第6回MM−1グランプリ






THE FINAL ROUND!!












X子:はいどうもー!
   第6回MM−1グランプリ予選15位の「乙女の方程式」です、よろしくお願いします!

Y美:…ねー、準決勝敗退のあたし達がまさかの決勝戦司会ということで。

X子:そうよ全く。本当なら決勝進出者として舞台に立っていたはずなのに。
   だったら、意地でもY美をガブ飲みしておくんだったわ…

Y美:お姉ちゃん、こんなところに来てまでネタの設定引っ張るのやめて…
   あたし達のネタを読む前にここに来た人には意味不明だから。

X子:まぁ何はともあれ、主催地を変えて初のMM−1ですからね。
   他にも私達みたいな覆面コンビの参戦や初の60組台参加ということで注目が集まっている大会ですすよ。

Y美:ですね。そして今夜、この舞台で全66組の頂点が決まるわけですね。

X子:さて、決勝戦の流れですが、
   まずは決勝に進出した9組のネタを順にご覧いただきます。
   その後、9位から順に結果を発表していきます。

Y美:各組のネタの後には、それぞれ2〜3名の審査員からコメントをいただきます。
   全員分の審査コメントは最終結果発表後にまとめて紹介します。

X子:それではさっそく1組目の方にネタを披露していただきましょう。

Y美:まずはこちらのコンビです、どうぞ!

今回、MM−1初出場にしていきなり決勝に進出。
日頃からのネタ作りの成果が、今明かされる!
エントリーNo.051
ボルケーノ
竹取物語
A: あー、お前にお願いしたいことがあるのに、断られた場合のこと考えたら不安だ。
  泣くかもしれない。

B: 急にどうしたんだよ!?…何か俺に頼みたいことでもあんの!?

A: …俺ね、将来自分の子供を寝かしつける時に、横で絵本を読んでてあげたいんだよ。

B: そういう家庭が夢なわけね。

A: そう。それで、実はさっきまで1人で絵本を読む練習してたんだけど…
  それってよく考えたらかなり気持ち悪い光景だし、何より聞いてくれる人がいないと意味がないなと思ってさ。
  だから、ちょっと俺の音読を聞いててくれない?

B: …いいけど、なんか、より気持ち悪い光景になる気もするけど。

A: 大丈夫大丈夫。お前さえいれば、見た人全員
  「あぁ、将来のために子供に絵本読んであげる練習をしてる人とそれを聞いてあげてる人だな」
  ってわかるから。

B: そんなピンポイントな想像できるか!?

A: できるできる。それで、せっかくだから、自分で考えたオリジナルの物語を読んであげたいな
  と思って、作ってきた。

B: マジで!?

A: じゃあ読み始めるね。…『かぐや姫』。

B: どこがだよ。日本最古の物語だよ。

A: 昔々、竹を取って生活している老夫婦がいました。
  2人はとても貧しいため、おじいさんが竹を切りに行く時、お昼のお弁当すら持っていけませんでした。
  その為おじいさんは、お腹がすいたら山に生えてるキノコを適当に食べていました。

B: 危ないよ適当は。

A: その日も、おじいさんが竹を集めに行くのを、
  おばあさんは自分がお昼に食べるローストビーフの準備をしながら見送りました。

B: 全然貧しくねー!しかもずりーぞ1人だけ!分けろよ爺さんに!

A: 山に着いてからは、せっせと仕事に励みました。
  作業が一段落したおじいさんが、休憩時間にキノコを食べた結果、大爆笑していると

B: ワライダケじゃねーか!完全に毒キノコいっちゃったよ。

A: 竹やぶの中に、こうこうと光る1本の竹を見つけました。
  おじいさんはその竹やぶごと家に持ち帰りました。

B: どうやってだよ!?それが出来ないから切って集めるんだろ!

A: 竹を切ると中から小さな女の子が出てきました。
  竹から生まれたので、『竹の子』と名付けました。

B: やめろー!桃太郎式ネーミングすんな!いじめられるだろ将来!

A: 竹の子はすくすくと成長し、ぐんぐん大きくなりました。
  竹の子は意外と成長が早い。なんて成長の早い竹の子。

B: なんで2回言った?

A: …竹の子はとても美しく成長しました。そのため、求婚してくる男が後を絶ちませんでした。
  竹の子と求婚。あぁ竹の子と求婚。

B: だからなんで2回言うんだよ。

A: …竹の子の球根。

B: 何だそれは!?

A: しかし、どんな男が結婚を申し込んでも、竹の子はそれを受けようとはしませんでした。
  なんて固い竹の子でしょう。竹の子は、意外と固い。
  そして、おじいさんおばあさんも「竹の子はよその家には渡さん」
  と言って、絶対におすそ分けしようとはしませんでした。

B: おすそ分けって言うなよ!他は濁してるのにそれ完全に食材の言い方じゃねーか!

A: ある時、諦めの悪い5人の男を集めて言いました。
  「私が欲しいと言った物を1番最初に持ってきた人と結婚します」
  そして、5人それぞれに1つずつ、あるものを要求しました。
  『みりん・しょうゆ・砂糖・かつお節・ご飯』
  …どれも大変無茶な要求ばかりでした。

B: どこがだよ!すぐ家から持ってこれるだろ!そんで煮物作る気か。

A: 男たちは方々を探しまわりましたが、ついに誰も、品物を見つけることができませんでした。

B: 何でだよ!?そいつらの目はどんだけ節穴だ!

A: 男たちはそのまま原宿に居つき、歩行者天国でダンスを踊り青春を謳歌しました。

B: 竹の子族じゃねーか!

A: そして月日は流れ、3月下旬。竹の子は、月を眺めては悲しそうな顔をするようになりました。
  3月下旬、竹の子は、しゅんとなっていた。しゅんの時期を迎えた竹の子。
  「どうして悲しい顔をしているんだい?」
  おじいさんが聞いても、「えぇと…なんでもないの」とごまかすばかりで、答えようとはしませんでした。
  煮え切らない竹の子。竹の子が中々煮え切らない。
  業を煮やすおじいさん。
  風呂で煮えるおばあさん。

B: 何があった!?早く助け行って!おばあさんが煮物かローストビーフになっちゃうよ!

A: しかし、おじいさんは何度も聞きました。それでも竹の子は答えません。
  意志の固い竹の子。
  業を煮やすおじいさん。
  やわらかくなったおばあさん。

B: 煮え切ったよ!おばあさん風呂で煮え切ったよ!

A: 根負けした竹の子はやっと真実を話してくれました。
  実は彼女は月の世界の住人であり、もうすぐ帰らなければいけないと言うのです。
  大変悲しいことですが、どうしようもありませんでした。
  数日後、月にある里から迎えがやってきました。おじいさんと、柔らかいおばあさんは別れを惜しみました。
  こうして彼女は、故郷・たけのこの里へ帰って行きました。
  竹の子の里へ帰る様子を、2人は、光る竹を見つけた、あのキノコの山から見送るのでした。

B: それでキノコ出てきたんかい!

