第11回MM−1グランプリ






THE FINAL ROUND!!












X子:それではさっそく1組目の方にネタを披露していただきましょう。

Y美:早い早い早い早い!!!!

   えー、あたしたち決勝戦の司会を務めます「乙女の方程式」です!

X子:トップバッターはこのコンビです、どうぞ!

Y美:なぜ早いいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
   このくだりだけでもせめて落ち着いて!!!

デビューから華々しい戦績を上げてきたエリート集団。その中でも強烈な個性を誇る三人組が再び決勝に殴りこみをかける。
前回王者「有機丸アポロ」の重圧と志半ばで散った同志「PARTY NOISE」の無念を背負い、エリートはさらなる高みへと翔ぶ!
エントリーNo.024 「長文シンドローム」
血華美人は愛の華
恋なんて言わばエゴとエゴのシーソーゲーム
みるく:はいどーもー! キヨミ、みるく、翔太郎! 3人揃って血華美人は愛の華でーす!

キヨミ:よろしくお願いします。3人の力を合わせて頑張ります。

翔太郎:今日は3人ともお地蔵さんをバットでぶっ壊してから来ました。

キヨミ:事実無根です。そんな罰当たりな3人組ではございません。

みるく:えーと、見てもらったらわかる通り、私達は逆いきものがかり状態のトリオなんです!

キヨミ:わかりにくいよ。普通に男1:女2のトリオって言おうよ。

翔太郎:わかりやすく言うと、逆仲間由紀恵withダウンローズ状態のトリオです。

キヨミ:なおのことわかりにくいよ。正規の仲間由紀恵withダウンローズすら久っ々に聞いたよ。

みるく:そんなことよりそんなことより!今日は2人に聞いてほしいことがあるんだっちゃ!

翔太郎:お、なんだ?両親が性転換したか?

キヨミ:どんな話題想定してんの。シュール通り越して摩訶不思議だよ。

みるく:んー、当たらずとも遠からず!あのね、私の理想のデートの話なんだけど!

キヨミ:遠いよ。当たってないし遠すぎるよ、超ノーコンだよ。

みるく:やっぱり女の子ってさ、みんな素敵なデートと数え役満に憧れるじゃん?

キヨミ:前者だけだね。後者に憧れるのは雀荘に通ってる女の子だけだね。

翔太郎:マジで?俺は女子の憧れっつったらゴリラ退治だって聞いたけど。

キヨミ:どこのほら吹きに聞いちゃったのよ。リサーチ対象を誤り倒してるよ。

みるく:私もね、素敵な彼氏と素敵なデートをしてみたいの!
    デートして、プロポーズされて、なんやかんやあって、機械の体を手に入れたいの!

キヨミ:なんやかんやが気になるよ。確実に銀河鉄道に乗り込んじゃってるよ。

みるく:そんな理想のデートプランを考えてきたからさ!聞いてもらってもいい!?
    いいよね!?断られたら東尋坊から身を投げるけどいいよね!?(きらきら)

キヨミ:脅しじゃん。何その瞳輝かせながらの死にます宣言。
    いいよ、そのデートプランとやらを聞かせてよ。翔太郎もいいよね?

翔太郎:いいわけあるか貴様らの一族全員時空の狭間にぶち込んでやろうかこの鼻糞アナコンダ共。

キヨミ:   翔   太   郎   !   !   ?

みるく:ひゃー、断られちゃったかー。しょうがない、東尋坊行ってきまーす。永遠にさよならー。

キヨミ:早まらないで早まらないで!?こんなポップな自殺があるか!!
    どうしたの翔太郎、聞いたことない罵倒のオンパレードだったんだけど!?

翔太郎:デートの話とか聞いてらんねえよ貴様らの友人全員巨大カナブンの餌にしてやろうかこの耳糞ボロネーゼ共が。

キヨミ: ど う し ち ゃ っ た の ! ?
    さっきまで飄々とボケてた翔太郎はどこに行っちゃったの!?

翔太郎:俺はなぁ、つい最近付き合ってた彼女にフられてんだよ!
    「デート中ずっとナイフを舐め回してるのが生理的に受け付けない」って言われてな!

キヨミ:知らないよ!てかどんなクレイジーな状態でデートに望んでんのよ!

翔太郎:ずっとナイフ持ってたらいつゴリラが襲ってきても退治出来るだろ!

キヨミ:女子はゴリラ退治出来る男求めてないんだよ!女子の憧れ学び直してこい!

みるく:まぁでも、ゴリラを倒せない男より倒せる男の方がいいけどね。

キヨミ:みるくは黙ってようか!倒す倒さない以前にゴリラと戦うケースが有り得ないから!

