、同様の結果になるかどうかは不明です。
しかし金属蒸機に比べると、C62北海道形のようなプラ量産品がいとも軽々と坂を上っていくのは、ちょっと不思議に思えてきます。
ひょっとして重量も意外に重いのでしょうか…。
台所用のスケールを持ってきました。
天賞堂 C59 |
天賞堂 C62(旧) |
KATO C62北海道形 |
天賞堂のC59とC62の効果の違いは重量からも少し理解できますが、KATOのC62はもともと一段軽いです。ゴムタイヤ強しという感じでしょうか。
Bullfrog Snotの主剤はよくわかりませんが(見る人が見れば一発かも)、マスキングゾルが近いのではないかというご意見も頂きました。マスキングゾルには主剤も性質も違う商品が多数あるので、近いものがあるかもしれません。
手元にあるものでは、溶液の感じやゴテゴテ具合が一番近いのが「Mr.マスキングゾルNEO(ゴム系)」でした。ただ臭いは相当違いますし、金属面への固着の強さも違います。マスキングゾルNEOは乾き始めると、軽く指先で擦っただけでポロポロ取れますが、Bullfrog Snotはその程度ではまったく取れません(爪で強く引っ掻くと同じように剥がせます)。
類似商品の「Mr.マスキングゾル改」は、溶液の感じはかなり違いますが、硬化後の様子は一見近いです。ただやはり、剥がれにくさの面ではBullfrog Snotのほうがずっと強力でした。
…マスキングゾルは、必要なときに簡単に剥がれてくれないと困りますからね。
それでも、マスキングゾルの仲間が基本という線は有力そうです。用途が違うので、皮膜の強さ重視で調合したものではないでしょうか。最終的に正体がわかると拍子抜けするかもしれません。
水性ゴム系接着剤(ボンド水性G)はどうかと思いましたが、臭いも乾いたときの様子も違いました。これがこれで使えるかどうかはわかりません。