A: そして月日は流れ…
  おじいさんが今日も山に行くと、あの竹やぶがあった辺りには、新しい竹の子が、ひょっりと芽を出しているのでした。
  芽出たし、芽出たし。

B: 結局全部竹の子の話じゃねーか!もういいよ。


X子:はい、ありがとうございました。
   これはいきなりなかなかのネタが来たんじゃないでしょうか。

Y美:では、さっそく審査員の方々からのコメントをいただきましょう。
   まず、今回初めて審査員を務めました先風さん、いかがでしょうか?

 
・うわ、何ですかこれ。すごい面白いじゃないですか。
 文章としての表現方法が上手なので「2回言う」なんていう
 本来だったら別に何の効果も成さなそうなボケですら面白いですね。
 前半8行だけで絶対面白いんだっていうのがわかる作品でしたね。
 「昔昔」から6行分だけボケの質がわりと普通だった事を除けば
 絶対上位にいてほしい作品だと思います。うーむ。


X子:おお、これはいきなり絶賛のコメントが来ましたね。

Y美:なるほど。では、同じく初めて審査員を務めましたQianTianさんはどうでしょう?

 
・何故でしょう・・・
 このネタに高得点付けるのは非常に悔しい感じがしますw
 韻を踏むのが滅茶苦茶上手いですね。
 とりあえず一本調子なツッコミを工夫すれば、更に洗練されたネタに仕上がると思います。


X子:なるほど。さすが決勝まで来たネタだけありますね。

Y美:では最後、前回も予選審査員を務められ、今回は決勝審査員を務めました利根川さん、いかがでしょうか?


・文章の書き方が上手いですね。読みやすくて好印象でした。好きです。
 あと言い回しがなんか面白かったです。心地よいくどさが良かったですね。
 ただちょっとワンアイディアで引っ張りすぎかなと感じました。
 広がりを見せる展開が欲しかったですね。竹取物語の範疇の中だけで遊んでる感がしてもったいないなと思ったです。
 読み物としては良くできてると思いましたけど、漫才としては良くもなく悪くもなくだなと。ぉぉぉ!★★点!


X子:なるほど、良い面・改善点を的確にご指摘いただきました。

Y美:ん、ちょっと待って…最後の「★★点」って言うのは…?

X子:よく気づいたわね。それなんだけど、
   利根川さんはコメントの最後に点数を公開してしまわれたので、
   先に取り上げるにあたっては点数の公開を控えさせていただきました!

Y美:あぁ、なるほどね…



X子:さて、どんどん参りましょう。

Y美:はい、2組目はこの方たちです!


第4回MM−1では決勝4位。過去には別コンビで優勝経験もある。
今回は長文生命を懸けての戦い、果たして再び栄光を掴むことができるのか!?
エントリーNo.002
センチメンタルゼリービーンパニック
アンデルセンに告ぐ
高岡「どうもセンチメンタルゼリービーンパニックです」

国立「子供の頃から童話が好きでねー…
   特に好きなのがマッチ売りの少女ね」

高岡「健気ですよねー。マッチ売りの少女。
   いいじゃない、僕も好きだったなー…」

国立「でも僕だったらもっと悲しくて
   読み応えがある感じにできますよ」

高岡「あれ以上悲しくすんの?!
   あれでちょうど良いと思うけどなあ」

国立「マッチの代わりにケンタウルスを売る、
   ケンタウルス売りの少女ね」

高岡「意味わかんねえな!なんだその童話!
   ケンタウルスってあれだろ?
   上半身が人間で下半身が馬の…」

国立「そうそう…ギリシャ神話の怪物のね。
   売るのをケンタウルスにしたら
   すごく悲しい物語になるんだよ…」

高岡「その発想自体がちょっと悲しいと思いますけどね…」

国立「年の瀬も押し迫った大晦日の夜、小さな少女が一人、
   寒空の下でケンタウルスを売っていました」

高岡「いらねえよ!
   道行く人の中にケンタウルス買う奴なんかいねえよ!」

国立「ケンタウルスが売れなければ父親に叱られるので、
   すべて売り切るまでは家には帰れないのです」

高岡「父親は完全にどうかしちゃってるよね…」

国立「寒空の下、少女は言いました。
   『ケンタウルスいりませんかー?!
    あ、ケンタウルスいりませんかー!』」

高岡「いらねえって!買ってどうすんの?!」

国立「それはお前…一緒にギリシャ神話ごっことかして…」

高岡「何その遊び?!3日くらいで飽きる気がするわ…」

国立「しかし、人々は年の瀬の慌ただしさから、
   少女には目もくれずに通り過ぎていくばかりでした…」

高岡「ケンタウルス引き連れてるのに?!」

国立「寒空の下、少女はかすれる声を振り絞り、
   ケンタウルスを売っていました…。
   少女の後ろには、売れ残ったケンタウルスが50人…」

高岡「多いな!その状況で通り過ぎる町の人どうなんだ?!」

国立「少女の後ろに横に10人ずつ、5列に渡って並んでいました」

高岡「圧巻だよ!なんかその並びだと少女が強そうに見えるわ…」

国立「少女は、寒さでかじかみ、震えていました…」

高岡「50人に囲まれたらちょっとあったかそうに見えるけどな…」

国立「ケンタウルス達も『寒い』『将来が見えない』
   『椅子とか出されてもどう座ったらええねん』などと
   口々に不満を漏らしていました」

高岡「最後の関係ないだろ!確かにどう座るのか疑問だけど!」

国立「寒さやケンタウルスが売れないこと、
   更にはこっちの気も知らずにグチグチ文句を言うサマを見て
   過剰なストレスが溜まった少女は、
   ケンタウルスのケツを思いっきりシバきあげました」

高岡「蹴りたい気持ちはわかるけどそれダメだろ!」

国立「うっかり後に回ってしまった少女は
   後ろ足で蹴り飛ばされてしまいました」

高岡「下半身馬だからね!
   馬の後ろに立ったら本能的にそうなるわ!」

国立「するとどうでしょう!
   ケンタウルスに蹴り飛ばされるたびに、
   暖かいストーブや七面鳥などのごちそう、
   飾られたクリスマスツリー、小学校の時の思い出など、
   幻影が一つ一つと現れ」

高岡「それもう末期だよ!死ぬ寸前だよ!走馬灯だよそれ!」

国立「地面に叩きつけられると同時に幻影は消えました。
   同時に目の前が真っ暗になりました」

高岡「死ぬね。間違いなく死ぬね」

国立「その時一筋の流れ星が流れ、
   少女は可愛がってくれた祖母が
   『流れ星は誰かの命が消えようとしている象徴なのだ』
   と言った事を思いだした」

高岡「あー、なんかそういうエピソードあったなあ…」

国立「すると、次のケンタウルスに蹴り飛ばされた時、
   ミノタウルスの幻影が現れました」

高岡「何でだよ!あのケンタウルスの逆版みたいなやつ!
   何でこのタイミングで出てきたんだよ!」

国立「だってケンタウルス出したらミノタウルスも出さないと…
   今日襲い掛かられる夢見そうじゃん…同じ一門だろ?」

高岡「タウルス一門とかねえよ!何その派閥!
   流れ的にはここおばあちゃんが現れなきゃダメだろ!」

国立「あ、じゃあ祖母タウルスの幻影が現れました」

高岡「適当なこと言うなよ!何でタウルスつけたんだよ!
   何だその祖母タウルスって」

国立「顔がババアで、体が人間」

高岡「じゃあそれただのババアだよ!
   ババアは人間じゃないみたいな言い方すんなよ!」

国立「地面に叩きつけられると祖母タウルスの幻影が
   消えてしまうことを恐れた少女は、
   何とか空中にとどまることに成功しました」

高岡「どういう原理なの?!何その状態!」

国立「あー、やっぱ無理があるよね…物理学的に」

高岡「ケンタウルス売りって最初の設定の時点で
   常軌を逸しているけどな」

国立「あ、じゃあさ、
   地面に叩きつけられると祖母タウルスの幻影が
   消えてしまうことを恐れた少女は、
   ケンタウルス達を挑発することで
   蹴られ続け、空中に留まる事に成功しました」