翔太郎:だから俺は他人の理想のデートの話なんか聞きとうないの!
    どうせ聞くなら死んだ後の魂の行方の話とか聞きたいの!

キヨミ:それ寝る前に考えちゃって寝れなくなるやつじゃん!気が滅入るわ!
    どうする?みるく……翔太郎ったらデートの話題を親の仇ばりに恨んでるよ……?

みるく:私は別にいいけど、デートの話出来ないならネタ終わったあとすぐ死ぬよ。

キヨミ:うわーん、コイツら自分本位の権化だよー!舞台上にエゴが渦巻いてるよー!
    どうしてこんなことになっちゃったの、私は桃太郎とかあえてベタな漫才をやることで地肩を見せつけたかったのに……。

翔太郎:よし、じゃあ間をとってこうしよう。

キヨミ:折衷案があるの!?この2つのエゴに中間点があるの!?

翔太郎:みるくは理想のデートの話をすればいい。喉が張り裂けんばかりに話せばいい。
    ただし、俺はあらゆる人脈を駆使してお前のデートを邪魔します。

キヨミ:どういうこと!?よくわかんないよ、わかるのは翔太郎の器の小ささだけだよ!

翔太郎:そしてキヨミは桃太郎の話をすればいい。

キヨミ:しないよ!3人が噛み合ってなさすぎだよ、トリオの利点を生かしてなさすぎだよ!!

みるく:えーと、よくわかんないけど、私は理想のデートの話してもいいのね?死ななくていいのね?

翔太郎:ああ、思う存分話すといい。話せるもんならなぁフェッヘッヘッヘ……。

キヨミ:すげぇ、話がまとまったっぽいのに不安が全然解消されてない。

みるく:じゃあ話すねー!私の理想のデートはぁ、まず駅前で待ち合わせするとこからはーじまーるのー!

キヨミ:急にキャピキャピしだした!さっきまで東尋坊にダイビングしたがってたとは思えぬ生き生きっぷり!

みるく:みゅー、彼氏遅いなー。早くしないとスリーナインが行っちゃうよー。

キヨミ:漫才コントに入った!そんでもって機械の体になるつもりだ!なんやかんやだ!

みるく:あ、彼氏来た!おーい彼氏ー、メーテル、間違ったみーるくはここだよー!

翔太郎:と、その時!突如として現れた巨大コンドルがみるくの彼氏を連れ去った!

キヨミ:邪魔が来た!!だいぶファンタジーな邪魔が来た!!

翔太郎:フェッヘッヘ、お前の彼氏はこの巨大コンドル様が頂いたコンドル!

キヨミ:巨大コンドルが喋った!!アンタそいつを人脈だけで用意出来んの!?

翔太郎:フェッヘッヘ、このまま彼氏を時空の狭間にぶち込んでやるコンドル!ばっさばっさばっさ!!

みるく:みるくビーム!

翔太郎:ギャぁぁぁぁぁっ!!!ちゅどーん!!

キヨミ:何がどうなってるの!?何か色々あってコンドル爆発したんだけど!!

みるく:説明しよう!みるくビームとは、みるくが彼氏を守るために習得した熱光線である!

キヨミ:どんな設定よ!!機械の体になる以前に人間を超越しちゃってるじゃん!

翔太郎:うぎぎ……今回は失敗したでヤンスが、次こそ絶対邪魔してみせるでヤンスよ!すたこらさっさ!

キヨミ:なんかいた!なんか下っ端みたいな奴が去っていった!

みるく:そんでね、無事彼氏と合流したらね、ステキングなレストランに向かうの!

キヨミ:彼氏さっきコンドルと一緒に焼き払われてたけど大丈夫?

みるく:へー、ここがステキングなレストランかー!早速入ってみよう!カランコロンカラーン。

翔太郎:と、その時!なんとレストラン内部は凶悪なゴリラ10頭に制圧されていた!

キヨミ:邪魔がいちいち現実的じゃないんだけど!!動物をけしかけてばっかなんだけど!

翔太郎:ウホウホ、俺様は凶悪だから警察とかには倒せないウホ、俺様を倒せるのはずっとナイフを舐めてる男だけだウホ!

キヨミ:ゴリラが喋った!しかもコイツ邪魔のついでに自分の過去の失態を正当化するつもりだ!

翔太郎:ウホウホ、さぁどうするウホ!?何も出来ないなら貴様らを巨大カナブンの餌にしてやるウホ!バナナバナナバナナ!

みるく:みるくビーム!

翔太郎:ギャぁぁぁぁぁっ!!!ちゅどーん!!

キヨミ:みるくビーム強ぇなオイ!ゴリラ団なんて歯牙にもかけないね!

みるく:説明しよう!みるくビームはみるくの全身の汗腺という汗腺から照射されるのだ!

