1970年頃から発売された、ニットー(日東科学)のプラ模型です。
「チビプレーンシリーズ」という当時50円の旅客機シリーズで、DC-8やボーイング747、コンコルドなどが航空会社違いで各種発売されました。私も発売当時、ボーイング727を組み立てた覚えがありますが、それがこのシリーズであったと知ったのは近年です。
50年たった今、当時のシリーズのひとつ「ボーイング747 パンナム ジャンボ」を組み立ててみました。
箱は長辺14センチ程度の大きさです。
発売中にメーカー名が変更になっており、写真のキットは赤青の新ロゴです。
このボーイング747は1/540 SCALEとされていますが、シリーズ内で縮尺は揃っておらず、機種によってまちまちのようです。
裏面は説明書になっています。
この頃すでに、「部品を取り出した空袋は幼児がかぶったりしないようにやぶりすてて下さい」というおなじみの注意書きがありました。ゴマ粒のような大きさの文字です。
中身はランナー2枚と飾り台パーツ、スライドマーク、接着剤です。
胴体のランナーと接着剤です。
客室窓は深めの凹モールドになっていますが、この上からベタッとスライドマークを貼るので、せっかくの窓モールドは見えなくなってしまいます。
残りの部品です。
「バリがあったらナイフで切りとって下さい。」とありますが、それほど派手なバリはありません。
ただ、部品とランナーをつなぐゲート部が非常に短く、切り離しの際にニッパーを使うと部品ギリギリでのカットになってしまいます。部品を傷めそうだったので、今回はナイフのみで慎重にカットしました。
価格を考えてもターゲットは子供だったと思うので、道具など使わず手でむしり取られていたことが多かったと思います。うまくいったのかしら。車輪など折れてしまいそうですね。
部品の歪みやヒケも思ったほどはありませんでした。唯一、一方の翼端がひん曲がっていたので、温めながら少しずつ直しました。
全体的には、値段の割にちゃんとしたキットだったんだなという印象です。
まったく説明書のとおりに組み立てると、どんなものになったのでしょう。
胴体は左右を貼り合わせ、翼にはエンジンを接着しました。合わせ目の継ぎ目消しなども行っていません。
エンジンは翼に対してどんな角度で付いているのか…たぶん翼には上反角がつくので、翼に対して直角ではなく、鉛直下方向に付くのでは?と思いましたが、付くようにしか付きませんでした(笑)。
何か、あとは車輪を接着してスライドマークを貼れば終わってしまいそうです。
しかし、説明書を見ると「シルバー」の塗装指示がところどころにあるではないですか。
えっ?この50円プラ模型に塗装をさせますか…。
説明書のとおり組み立てようと決めたので、塗ります。
シルバーの塗り分け位置がはっきりわかりませんが、あまり難しく考えず、説明書から判別できる部分をマスキングしました。
ちなみに私、飛行機についてもまるでわかっておりません。よく飛ぶなあとは思います。まあ揚力ある限り、機体は強固な大気の上に安定しているのかもしれませんけども。
アクリジョンのシルバーで塗りました。こんなんでいいのかなぁ…。胴体の塗り分け位置は、実物はもう少し上かと思いますが、このキットは窓の帯の幅が太いので、そのぶん意識的に下げました。結果、下げすぎました(笑)。
白い部分は無塗装のままです。
さていよいよ。
「マークは図をよく見てきれいにはりましょう。」とあります。
塗装をしなくても、スライドマークぐらいは貼った人が多かったはず、と想像します。私なんか、当初は方法をよく知らなかったもので、台紙を丸ごと水に浸けて、糊が溶け切ってプカプカ浮いてきたものを拾って貼り付けていました。当然、乾くとすぐ剥がれてしまいました。
しかし製造後50年という歳月には勝てず、退色や糊の変色が進んでいます。これを水に浸けると何が起きるのか、ちょっと予想できません。
元のスライドマークをそのまま使うのはやめ、新しく転写シールを作って貼ることにしました。まずイメージスキャナーで元のスライドマークを読み取ってデジタル修正し、インクジェットプリンターで裏返しに印刷しました。極力オリジナルを尊重し、修正は最小限にしています。
色調は黄変前のオリジナルを想像したもので、あまり大きな自信はありません。
黒い機関車模型に使うときは白糊タイプの転写シールを使っていましたが、今回はプラの地色が白なので透明糊タイプを使いました。右下に重ねてあるのが元のスライドマークです。
台紙が固くて曲面に馴染まず貼りにくいですが、水で軽く台紙を湿らせて押さえつけたりして、何とか貼り終えました。
窓の帯が相当太いのもそうですが、各種の文字やロゴマーク、星条旗などがことごとく大きく、本来のっそりと大きな747の機体も小さく見えます。
でも、あまりスケールどおりに細かくすると貼りにくいでしょうし、このへんが楽しく組み立てられるいいトコかな、とも思います。また印刷そのものはなかなか精密で、いいかげんなものではありません。
ちなみに翼の接着を最後に回したのは、窓の帯を貼る際に邪魔になると考えたためでした。
翼はガッチリ接着したかったため、はみ出し上等で接着剤をたっぷり付け、ムニュッとはみ出させつつ押し付けました(本来、そういう接着は塗装前にするものですが)。
あとは車輪を接着して組み立て終了です。
実は、このままだと重心が後ろすぎて尻もちをついてしまうので、機首にオモリを入れればよかったなと思います。実物がそうならないのは、翼の前方に付いているエンジンが重たいんでしょうか。でもそれならエンジンが3機とも尾部にある727はひっくり返りそうですし、単純に飛行機というのは機首が重いものなんですかね。
完成しました。2020年から見て約50年前の50円プラ模型です。
付属の飾り台に取り付けたところ。飛び立っていく感じがしていいです。
箱絵と同じ角度から。
模型全長は、機首から垂直尾翼後端まで、約13センチです。
形状にはフリー的なところがあり、飛行機に詳しくない私が見ても、お顔はあんまり747には似ていないような気がします。鼻筋やおでこの傾斜とか、操縦席窓の高さなどですね。
何しろ50円なんですから(当時でも安いほうでした)そんなところよりも、まず子供がパッと組み立てて、楽しく遊べればよかったのではないかと思います。
このジャンボは縮尺1/540ということです。1/150のD51形機関車と並べるとこんな感じです。
もし、ジャンボを機関車と同じ1/150で作ると、全長47センチぐらいになってしまいます。とても、普通のレイアウトには飛行場は作れそうにないですが、遠くのほうに置いてうまくデフォルメすれば感じは出るかもしれません。
値段が安かったので、今のコレクショングッズのように、シリーズを全部集めて組み立てたという方もいらっしゃったかもしれません。
初回から50年経ってもあまり上手にできませんでしたが、そこそこ手軽にでき、ちょっとは難しいところもあって面白かったです。
よく知らないものを組み立てているから純粋に楽しい、というのもあるかもしれません。