高岡「どうしてそこまでするの?!
   祖母タウルスとの間に
   そうまでして繋ぎ止めたい何があるんだよ!」

国立「新しい年の朝、町の人々が見つけたのは、
   ケンタウルスの燃えカスを抱えて幸せそうに微笑む、
   牛の顔をした化け物でした」

高岡「カオス!ミノタウルスなっちゃった!何で微笑んでるの?!
   何でケンタウルスが燃えカスになってるの?!
   何この状態!?夜の間に何があったんだよ!」

国立「そこはアレだよ…ケンタウルスが…燃えタウルス…な?」

高岡「…いやもう意味わかんねえよ!な?じゃねえんだよ!
   お前もう完全にタウルスって言いたいだけだよな?!」

国立「Fin…」

高岡「終わらせられるか!何があってこうなったんだよ!」

国立「まあ…憑依したんだろうな。祖母タウルス」

高岡「それさっきのただのババアだろ?!
   ババア憑依したらババアになるだろ!
   ミノタウルスになった意味が知りたいんだよ!」

国立「やっぱ出しておかないと
   タウルス一門がうるさい気がして…」

高岡「だからねえんだってその派閥!
   随分と恐れてるようだけどよ!」

国立「ケンタウルス売りって時点でやっぱ話に無理があったよな…
   じゃあ次はケンタウルス頭巾ちゃんってのがあるんだけど…」

高岡「いい加減にしろ」

国立「ありがとうございました」


X子:ありがとうございました。これまた客席が湧きましたね。

Y美:では、今回MM−1に初めて携わります豆師匠さん、いかがでしたでしょうか?


・なんか素直に笑っちゃいましたね。深みとかは一切ないネタだとは思うんですけど。
 ケンタウルスってフレーズがまずツボでしたし、そっから「ミノタウルス」「祖母タウルス」っていう展開も好きでした。
 設定は単純なのに、ここまで飛躍したネタにできるなんて羨ましいです。あともう一ボケ、強烈なのがあったら満点つけたと思います。


X子:おお、これはかなりの高得点が期待できそうですね。

Y美:同じく初のMM−1決勝審査員、さかも党さんはいかがでしょうか。


・ケンタウロスを売られた時点で面白い匂いをプンプン感じました。序盤から中盤は大好物です。
 後半に若干、失速を感じました。


X子:なるほど、確かに序盤からすごいインパクトでしたからね。

Y美:では、再び先風さん、どうでしたか?

 
・2009年のM-1で笑い飯が鳥人のネタをやった時の驚愕さを感じました。
 余計な状況説明を一切省いて、必要なボケを真っ向から提出する力強さを感じます。
 本設定がわかりやすかっただけに、「その状況が生じている違和感」を
 説明なしで伝えることに成功しているんでしょう。
 そして必要な説明を展開した後に、「それのどこがおかしいのか」を
 ツッコミが上手く補足してますよね。たとえばケンタウルスが10人ずつ
 5列に並んでる状態を「少女が強そうに見える」っていうのは
 その補足をしたときに改めて状況の違和感を完成させるわけです。
 この「1テンポ遅れてやってくる完成」っていうのは、現実漫才で
 効果的に「間」を作り上げてる作品と相似するのではないでしょうか。
 唯一ひっかかったのは、元ネタが「マッチ売りの少女」という設定で
 売るものがケンタウルスっていう差し替えだけやってるならば、
 「少女がストレスで馬の後ろに回って蹴る」という
 本筋のイメージに存在しないことをやってしまわないほうがよかったのかな、と
 思います。その直後でちゃんと「馬の後ろに回ると本能的に蹴られる」という
 補足説明があるのですから、そこでそんなに無理して
 「蹴られることへの正当性」を主張する必要はなかったのではないでしょうか。

 ただ、本大会で多分、これが一番笑った作品になると思います。
 早くも。


X子:これまた絶賛コメントが出ましたね。
   ゼリビンさん、優勝も見えてきたのではないでしょうか?

Y美:しかし、あとの4人の審査員のコメントを聞いていないのが今回の決勝の難しいところ。
   そこは最後までわかりません。

X子:さて、続いてはこのコンビです!


前回、初出場で注目を集めるも準決勝止まり。
今度こそ、との強い想いで決勝に勝ち上がってきた!
エントリーNo.026
有機丸アポロ
108の煩悩な感情
遠山:どうも、有機丸アポロです。

出雲:こんにちは、俺が有機丸アポロの狼に育てられてない方の出雲でーす。

遠山:遠山も違いまーす。俺にそんなワイルドな秘話は無いよ。

出雲:まぁそれよりさ、お前に聞いてほしいことがあるからさ、夜通し聞いて?

遠山:そんなに長話なの?俺もあんまり暇じゃないからさ、出来るだけはしょって?

出雲:あぁ、あのな。除夜の鐘ってあるじゃん。
   あ、俺がよく行ってるメイドカフェじゃない方だよ?

遠山:うん、そっち知ったこっちゃねえよ。斬新なネーミングだなおい。

出雲:看板娘の珍念たんが大人気のメイドカフェ『除夜の鐘』の方じゃないよ?

遠山:もはやちょっとオープンな寺じゃねえかそんなもん。
   除夜の鐘ってあれだろ、大晦日に鐘を108つ鳴らして、人の心にある108の煩悩を払う、ってやつだろ?

出雲:そう、それ聞いて思ったんだけどさ、108つも煩悩なんてホントにあるの?

遠山:うーん……そう言われれば知らないけど、経典とかにちゃんと内訳は書かれてんじゃねぇの?

出雲:いや、でもそんなに煩悩なんて思いつかないじゃん。
   例えば急に「煩悩言って!」とか言われてもとっさには「ニラ泥棒!」くらいしか出てこないじゃん。

遠山:そんなことはないよ!ニラ泥棒はそんな煩悩の代表格みたいな存在じゃないよ!

出雲:だから俺、その108つの煩悩の内訳を考えてみたから聞いて?
   頼むよ、聞いてくれたら俺のおっぱい見せてあげるから。

遠山:なんの意欲も刺激されねえよ!!わかったよ、108つも考えたなら言えばいいだろ。

出雲:よし、まずはニラ泥棒!絶対ニラ泥棒!煩悩のトップバッターはもちろんニラ泥棒!