キヨミ:気持ち悪い!!私が彼氏だとしたらそんな彼女からは5秒でとんずらぶっこくよ!!

翔太郎:トホホ、また失敗でヤンス!でも次が本番でヤンスよ!
    全国の女子中高生のみんな、期待して待ってるでヤンス!すたこらさっさ!

キヨミ:そいつ誰なの!?さっきから作戦失敗後に顔を出すそいつは何者なの!?

みるく:そして食事を終えたら、夜景の見えるムーディな公園でキスをするの!キャーッ!

キヨミ:さっきからアンタの理想のデート像が全く見えてこないんだけどそれでいいの!?

みるく:今日は楽しかったね彼氏……ビーム熱くなかった……?ならいいけど……。
    え、目ぇつむるの……?……えっと、恥ずかしいけど……。
    ……彼氏なら、いいよ……うん、優しくしてね……?んー……。

翔太郎:と、その時!巨大バイクにまたがり鎧を纏った翔太郎が釘バットを振り回しながら突っ込んできた!

キヨミ:自ら来た!!今回の私は何だか翔太郎を応援したい気分だぞ!?

翔太郎:ヒャッハー!!この鎧はみるくビームを完全に防ぐ素材で出来ているのだー!!

キヨミ:みるくビーム対策も万全だ!コイツバカだけど学習能力はある!

翔太郎:ヒャッハー!!貴様らのキスシーンなんざこの俺様がNGシーンにしてやるぜー!!
    そしてこの武勇伝を持って帰り、彼女に復縁を迫るのだヒャーッハッハッハッハ―――――っ!!!

みるく:彼氏ビーム!!

翔太郎:ギャぁぁぁぁぁっ!!!ちゅどーん!!

キヨミ:彼氏もビーム放てたんかーい!!アンタらカップル揃って人間辞めてるやないかーい!!
    翔太郎本人が一番あっさりやられとるやないかーい!!リアクションに何の変化もないやないかーい!!
    そしてここにきて私のツッコミスタイルも急に変わっとるやないかーい!!

みるく:説明しよう!彼氏ビームを受けると、全ての嫉妬心から解放されるのだ!

翔太郎:俺が間違っていたよ……!!(きらきら)

キヨミ:改心してる!さっきまでヒャッハーだのフェッヘッヘだのゴリラ団だのほざいてたのに!

翔太郎:フられたからって他人の理想まで否定するなんて愚か者の所業だよな……。
    これからは自分を見つめ直し、新たな恋を探すよ……!!豊富すぎる人脈を生かすよ……!!(きらきら)

みるく:私もすぐ死にたがる癖を治すね……!!(きらきら)

キヨミ:あっれー……なんか置いてけぼりのままハッピーエンドを迎えつつあるんだけど……。
    まぁ、仲良くなったならいいか……よ、よーし、今から桃太郎読みまーす……。

翔太郎:そんなわけで、今から俺の理想の復縁を話すけどいいよな!
    いいよな!断られたら富士山火口にモトクロスバイクで突っ込むけどいいよな!

みるく:えー!?昔復縁関係で8針縫ったことのある私の前で理想の復縁の話なんて許さないよ!!
    そんなわけで私は翔太郎の話の邪魔をするから、キヨミちゃんは浦島太郎を話してて!

キヨミ:ついていけるかーい!!いいかげんにして!!

3 人:どーもありがとうございましたー!


X子:ありがとうございました。

Y美:では今回も、さっそく審査員の方々からのコメントをいただきたいと思います。
   まず、今回初めて審査員を務めていただいたステーヴンV世さん、いかがでしょうか?

 
・構成もそうですけど、テクニックの尋常じゃなさが垣間見えますね。
 きゃぴきゃぴしたキャラが急に死にたがる落差とか、いきなり毒を吐き出す翔太郎さんの様子がまず面白かったです。(耳糞ボロネーゼにはやられました)
 そこから良い意味で小学生の張り合いの様な俺ルールなんでもアリの二人のやりとりが見ていてとても面白かったです。
 さらに言えば合間合間に出てくる下っ端みたいな奴の出し方とかツッコミの触れかたとかがとにかく面白い。
 全体を通してかなり高水準のボケ、ツッコミ、構成を兼ね備えていて素晴らしいネタでした。


X子:なるほど。なかなかベタ褒めな感じですね。

Y美:続きまして、第8回以来の審査員となったBONBORIさんはいかがでしょう?