遠山:だからなんでそんなにニラ泥棒を推すの!?その煩悩めったに現れないよ!?

出雲:あと、ネギ泥棒、カブ泥棒、キュウリ泥棒、コマツナ泥棒、インゲンマメ泥棒、カボ……。

遠山:いやいやいやいやいやいや!ちょっと待てやお前!!え、何やってんの!?

出雲:なんだよ、何故よりによって今止める!
   「カボ」で止めたから、みんなカボス泥棒かカボチャ泥棒かわかんないだろうが!

遠山:どっちにでもいいしどうでもいいんだよ!
   お前、野菜泥棒でどんだけ数稼ぐつもりだ!そんなに人の心に野菜盗みたい気持ち満ちてねぇよ!

出雲:えー、この野菜泥棒系列で100くらいまでいくつもりだったんだけど……。

遠山:そんなもん煩悩の内訳じゃなくてただの野菜泥棒一覧表じゃねぇか!!
   違うよ、煩悩ってのはな、強欲とか怠惰とか、もっと漠然としてんだよ。

出雲:ああ、畑の面積を無理矢理広げようとするとか、収穫期に怠けて収穫しないとかだな。

遠山:野菜から離れやがれ!そうだ、前にどっかで聞いたことあるんだけど、『三毒』っていうものがあって、
   必要以上に求める『貪欲』、
   暗い気持ちを表す『愚痴』、
   ワガママを意味する『瞋恚』の3つから煩悩は派生するらしいぞ。

出雲:なるほど、つまりその1つにつき36の煩悩を考えれば、108つ完成するわけだな。

遠山:まぁ、そういうことになるかな。

出雲:とりあえず『貪欲』の36個は野菜泥棒で満たしていいよね?

遠山:いいわけねえだろ!仏教の1要素が野菜泥棒で侵食されちゃったじゃねえか!

出雲:お前、半分以上泣く泣く削った俺の身にもなれよ!!
   俺が、どんな気持ちでっ、トウモロコシとかトウガンとかを省いたと、どんな気持ちでっ………!!

遠山:何に熱くなってんの!?気持ちが毛ほども理解できない!

出雲:切り捨てられた野菜の嘆きがお前には聞こえないのか!!
   「僕を盗んで、私を盗んで」と呼んでいる野菜の断末魔が聞こえないのか!!

遠山:野菜は盗まれること望んじゃいねえだろうがよ!!

出雲:常にニタニタしてるモロヘイヤの
   「ふひひ、アチキを盗んでおくれやす、おくれやすー」という叫びが聞こえないのか!!

遠山:キャラ強いなモロヘイヤ!もうわかった、野菜泥棒36個は入れてもいいから。

出雲:ああ、それじゃ次は暗い気持ちの『愚痴』だな。
   ……まず野菜泥棒を半分以上削ったことによる暗い気持ちが1つ。

遠山:今のお前の気持ちじゃねぇか!大昔に定められた煩悩にそんな瞬間的な感情入るか!

出雲:いや、きっと大昔に煩悩定める時も今みたいなやりとりあったよ。

遠山:あってたまるか!そんなデジャヴ絶対ねえよ!

出雲:わからんぞ、当時の偉い坊さんが「野菜泥棒関係で108埋めよう」って言ったら、
   当時のお前的な奴が「ふひひ、ちょっと待っておくれやす、多すぎでやんす、おくれやすー」。

遠山:モロヘイヤじゃねぇか!当時の俺的な奴、モロヘイヤじゃねぇか!
   いいから野菜泥棒以外の煩悩を並べていくぞ。まずは『愚痴』だ。

出雲:へーい……えーと……あー………ダメだ、野菜泥棒以外の煩悩が何一つ浮かばない!

遠山:どんな脳してんだお前!?何かしらあるだろ、人の心にある煩悩!

出雲:ダメだぁ、せいぜいスルメを濡らすことしか思い浮かばない!

遠山:具体的すぎるし地味!もっと漠然でいいんだよ、好きな人と別れて暗い気持ち、とか。

出雲:あぁ、なるほどな。
   じゃあ先輩と別れて暗い気持ち、好きな漫画が打ち切られて暗い気持ち、いい感じの形の石を無くして暗い気持ち……。

遠山:かと言って別れる感じのシリーズで数を稼ぐな!バカの一つ覚えかお前!

出雲:お菓子をとられて暗い気持ち、オクラを盗られて暗い気持ち、ニラを盗られて暗い気持ち……。

遠山:野菜泥棒がにじみ出てる!抑えて、欲望を抑えて!

出雲:おっと、野菜泥棒は封印、封印……。
   えーと、ニラが良い値で売れなくて暗い気持ち、ニラで殴られて暗い気持ち……。

遠山:ニラルートに脱線しやがった!!凄い執着心だ!

出雲:ニラ臭いと言われて暗い気持ち、食べた時の食感が気持ち悪いと言われて暗い気持ち、
   収穫がめんどくさいと言われて暗い気持ち……。

遠山:もはやニラ目線じゃねぇか!!人の心の煩悩という前提は守れよ!

出雲:クソ……人間共め、勝手な都合で我々ニラを虐げおって、許さん、許さんぞぉぉぉっ!!

遠山:え、何これ!?何かにとり憑かれたのこれ!?ニラに乗っ取られたのこれ!?

出雲:(キリッとした顔で)「人間共め、我々をナメたことを後悔させてやる、まずは口臭を全体的に……!!」
   (ニタニタしながら)「待っておくれやすニラ、人間と争ってはいけないでやんす!!」
   (キリッとした顔で)「ええい、止めてくれるなモロヘイヤ!」

遠山:なんだこの小芝居は!今世紀始まって以来の時間の無駄だよ!!

出雲:(キリッとした顔で)「煩悩にまみれた人間がいる限り、我々に天下は来ない!」
   (ニタニタしながら)「天下なぞいらないでやんす!我々野菜は、人がいなければ成長できないでやんすよ!?」
   (可愛らしい声質で)「モロヘイヤ君の言う通りよ!!」

遠山:ヒロインみたいなの出て来た!このクソみたいな茶番劇でどんだけ時間食うの!?

出雲:(キリッとした顔で)「な、なんでお前がここにいるんだ、珍念!!」

遠山:メイドカフェ『除夜の鐘』のメイドじゃねえか!野菜じゃねえじゃねえか!!

出雲:(可愛らしい声質で)「人間は必要よ!人間がいるから、街は発展し、私のお店にお金を使ってくれる人が増え、
   私はいい感じのデザイナーズマンションに移りすんで、ホストはべらしてウハウハのムハムハに……。」

遠山:珍念すげぇワガママじゃねえか!こいつが一番煩悩まみれじゃねえか!

出雲:そうです、珍念はすげぇワガママなので、珍念が持つ36の煩悩で『瞋恚』は満たします。

遠山:すげぇとこから煩悩に話戻したな!?え、そんなやり方でいいの!?

出雲:いいんだよ、珍念はゆくゆくは不老不死を手に入れようとしてるくらいワガママなんだから。

遠山:何そのマンガみたいな欲望!?ワガママってか野望じゃん!!

出雲:きっと煩悩定める時に当時の珍念的なやつが、
   (可愛らしい声質で)「不老不死になって、色んな商売で成功して、
   そんでデザイナーズマンションに移りすんで、ホストはべらしてウハウハのムハムハに……。」って。

遠山:なんだその破綻まみれの考え方!当時にデザイナーズマンションとか無いだろ!!

出雲:(ニタニタしながら)「なんでやんすかその破綻まみれの考え方!おくれやすー!」

遠山:当時の俺的な奴はまるっきり関係ねえだろうが!!

出雲:あ、そうだ。はい。(ぺろん)

遠山:え、なんでこのタイミングでおっぱい見せたの!?誰も望んでないサービスショットやめろや!!

出雲:あっ、お前、その俺のおっぱい見てニタニタする気持ちも煩悩だぞぉーっ?

遠山:そんなキショい煩悩持ってねえよ!!男の乳首見てニヤニヤする嗜好はねえよ!

出雲:あ、そうやって大声で罵倒するのも煩悩。すぐ人の考え方否定するのも煩悩。

遠山:コイツ俺まわりで残りの煩悩埋めようとしてやがる!考え方が狡い!

出雲:やたらツッコミがキツい煩悩、服のセンスが微妙な煩悩、俺のプリンを勝手に食べた煩悩。

遠山:もはやただの俺に関する悪口じゃねえか!

出雲:スベるとと首を絞める煩悩、ノリツッコミで氷の息を吐く煩悩、オチの直前で殖える煩悩。

遠山:遂に無から生み出しやがった!!ただの嘘つきだこいつ!

出雲:あとー……ちょっと俺を理不尽にぶん殴って。それを煩悩に加算するから。

遠山:そんな申し出誰が受理するんだよ!ちょっと、俺から離れろよ!

出雲:わかった、えーと、メイドカフェなのに入った途端「いらっしゃいませ」って言った煩悩。

遠山:矛先を珍念に向けやがった!

出雲:萌え萌えジャンケンをノーモーションでやった煩悩。
   オムライスにケチャップで『一万円くれないんだったら二度と店にくるな』と書いた煩悩。

遠山:接客態度最悪じゃねえかよ!!よく店として成り立ってるな『除夜の鐘』!

出雲:そんな店でストレスが溜まる俺の煩悩。ストレスのあまり野菜泥棒を行う俺の煩悩。
   そんな俺を優しく迎えてくれた野菜泥棒団の6人。

遠山:なんだそいつら!?

出雲:1から俺に野菜泥棒としてのノウハウを教えてくれた6人。
   俺に野菜泥棒の素晴らしさを説いてくれた6人。

遠山:お前の野菜泥棒へのこだわりはそいつら譲りか!!変な奴らに影響されんな!

出雲:そんな6人のそれぞれの野菜泥棒をするという薄汚れた煩悩。

遠山:そこドライだな!?結構酷いこと言って煩悩に加算したな!

出雲:よし、あと煩悩1つで完成だ!さぁ、殴れ!!

遠山:だからヤだよ!大トリに暴力ってどんなフィニッシュだよ!!

出雲:素手で殴りたくないならニラで殴れ!近くにニラ畑があったから盗んでこい!!

遠山:俺まで野菜泥棒の世界に引きずり込もうとしてんじゃねえよ!
   大体あと1つで完成とか言ってるけどな、ほとんどひとまとめだし、メチャクチャなんだよ!

出雲:あ、じゃあそんなメチャクチャな煩悩を作ろうとすることが108個目の煩悩だな。

遠山:いいかげんにしろ!!

2人:どうもありがとうございました。


X子:ありがとうございました。なかなか凝ったネタが見られましたね。

Y美:ではまず、前回MM−1の覇者スリーオールさんにご意見を伺いましょう。

 
・設定もなかなか考えつかないものでしたし、ボケのかぶせ方、やりとりも問題なくかなり巧かったのですが、
 もう一押しあれば・・・と思ったりもしました。
 これだけ完成度の高い漫才だからこその贅沢、みたいな感じですが・・・。


X子:なるほど。基本的にレベルの高さは伺えますね。

Y美:では、さかも党さん、どうでしょうか?


・ボケパターンの数を考えると煩悩の108を題材にしたのが厳しかったと思います。
 野菜泥棒系煩悩の後に野菜泥棒を凌駕する煩悩があれば良かったのかも。


X子:ふむふむ、ボケ数が多くなってくると難しくなってくるところよね。

Y美:おっと、ここで予選のみの審査員だった夏草さんからコメントがあるようです。
   いったい何でしょうか?

 
・んーっとね、面白いです。
 基本言うことないです。
 他の審査員の方が言ってくれると思うし、
 言わなきゃそれはそれで問題だと思うんですけど、
 おっぱいの下り絶対要らないです。


X子:あー、確かに誰もそこにツッコもうとする素振りを見せて無かったわね!

Y美:いやいやいや!まぁさらに何て言ったら良いかもよく分からないですけども!

X子:まぁ、気を取り直してまいりましょう。

Y美:…はい。4組目はこちらのコンビです!


第5回MM−1では初出場で決勝進出するも7位タイに終わった。
連続で決勝進出となる今回、リベンジを果たすことができるか!?
エントリーNo.064
モンブランジャム
冬の陣
城島:どうもよろしくお願いします。
   いやぁ、それにしても季節はすっかり初夏でね。

善田:だよねぇ。たまに暑い日が来るもんだから、そん時は自宅でゲームばっかやってるよ。

城島:まぁその気持ちも分かるよ。俺も暑いの苦手でさ、だから夏と冬だったら断然冬の方が好きなんだ。

善田:え・・・。お前…それマジで言ってんのか…!?

城島:どうした急に?夏より冬が好き、それだけのことだよ。

善田:いや…冬は恐ろしい魔物が出没する季節だぞ。よくそれで冬の方が良いとか言えるな。

城島:また訳の分からんこと言ってからに。魔物って何だよ。

善田:その魔物は空気の乾燥した季節、例えばドアのノブに巣くい、触れた者に電撃を喰らわす…

城島:静電気じゃねぇか!ちょっとビリッとくるだけだろあんなの。

善田:セ…セイデンキ……?

城島:え?静電気知らないの?ほら、電気の一種だよ。

善田:あぁ電気なのね。……じゃあ、“セイ”は聖徳太子の“聖”か?

城島:違う違う。なんだ聖電気て。

善田:聖なる力によって発生した、悪を浄化するイナズマ。
   必殺、セイントエレキテル!!

城島:妄想すな!そもそも字が違うし。正しくは“静”、静かの音読みだよ。

善田:静……動と対をなす静…。言うなれば剛ではなく柔の使い手…。……こいつぁ厄介だ。

城島:何の話だ!変な方向に考え過ぎだって!

善田:とにかくだ、俺は前の冬にセイデンキとやらと死闘を繰り広げたんだ。その時の話…聞いてくれよ。

城島:まぁ聞く分には構わないけどさぁ。

善田:…あれは吐息が白くなるほど寒かった日。
   俺は外出してたんだけど、家を出る前にうっかりヒーターを付けっ放しにしてたんだよ。

城島:冷えて乾燥した空気と暖房器具。静電気が発生しやすい条件下ってわけか。

善田:そして帰宅した俺が部屋のドアノブに右手を伸ばしたその時、「ビリビリビリ!!」……魔物と対峙した瞬間だった……!