・彼氏ビームでアゴがすっ飛びそうになるくらい笑いました。
 もうね、キャラクターが完成されすぎてるんですよ。絶対最初にキャラクターを芯にしてからネタを作成してるじゃないですか。それでここまで面白くなるのって本当に凄いことだと思います。
 最後の入れ替わりループエンドもこれまた凄いと思います。三人だからこそ出来るオチと言うのでしょうか、とりあえずなんか感動しました。
 桃太郎とみるくの死にたがり設定をもっと作中で活かしてほしかったこと以外は特に言うことないです。面白かったです。


X子:おお、こちらも高得点が期待できそうなコメントですね。

Y美:それでは最後に、今回初めてMM−1の審査員を務めます浜田さん、いかがでしょうか?

 
・コントに入るまでの前振りが長かったりとか欠点もありますが、キャラクターといい意味でバカバカしいボケが上手く合わさった、とても楽しい漫才であるのは間違いないですね。


X子:おっと、いきなり1行コメントが出ましたね!



Y美:さて、どんどん参りましょう。

X子:続いて、2組目はこの方たちです!


三者三様のキャラクターによる掛け合いが笑いの渦を巻き起こし、初出場で決勝進出。
観客を見惚れさせ、誰よりも前へ……。遥か遠く輝く未来へ進め!
エントリーNo.026 「おしゃべり三銃士」
あかつき
リードル・アイ
 水戸:アイドルになりたい。

 前橋:……急にどうしたの?

 水戸:アイドルになりたい。

宇都宮:なりたいのね?アイドルになりたいのねミトゴリくん。

 水戸:うん!

 前橋:なんか知ってるガソリンスタンドでこんな会話聞いた事ある。

宇都宮:そう…………でも昨日まであんなに
    「あたい、お師匠の演歌で天下とったるねん!」
    って声高に宣言してたのに、どうしてアイドルに?

 前橋:音楽性の違いパネェな。

 水戸:昨日ね、NHKのクローズアップ現代見てたの。

宇都宮:うんうん。

 水戸:そしたらね、コンコルドに乗った長山洋子が巨大化したトリンドル玲奈に突っ込んで英霊になったからアイドルっていいなぁって。

宇都宮:それは仕方ない。

 前橋:仕方なくなくね!? え?どこに納得する要素あったの!?

宇都宮:長山洋子は元々アイドル歌手だものねー。わかるわー。

 前橋:絶対着眼点そこじゃないよ!
    長山洋子は戦闘機乗らない!トリンドル玲奈はでっかくならない!
    そしてこんな番組をクローズアップ現代は放送しないッ!!

 水戸:だからね、アイドルになりたいんだけど、どうすればいいのかなぁ……?

宇都宮:だったら私に任せなさい。デビュー当時からFolder5に目をつけてた実績あるから。

 前橋:だいぶ不安な慧眼だよ。ワンピースのOPで一発当てただけで、3年で解散したグループじゃん。

 水戸:うわぁい!あたい、宇都宮プロデューサーの曲で天下とったるねん!

宇都宮:ふふふ、ありとあらゆるすんごいテを使ってトップアイドルにしてあげるわ…。

 前橋:どうしようこの暴走特急、どうレールを敷き直しても無視して突っ走るーわ。

 水戸:ねーねー、アイドルになるには何から始めたらいいの?

宇都宮:そうね。アイドルになるには、まず大塚美容外科で診てもらえばいいんじゃないかしら。

 前橋:ハナから裏口入学狙いかよ!最初くらい持ち前の素質で頑張ろうよ!

 水戸:声帯をジェロモデルにしてもらったよ。

 前橋:展開早ッ!

宇都宮:素晴らしい……キュートなルックスに日本人離れした歌声、今までいなかったアイドルの誕生よ。

 前橋:そら今までに声帯なんか整形した人いないし、モデルがアメリカ人だからね! …いやいやジェロモデルてオイ。

宇都宮:下準備が出来たら、次は事務所選びね。

 前橋:下準備て。…まあ事務所は大事だよね。そこで方向性とか売り込み方が大きく変わるし。

 水戸:事務所かぁ…………あたし北島音楽事務所しか知らないの…。

 前橋:さっきから演歌への未練たらたらじゃない!まだ戻れるよ!

宇都宮:大丈夫、事務所なんて知らなくたってなんとかなるから。

 水戸:そうなの?

宇都宮:原宿の竹下通りでも闊歩してればひょいひょい事務所からスカウトされるシステムだから安心しなさい。

 前橋:竹下通りにそんなシステム無いから!たしかにそういうデビューよく聞くけど!

宇都宮:あとお兄さんがいたらAKBとかハロプロに勝手に応募されてデビューできるシステムもあるからね。

 前橋:それたぶん男子専用ルートだよ!姉持ちのジャニーズとかジュノンボーイ出身がよく言うやつ!

 水戸:湯浅卓弁護士の事務所にスカウトされたよ!