城島:単に静電気にビックリしたってだけでしょ。

善田:「な…何なんだこいつは…!?」
   突然の出来事に錯乱し、ノブと右手とを交互に見るしか出来なかった俺。
    
城島:ビビり過ぎだよ。さっさと開けて入ろうぜ。

善田:「こうなったら強行突破だ!」意を決しドアに体当たり。

城島:んな無茶な!たかが静電気でなんでそこまで出来るんだよ!

善田:しょせんボロアパートよ。突撃し、ドアを見事ぶち破った。いかり肩を生かしてな。

城島:知るか!肩より大家さんが怒ってるわ!

善田:何とか部屋に入れた俺。部屋に入って一番にすることは何か。そう、ゲームだ。

城島:いやまずドアを直せ。

善田:早速始めようとテレビ画面に触れた瞬間「バチバチバチ!!」

城島:またぁ!?確かにテレビ画面にもよく発生するけど!

善田:ヤツの魔の手はここにまで…。じゃあテレビがダメならパソコンだ…と思いきやパソコンの画面からも「バリバリバリ!!」

城島:しつこいわ!あとさっきから静電気の描写がオーバー過ぎるんだよ!

善田:一体何なんだこいつは!?家具に憑依する悪霊か!?

城島:そんなんじゃねぇ!なんだったらお前の方がよっぽど取り憑かれてるみたいだよ!

善田:向こうがその気ならやってやるよ。俺は魔物と戦うべく、作戦を練った。

城島:…だからゲームのやり過ぎだってば。まず魔物っていう前提から違うのに。

善田:「ヤツの弱点はなんだ……。……そうだ!雷属性は、土だとか地面だとかの属性に弱い……」違うか?

城島:違うよ!んな相性関係、現実世界では通用しねぇよ!

善田:俺は一旦家の外に出て、外から持って来た砂をパソコンにかけまくった!

城島:意味分かんねぇよ!土属性だから、静電気に勝てるとでも思ったのか!?

善田:「おりゃー!バササーッ!喰らえ必殺、ジャスティスサンドー!!」

城島:だから必殺技チックに言ってんじゃねぇ!てかジャスティスて、お前は正義のつもりなのか。

善田:しかしなにもおこらなかった…。
   「ダメだ…効かない…。俺には正義の心が足りないのか…?」

城島:それ以前に人として色々なものが欠けてると思う。

善田:「…はっ!…まさか…悪いのは俺の方なのか…!?悪だと思ってた魔物が実は正義で……浄化されてしまうのは俺の方なのか!?」

城島:もういっそのことお前の頭ん中を浄化してもらえよ。

善田:「うわー、分からねえぇぇ!!誰かー、教えてくれー!!」頭を抱え叫ぶ俺…。

城島:絶対関わりたくねぇな…。

善田:そんな時、「どうしたんですか?」と声が。

城島:あれ、誰か来てくれたんだ。

善田:「じ、実は俺の部屋に魔物が……え、ドアですか!?……すいません、弁償します…」

城島:大家さん来ちゃったよ!そりゃドア壊されたんだから怒るわな!

善田:「滞納してる電気代もちゃんと払って下さいね」と追い討ちをかけ去って行く大家さん。窮地に立たされる俺。

城島:お前どんだけタチの悪い住人なんだ!完全に自業自得じゃん。

善田:でもな、こういう逆境の時ほど名案てのは浮かびやすいもの。
   『敵を知れば百戦危うからず』…そんな言葉が脳裏をよぎる。

城島:また大層なの出てきたな!ここにきて中国の兵法て。

善田:俺は敵を知るため、パソコンで調べることにした。……が、こんな時に限ってパソコンがうまく動かない!

城島:さっき砂をかけたからだよ!

善田:うまく動かないパソコンに苦労しながらも俺は必死に情報を求めた。『魔物・電撃』で検索してな。

城島:それで望みの情報に辿り着けるか!条件がファンタジック過ぎるよ!

善田:「違う…今はギガデインとかジゴスパークとか、どうでもいいんだ…」

城島:それドラクエに出てくる電撃の呪文と特技じゃん!案の定それ関連のページに行ってる!

善田:それでもめげずに調べ続けたよ。
   そして…『ゴム』なら電撃を無効化してくれるということを知った。

城島:よく見つけられたな!…てか、確かにゴムは絶縁体だけど無効化は言い過ぎだろ。

善田:ようやく希望が見えた気がした。魔物に打ち勝つにはゴムの装備を身につければいいんだ、ってな。

城島:ゴムの装備?何それ。

善田:右手「ついに決着の時が来たな」
   左手「あぁ。さて…どっちがゴムを身にまとうかだが」
   右手「ここは俺にやらせてくれ」

城島:待て待て待て!!一人でいきなり何始めとんじゃ!

善田:止めんなよ今いいところなのに!俺の両手が誓いを立てる、感動のシーンなのに!!

城島:怒鳴る意味が分かんねぇよ…。完全にお前の自作自演じゃん…。

善田:左手「俺にやらせろって右手……相手は魔物だぞ、大丈夫なのか?」
   右手「ヤツにはさっき、ドアノブで電撃をお見舞いされた借りがある。それを返さないと気が済まねぇんだ」
   左手「そうか…だったらもう止めはしない。その代わり、絶対生きて帰ってこいよ」
   右手「もちろんだ。…お前が左手で良かったよ…」
   
   両手が互いに熱い抱擁を交わす。

城島:ただの一人握手だろうが!

善田:こうしてリベンジするべく、右手にゴムを装備することにした。
   そう、右手にありったけの輪ゴムをグルグル巻いたのさ!

城島:なんでだよ!せめてゴム手袋をはめるくらいのことはしろや!

善田:未知のパワーが宿ったのか、神秘的な青色に染まっていく俺の右手。

城島:…それは輪ゴムで血が通わなくなってるだけ!神秘もへったくれもねぇよ!

善田:その手でパソコンやテレビの画面に触れてみると……ヤツの攻撃が効かねぇ!ビリッと来ねぇ!

城島:良いのか!?静電気の対策法としてこれは良いのか!?

善田:「どうした魔物さんよぉ!それで終わりかってんだ!ヘッヘーイ!」

城島:何かセリフが小悪党くせぇよ!やっぱお前正義の器じゃねぇわ。

善田:そしていつの間にか電気は消え、素手で触っても痺れなくなった…。
   勝った……俺は冬の魔物に勝ったんだよ!

城島:要するに全部放電されたってだけだろ!歓喜しすぎだよ!

善田:この戦いで得たもの…それは自信と勇気、他にももっと多くのものを…
   
城島:辺り見渡してみろ!壊れたドアに砂まみれのパソコン…損害しか生まれてねぇ事に気づくから!

善田:確かに多少の痛手は残ったけど、それでもお釣りが来るほどだ。

城島:来るか!お前の為替相場どうなってんだよ!

善田:右手「勇者善田バンザーイ!!」
   左手「いやいや、お前もその片腕として十分活躍したよ。右手バンザ

城島:それもやめろ!!右手だけに勇者の片腕ってか、やかましいわ!

善田:とまぁ、こんなところかな。俺は冬の魔物をやっつけた勇者なんだいっ!

城島:何が勇者だ!凄い無駄話に付き合わせやがって!

善田:…でも、これですべてが終わったわけじゃない…。

城島:え!?まだ続きあんの?

善田:この戦いで自信と勇気を得た俺は、今まで戦いを避けていた相手にも挑もうと決めたんだ。

城島:新たなる敵!?何なんだよ一体。

善田:「かかって来いや金の亡者め!電気代は渡さねぇぜ!!」

城島:大家さんじゃねぇか!!もういい加減にしろ!

二人:ありがとうございました。


X子:はい、ありがとうございました。

Y美:前回同様、なかなかうまい漫才だったのではないでしょうか。
   ではまず、利根川さんいかがでしょう?


・『静……動と対をなす静…。言うなれば剛ではなく柔の使い手…。……こいつぁ厄介だ。』
 ↑めっちゃ笑いました。発想がいいですね。
 言い回しが上手いですね。しょうもない状況なのにリアルに緊迫感を持ってる善田におかしみを感じました。
 ただ後半、ちょっとトーンダウンしちゃったかなぁ。前半のインパクトが強い分、慣れが出てきた後半にもうひと山ほしかったですね。
 でも面白かったです!ここまでで一番面白かったです!うお!★★点!


X子:おぉ、利根川さんからはかなり高い評価が付いたみたいですよ。

Y美:では、先風さん、いかがでしょう?

 
・些細な物事を大げさにとらえて展開するっていう手法は多分、
 基本中の基本なんです。で、それをいかに活用できるかが作者さんの
 手腕なわけですけど、凄いですね、この作品。
 途中からそれが大げさだったのかどうなのかもわからなくなるくらい
 作戦の練り方が大人気ないというかw
 戦い終わった直後の描写を読み手の想像下に委ねてしまったり
 次の展開を無理なく進めて落としたり、とにかく技量が半端ないです。
 面白かったです。はい。


X子:これまた絶賛のコメントが来ましたね。

Y美:さすが決勝だけあって、各審査員から高い評価をもらったコンビが多く集まっているんでしょうね。
   では、QianTianさん、いかがでしょう?

 
・入り方が上手いですね。
 ボケのキャラがたっています。
 ちょっと三点リーダーを使いすぎかと思いましたが・・・
 多少強引な気もしますが、全体的に良い具合にまとまっていると思います。


X子:なるほど、ありがとうございました。

Y美:ここまで4組ともかなり評価が高そうな雰囲気ですね。結果が全く読めません。

X子:次が真ん中、5組目はこのコンビです。


青沢オンエアバトル第7期チャンピオン。
そんな彼らが、優勝ネタを引っ提げてMM−1に初参戦だ!
エントリーNo.021
灯風
君叶い給え 〜Live at 0503〜
ナオ:灯風ですー!よろしくお願いしますねー!
   初めてのMM−1ということでね、がんばっていきたいなーと思ってるんですけどね……

ゴウ:……俺、ビオレママになりたいんだけど、どうすればいいだろう。

ナオ:うん、とりあえず脈絡つけて!…なに、ビオレママってどういうことよ!?

ゴウ:確かにね。一気にビオレママになるのは難しいと思う。

ナオ:人の話聞いてよ!今はキミの言動を理解する方が、僕には難しいんだよ!

ゴウ:だから、まずはビオレになろうと思うんだ。

ナオ:もう置いてけぼりですけどね、なればいいじゃない!ならなればいいじゃない!

ゴウ:それで毎日努力してるんだけど………どう、ビオレになってる?

ナオ:うーん、おそらくだけど、確実になってないね!なってたらキミを使ってシャンプーしてあげるよ!

ゴウ:なってないか………毎日、「ビオレ、ビオレ…」とつぶやくようにしてるんだけどな………

ナオ:いや、方法が方法だよ!なに、それでビオレになるの!?僕わからないなー!

ゴウ:風呂の時とか特に……な。

ナオ:なんというか、キミのビオレ観がおかしいと思うよ!まあビオレ観という言葉を使うことなんてこれから先ないだろうね!

ゴウ:ここまでしてるんだから、鼻水ぐらいはビオレになっているはずだ。

ナオ:たらーんと垂れてくる鼻水で髪洗えってか!新しいよ、新しいけど僕なら嫌悪感が勝るよ!

ゴウ:しかし、何かが足りないようなんだ…………そう、俺の「ビオレ」には、響くものがない……。

ナオ:いや、あってどうなるんだよ!まず、響くものって何なの!?僕わからないなー!

ゴウ:もっとこう、脳髄まで響き渡るような……そうだ、ビブラートがないと。

ナオ:あっても根本的に無理だよ!心にグッときてもどうしようもないよ!

ゴウ:というわけで、いくぞ………ビオレェェェェエエーーーーー♪

ナオ:うっ、美しいビブラート!でも、いきなりすぎてどう反応すればいいかわかんないよ!

ゴウ:ビオレママァァァになろぉぉぉぉぉぉーーーーー♪

ナオ:CMの歌になってる!そんなオペラアレンジいらないよ!親しみが湧かないよ!

ゴウ:弱酸性ビィィィィーーーーオォォォォーーーーレェェェェェェェェエエーーーーー♪

ナオ:ミュージカルの締めみたいになってる!すっごい!すっごいクるけど、どうすればいいんだ!

ゴウ:………あっ、ビオレって弱酸性だ。

ナオ:おおう今ので気付いたんだ!いきなり歌いだして、その上で今気付いたんだ!気付いたところでどうかは知らないけど!

ゴウ:そうだ、ビオレになるためには弱酸性になればいいわけだ。

ナオ:……そういう発想で来たかー!嫌いじゃない、嫌いじゃないよその発想!でもなんかね!なんかズレてるんだよ!

ゴウ:弱酸性になるためには………ビオレの中に浸っておけばいいな。

ナオ:それはどうなの、どうなのよ!まあいい香りにはなるかもしれない!いい香りん子さんかもしれないけどさ!

ゴウ:でもそんな大量のビオレを買うのは厳しいわけだ。

ナオ:……いや、そこケチるんだ!ビオレビオレ言ってるんだから、花王にお金を落としてあげてもいいと思うんだけどな!

ゴウ:だから、気付いた。まずは自分がビオレになれば買わなくて済む。

ナオ:……本末転倒だー!回っちゃうよ、論理がグルグル回っちゃうよ!どこか断ち切って!

ゴウ:そこでビオレになるために……ビオレになる………そもそも、ビオレってなんだ?

ナオ:根本的な問題!うーん、シャンプーの一種だよという説明で納得してくれるとうれしいなうん!

ゴウ:ビオレビオレ…ビオレ………美俺…?

ナオ:なんか変換しちゃった!美しい俺って!?ナルシストにでもなっちゃうのかな!

ゴウ:なるほど、俺が美しくなればいいのか!そのためには……とりあえず、お風呂に入ろう。

ナオ:おっ、なんだかビオレが出てきそうだぞ!