 前橋:だから展開が早いっつーの!朝ドラの総集編並みに駆け足じゃないの!そして相変わらずのチョイスよ。

宇都宮:これで知性派アイドル路線が敷かれたわね。

 前橋:んなマトモなレール敷けるかぁ!声帯の時点でキワモノ路線しか残ってないよ。

 水戸:事務所に入れたけど、あたし上手くやっていけるかな……歌もダンスも債務整理も得意じゃないし……。

 前橋:債務整理できるアイドルとか天賦の才を持て余してるわ。

宇都宮:歌もダンスも要らないわ。
    芸能界には事務所のゴリ押しっていう能無しでも一流に成れるシステムがあるから安心しなさい。

 前橋:言葉の陰に敵意が見えるんだけど!主にオスカー方面に!オスカー方面に!

 水戸:ゴリ押しかぁ……うちの事務所にそんな力あるかなぁ…………。

宇都宮:なーに言ってんの。だって、法律事務所よ?

 水戸:そっか!

 前橋:……こわいよ!弁護士が本気出したらたぶん芸能界牛耳れるよ!

 水戸:でも、実力が伴わないのに売れたらアンチからの非難が恐いよ……。あたし親にも炎上させられた事ないのに…。

 前橋:うん、みんな無いから。

宇都宮:そこで弁護士のゴリ押しでしょ?

 水戸:そっか!

 前橋:弁護士の本気再び!軽はずみに悪口の一つも言えないよぉ…。

 水戸:商法抵触スレスレのCDセールス、法律を盾にアンチを徹底排除、
    スネに傷のあるライバル達を脅迫した結果、トップアイドルになれたよ!

 前橋:手口が真っ黒ってレベルじゃねえぞ!!

宇都宮:まさかこんな順風満帆なアイドル路線を歩むとは…………さすが私が手塩にかけた子だけあるわ。

 前橋:9割方弁護士のおかげだよ!宇都宮は何もしてねーわ。

 水戸:トップアイドルになったら、いっぱいお金がもらえるんだよね?

宇都宮:そうよ、ちゃんと事務所が脱税寸前まで節税してくれるわ。

 前橋:うわー最近の弁護士は税理士も兼ねてるのかすごいなー。

 水戸:でもなぁ…………そんな大金持ったら調子に乗って株や先物取引に手出して大損しないかなぁ…。

 前橋:獲らぬ狸の皮算用もほどほどにしなよ…。

宇都宮:大損?その時の債務整理でしょ?

 水戸:そっか!

 前橋:日本テレビさん、これを最強弁護士軍団って言うんですよ!!

 水戸:これで借金を恐れないでお買い物できるね!

宇都宮:そうよ、ファンが生活を犠牲にして貢いでくれたお金で遠慮なく浪費しなさい。

 前橋:そろそろ宇都宮は黙ろうか。さっきから火の粉飛び散らしまくりなんだわ。

 水戸:何買おうか悩んだけど、試しに金髪のお兄さんから違法じゃないお香を買ってみたよ!

 前橋:脱法ハーブゥーーー!!ダメー!似たようなヤツで潰れた芸能人いっぱいいるからぁー!!

宇都宮:あらあら、ダメじゃない。ちゃんと事務所通してから買わないと。

 前橋:事務所通したら買ってい…………まさか!!

 水戸:法律を改正して、正真正銘の合法なお香にしてもらったよ♪

 前橋:天下無敵かよ!!誰か湯浅弁護士の暴走を止めて!
    ん……てかさ、弁護士じゃ法律は変えられないんじゃないの?

宇都宮:言われてみればそうね……今の事務所じゃ活動にも限界が見えてきたところだし…。

 水戸:法廷でゲリラライブも飽きたからねー。

 前橋:おめーら無法者かよ。

宇都宮:よし、このあたりで政治家の事務所に移籍しましょう。

 前橋:「ア イ ド ル」はどこいったああぁぁーーー!!

 水戸:政治家かぁ…………あたしザ・グレート・サスケ先生しか知らないの…。

 前橋:ねえ、水戸の中のタレント名鑑どうなってんの?黒人演歌歌手に国内無資格弁護士に覆面岩手県議員て。

宇都宮:残念、その人もう議員辞めてメキシコ人と結婚してつけ麺屋を開店して閉店したから。

 前橋:サスケの補足情報要らないよ!!つけ麺屋に関してはムダもいいとこだよ!

 水戸:そっかぁ……じゃあもう法律は変えられないんだね……。

 前橋:そもそもアイドルは法律を変えられないし、変える必要も無いから。

宇都宮:政治家になれないならローマ法王になればいいじゃない。

 水戸:そっか!法の王なら法律をいっぱい変えられるね!

 前橋:色々と違ぁーう!!ローマ法王はその流れで出る職業違ぁーう!

宇都宮:偉大なる先人はこう言ったわ。「すべての道はローマに通ず」

 前橋:そういう意味じゃないからァー!ローマは世界の受け皿じゃないからァー!

 水戸:あたい、法王系アイドルになってファンと「サブちゃんの科学」って新興宗教を開祖したるねん!

宇都宮:その意気よ水戸。これからの時代、高齢者層から人気を博せば食いっぱぐれることはないわ。

 前橋:うーん、元の鞘に収まったような、余計ヘンな路線に走ったような……たぶん後者。

宇都宮:そうと決まれば善は急げ、早速アイドルへ偉大な一歩を踏み出すのよ!

 水戸:うん!

 前橋:結局この2人にとってのアイドルとはなんだったのかなぁ…最後までわかんなかったわ。

 水戸:とりあえず司法試験受けてくる。

 前橋:アイドルとはぁーーーーー!!


X子:ありがとうございました。

Y美:まず、2回ぶりに審査員を務めていただいた六升さん、いかがでしょうか?

 
・このネタ大好きですわー。
 キャラクターおよびそれぞれの関係性を序盤でしっかり作り上げてあって、
 それがブレずに最後まで持っていけてるからとてつもなく読みやすく、
 ブッ飛んだ展開もスラスラ入ってきてワードセンスがそれ本来の威力以上の面白さを持つ。
 さらに次から次へと出てくる大量の情報に対して一つ一つしっかりと簡潔で聴き心地のイイ解説ツッコミがあるので、
 ネタ中に記憶しておかないでイイ情報がどれか分かりやすく、脳内メモリの保持にかかる労力も少なくて済む。
 突っかかる要素がほぼ全くと言っていいほど無い。
 強いて言うならボケ方のバリエーションですがそれもほとんど気にならない。
 このネタに低得点がつくイメージが一切湧かないと言うくらい、素晴らしかったと思います。


X子:おおー。これは高得点が期待できそうね。

Y美:続きまして、夏草さんはいかがでしょう?

 
・固有名詞の理想的な扱い方。キャラクターをボケが凌駕してて良い。
 中盤の債務整理あたりが盛り上がってたものの、
 終盤はツッコミのテンションに相反して下降気味だったので非常に勿体ないところ。


X子:そうね、芸能ネタを取り入れつつしっかり面白い、というのが良かったわね。

Y美:それでは最後にステーヴンV世さん、いかがでしょうか?

 
・言い方が変かもしれないんですけど、笑いのとり方を知り尽くしてる感じがしました。もちろん良い意味で。
 小ボケをスラっと挟む技術や、言葉選びの面白さが素晴らしかったです。
 そして、弁護士の本気をガンガンに利用していく理不尽な話運びが面白く読みやすかったです。


X子:なるほど、ありがとうございます。



Y美:どんどん参りましょう。

X子:3組目はこの方たちです!


久しぶりの参戦もしぶとく生き延びて決勝進出。
この幸運でMM-1史上もっとも地味な王者を目指す。
エントリーNo.051 「老兵はまだくたばらず」
言霊連盟
同窓会
槍沢:はいどうも言霊連盟です。

栃城:よろしくお願いします。久しぶりのMM-1頑張って行きましょう。

槍沢:実は、最近ちょっとした悩みがありまして。

栃城:なんですか?

槍沢:今度、僕が幹事になって中学校の時の同窓会を開くんですよ。
   で、こういうことやるのが初めてなんで上手くいくか不安なんですよ。
   だから今日は栃城さんに同級生役をやってもらって同窓会の練習がしたいなと。

栃城:なるほど。



槍沢:「すみません、同窓会の参加者で……。奥の座敷ですね。中学卒業して以来か。みんな元気にしてるかなあ」(ガラガラ)

栃城:「おめえ、ふざけんじゃねえぞ! あ、なんだその目は? ……上等じゃねえか! 表出ろやオイ!」

槍沢:ちょっといいかな栃城さん! ……なんで一触即発状態ですか!?

栃城:本番ではなにが起こるか分からないでしょ? だったらいろんなケースを想定した方がいいって。

槍沢:だからって、想定事例がハードすぎますよ。
   やるなら和やかにお願いしますよ。なんか、「お前変わってないなー」みたいなのが飛び交う感じでお願いしますよ。
   じゃあ、やり直しますね!
   「……奥の座敷ですね。中学卒業して以来か。みんな元気にしてるかなあ」(ガラガラ)

栃城:おめえ、ふざけんじゃねえぞ! あ、なんだその目は? ……上等じゃねえか! 表出ろやオイ!

槍沢:一字一句違ってない! 当事者の意見取り入れてくださいよ!