ゴウ:まずは、バブだ!

ナオ:花王の別商品!これでもかというほど花王!宣伝料でももらってんじゃないのー、このこのぉー!

ゴウ:なんだか疲れたから、バブ10個入れる勢いで、疲れを取ろう……

ナオ:って、バブには惜しみなく金使うんだ!そこをビオレに使おうよ!たぶん一発で問題解決するよ!
   そしてバブ10個は入れすぎだよー!シュワシュワなるよ、もうすさまじいくらいにシュワシュワなるよ!

ゴウ:そう、そのシュワシュワ感………「酸性」、という感じだろう……

ナオ:そういうとこも!細かいとこまで努力してる!でも“弱”酸性というよりは、わりと酸性強い気がするよ!

ゴウ:そうして酸性な感じを出して、浴槽から上がったら……次は、体を洗おう。やはり、美俺になるためには、念入りに体を洗わないと……

ナオ:おー、清潔さんだねー!

ゴウ:そこでキュキュットだ!

ナオ:洗剤!またしても花王だけど、洗剤!ものすごく洗剤!!ダメだよ体洗っちゃ!!

ゴウ:1回に1本使う勢いで、キュキュットで体を洗おう。

ナオ:ここでも惜しみなく!もう何が目的なのかわかんなくなってきたよ!そして洗剤で体洗っちゃダメ!!

ゴウ:それはもうご機嫌で、体を洗うわけだ。

ナオ:でもご機嫌なのはいいコト!

ゴウ:♪すすいだ瞬間、キュキュッと…………あれ、毛が……

ナオ:落ちてる!毛が抜け落ちてる!!ほら、洗剤使うから!!リアップでも使わないとダメになっちゃうよ!!

ゴウ:リアップはダメだ………他社だから……

ナオ:そういう拘り!!花王の手先足先か!かゆいところに手が届くってか!なに言ってんだ僕!

ゴウ:仕方ない、ここは次のステップ………なんと、髪を洗う!

ナオ:お、やっとビオレの出番!でも「なんと」って言うほどのことじゃないと思うよ!

ゴウ:ついに……ついにやってきたシャンプーの時!3日に1回、至福の時!

ナオ:いや、もっと洗おうよ!!3日に1回は少ないよー!さっきの清潔さん発言、撤回!撤回だー!

ゴウ:ビオレを使う前に、まずは………お祈りをしないと。

ナオ:お祈りとかあるの!?何の宗教、これ!?信者募集中!?そういうことなの、ねえ!?

ゴウ:そしてつぶやく、「ビオレ、ビオレ……」

ナオ:それお祈りだったんだ!うわあ、なんと安直な祈り!!

ゴウ:つぶやくこと300回。

ナオ:長いっ!!予想を裏切らない長さ!!

ゴウ:そしてついに、ビオレを使うとき……全部プッシュせず、2/3だけ押し込むようにして、ビオレを出す。

ナオ:ケチい!とてつもなくケチい!でも経済的だからみんなは真似しよう!!

ゴウ:そうやってビオレを………あれ、ない!?

ナオ:…なくなったー!!このタイミングでなくなったー!!

ゴウ:どどどこかビオレ!ビオ……そうだ、自分がビオレに……

ナオ:ここで転倒ー!!本末転倒リターンズだよ!!

ゴウ:なっ、どこかはビオレになってるはず!!……そうだ鼻水なら!鼻水……あれ、赤い…

ナオ:鼻血!!鼻血出てる!!はい、ちょうど持っていたティッシュ!

ゴウ:(ふきふき)くそっ、鼻水ならビオレなのに……

ナオ:おそらくだけど、鼻水もビオレにはなってないと思うけどね!

ゴウ:ならビオレになるために、大量のビオレに浸かって………でも大量にビオレ買えない……うわああああ………

ナオ:うわあ、論理の渦にハマってる!
   たぶんアニメなら、黒いぐるぐる渦巻きの中に「あ〜〜れ〜〜」って言って、回転しながら小さくなっていく、そういう演出が為されていると思うよ!!

ゴウ:…………あきらめよう。

ナオ:ついに!…ついにダウンした!よく頑張ったね、頑張った!

ゴウ:ビオレは無理なら…………先にママになろう。

ナオ:あーそっちが残ってたんだ!ママになるの、なっちゃうの!?

ゴウ:とりあえず、性転換するとして……

ナオ:人生が!ビオレのせいで男としての人生が!そういうの捨てちゃいたい人だっけ、ねえ!?

ゴウ:それでママになるためには、子どもを産まないと……

ナオ:ああ、女性としての人生を歩み始めているうう!

ゴウ:そしてママになったら、子どもをめいっぱいかわいがろう。

ナオ:あ、そこは普通にお母さん!母性本能目覚めちゃったのかな!

ゴウ:そうして親子愛を……美しい親子愛を…………そうして俺は、美しくなる。そう、美俺になる……

ナオ:ここで美俺!そうか、そっちまで満たしちゃうか!一石二鳥か!

ゴウ:よし、やった……これで俺もビオレママだ。というわけで、まずは性転換に行ってこよう。

ナオ:あっホントに行っちゃう!それだけは止めないと…!
   ……おい、おい!そこまでの犠牲を払って、ビオレママになる意味はあるの、ねえ!?

ゴウ:あるさ。あるに決まっている。

ナオ:どういうこと!どういうことだよ!

ゴウ:弱酸性だけに、「メリット」はあるさ………

ナオ:おーう最後だけはビオレじゃないんかーいっ!!もう終わろうか!
   どうもありがとうございましたー!


X子:いやぁ、さすが通常企画でチャンピオンというだけあって素晴らしいネタでしたね。

Y美:ですね。ではまず利根川さん、どうでしょうか?


・うおおアホや。ビオレ→美俺とかダジャレなんですけどそっから広げていくっていう貪欲さがいいですね。
 そこで終わるんじゃなくてビオレママだけで何パターンも用意しててそれがそれぞれ笑えるっていうのが素敵。面白かったです!うおお!★★点


X子:なるほど、興奮して最後の「!!」が抜けてますね!

Y美:いや、それ興奮してるんだかしてないんだか分からないから…ってかそんなことはどうでも良くて!
   では、スリーオールさん、いかがでしたか?

 
・設定の奇抜さは◎だと思います。 ボケも設定負けせず色んな角度から切り込んできて面白かったです。
 ただ間違いなく好きなネタではあるんですが、ツッコミのノリが自分には若干合わなかったです。
 かなり個人的な好みですし、すでにこの状態で完成されていると思うので何とも言えないのですが・・・。
 正統派のテンションでツッコむバージョンも見てみたいな、と思いました。


X子:なるほど、確かに特殊なテンションというのが好みを分けた部分はあるかもしれませんね。

Y美:では最後、さかも党さんいかがでしたか?


・ママ側からのアプローチは予測できたのでビオレ側に絞っていって欲しかったです。


X子:おお、ただ1点に注目してコメントをしていただきましたね。

Y美:果たして実際にはどんな点数をつけているのか、楽しみなところでもあります。



X子:さぁ、前半5組のネタ披露が終わりました。

Y美:後半4組のネタに参りましょう!

後半戦に続く