栃城:「ちょっと二人ともぉ! せっかくの同窓会でそういう乱暴なことするの……いけないと思います!(メガネの縁を上げるマイム)」
   …………。
   「うわあ、出たよ委員長の怒る時の癖! メガネクイッってやるやつ」
   「卒業して大分経つのに、お前変わってないなあ!」
   「『……いけないと思います!』の溜めも全く一緒!」
   「アッハッハッハ アッハッハッハ」

槍沢:…………結果、和やかなったけど! 一旦、不穏な空気を経由しないでくださいよ。
   というか、そもそも幹事より先に集まってなにやってるんですか。じゃあ、もう、それでもいいんで始めましょう。
   まずは乾杯からスタートですよ。
   「では皆様、お手元のグラスをお持ちください」

栃城:そうしたらみんなマックシェイクを手に持って。

槍沢:……マックシェイクってなんですか!? え? 会場、マクドナルドって設定でやってました!?

栃城:もちろん。

槍沢:そんなわけないでしょ! てか、だとしたらマクドナルドの「奥の座敷」ってなんですか!?
   そのセリフが出た時点でおかしいって気づいてくださいよ。普通に居酒屋で団体用の座敷席借り切ってやるんですから。
   ていうか、そもそもなんでマクドナルドでシミュレーションしたんですか。

栃城:だって中学時代、放課後よく集まった思い出の場所でしょ。
   いまは居酒屋でやるつもりでも、突然、思い出を大切にしたくなるかもしれないじゃない。

槍沢:もういいですよ最悪の想定は! じゃあ、一回仕切りなおすから栃城さんの考えうる限り最高のケースでお願い!
   「いやあ中学卒業して以来か! みんな元気にしてるかなあ!」(ガラガラ)

栃城:「世界のみなさま。たった今、アメリカはすべての核兵器を放棄しました! これで世界は一つになりました!
    もう、戦争も紛争もなくなりました! これからは人類一丸となって発展と調和のために力を合わせていくのです!
    ♪We Are The World ♪We Are The Children」

槍沢:…………ちょっといいかな!! ……小芝居の不協和音がおぞましいレベルなんですけど! 

栃城:だってあなたが最高のケースでっていうから「全世界から無益な争いがなくなった」っていうケースを想定したんですよ。

槍沢:スケールでか過ぎでしょ! 居酒屋のふすま明けたらホワイトハウスって、なにこのちょっとしたどこでもドア!

栃城:それだけじゃないよ。戦争に使っていた分の予算と技術を使って世界から貧困もなくした結果、
   環境破壊が爆発的に進んでこのままでは地球に住めないとなったとき、火星への移住計画が成功し人類は宇宙(そら)へと飛び出した……。

槍沢:どこまで広がるんですか! 地球規模でも手に負えないのに宇宙って。
   じゃあ、その宇宙規模の話が一中学の同窓会に与える影響ってなんですか!?

栃城:最初にやってた喧嘩が無くなる。

槍沢:ショボい! 争いや貧困がなくなって宇宙へ飛び出したっていうのに最末端大差ない!
   ……ちなみに訊きますけど、栃城さんが考えうる限りで最悪のケースってなに?

栃城:お通しがポテトサラダだった。

槍沢:振れ幅! 最高と最悪の振れ幅! なのに結果に大差がない!
   単に、栃城さんがポテトサラダ好きじゃないだけでしょ!
   ていうか、マクドナルドで同窓会するよりお通しがポテトサラダの方が嫌なんですか?

栃城:だって、マクドナルドならフライドポテトがお通しになることはあってもポテトサラダは出ない。

槍沢:まず、マクドナルドにお通しって言う概念がないですから。
   とにかく、居酒屋で同窓会ですから! 大丈夫ですね? ……じゃあ、いろいろ挨拶とかがあって、
   「カンパーイ! いやあ、懐かしいなあ。」

栃城:「おーい! 槍沢!」

槍沢:「えーと……。栃城?」

栃城:「そうだよ。いやあ、久しぶりだな!」

槍沢:「いやあ、懐かしいな! お前、いま仕事とかなにやってるの?」

栃城:「俺は、ほら。見て通りだよ」

槍沢:「……いや、わかんないよ!
    パッと見ただけで職業わかるって、そんなコールド・リーディングの名手じゃないから!」

栃城:「あれ、わかんないかなあ……? 見ての通りこの居酒屋のバイトだよ」

槍沢:「……え?」

栃城:「いや、俺もびっくりしたよ。『言霊中学3年A組OB』って名前で予約入ってるから、
    俺と同じだなあ……とは思ってたけれど、まさか通ってたクラスの予約だったとはね」

槍沢:「え!? お前、今日の同窓会呼ばれてないの!?」

栃城:「みたいだね。ではこちらシーザーサラダでございます」

槍沢:「いやいやいや……。平然とコースを進めるなよ! なんで呼ばれてないんだよ? 今日3年A組全員集合のはずじゃん!」

栃城:「中学時代に友達がいなかったからうっかり忘れちゃったんじゃない?」

槍沢:「…………ゴメン!」

栃城:「謝ることないよ。ていうか、俺こそごめんね。気まずい思いさせて。ではこちらシーザーサラダで……」

槍沢:「シーザーサラダどうでもいいよ! ……怒らないの!? せっかくの同窓会、無視されたんだぞ!」

栃城:「でも、こうやって会えただけで俺は満足だよ。ではこちらシーザー……」

槍沢:「床にでも置いておけ! 座敷席だからみんな気にせず適当にテーブルに乗せるわ! それよりも言うことがあるだろ!?」

栃城:「飲み物ご注文のお客様ー?」

槍沢:「そうじゃない! 飲み放題のドリンクの注文とか受けなくていいから!
    よし、お前バイト上がれ! それで飲もう! な!」

栃城:「……バカ言うなよ! そんな簡単に抜けられるわけないだろ。
    ただでさえ週末なのに、3年A組OB全員の31人ま……30人前の予約が入ってるんだぞ!」

槍沢:「……そこは気にしないでおこう!」

栃城:「それでめちゃくちゃ忙しいのに一人だけ早上がりして、それでそのまま飲んでけってバイト先でも孤立するじゃないか!
    もし、ここで孤立してみろ。……半年に一度のボウリング大会に呼ばれなくなるだろ!」

槍沢:「…………それ、そんなに大事なこと?」

栃城:「当たり前だろ! 俺が唯一バイト先から必要とされるのがボウリング大会なんだよ!」

槍沢:「ゴメンて! そうとは知らなかったとはいえゴメンて!」

栃城:「俺はいい、ボウリングに謝れ!」

槍沢:「ごめんなさい! ボウリングさん!」
   …………ってなにこれ!? なんで同窓会に行ってレジャースポーツに詫びなきゃいけないの!?
   ちゃんと全員に連絡するから! 普通の設定でお願いします!

栃城:じゃあ、当時好きだった女の子と再会して……とか?

槍沢:いいじゃないですか! そういうのお願いしますよ。
   「おお、元気にしてた! あ、久しぶり!」

栃城:「槍沢君! ……久しぶり。覚えてる? 栃子」

槍沢:「覚えてるに決まってるだろ。なんていうか、うん。……昔と変わってないな」

栃城:「ええ!? ショック。これでも女を磨いてきたつもりなんですけど!
    ……実はさ。昔、槍沢君のこと好きだったんだよ。気づいてなかったでしょ?
    そしていまでもずっと…………な〜んてね。でもさあ、槍沢君てさ。いま、彼女とかっていたりするの?」

槍沢:「いや、いないけれど……。そういう栃子はどうなんだよ?」

栃城:「私は……いまは仕事が恋人かな」

槍沢:「へえ、なんの仕事してるの?」

栃城:「見ての通りよ」

槍沢:…………あれ? なんか嫌な聴き覚えが。
   「え? まさか……この居酒屋のバイト?」

栃城:「フフッ違うわよ! ん〜でも当たらずしも遠からずかな。見ての通り女体盛りの土台よ!」

槍沢:ストップー!

栃城:なんだよせっかくいい雰囲気だったのに!

槍沢:そのいい雰囲気をあなたがぶち壊したんでしょ! なに!? 女体盛りの土台って!

栃城:ほら、よくある話でしょ。学生時代好きだった子と同窓会で会ったら、すっかりスレちゃってショックだったっていうの。

槍沢:限度があるでしょ! でもって、なんで居酒屋で女体盛りが振る舞われてるんですか!?

栃城:コースメニューよコースメニュー。シーザーサラダ、枝豆、女体盛り、フライドボテトとえびせんの盛り合わせっていう順番で……。

槍沢:結構序盤で投入してきますね! ていうか、置いてないから女体盛りなんて! あなた居酒屋をなんだと思ってるんですか!
   もう同級生との会話はいいですよ。最後、サプライズゲストで担任の先生がきて挨拶してくれるんで、そこだけ練習させてください。

栃城:先生ね。それはどんな感じの人なの?

槍沢:絵にかいたような熱血教師で、ものすごく元気で行動力がある人だよ。
   去年あたり定年だったけれど、老けこまずに忙しくしてるみたい。まあ、とにかくお願いします。
   「えー……みなさん! 宴もたけなわではありますが、実はここでゲストに来ていただいてます。
   我らが3年A組の担任を務めていただいた栃城光策先生です!」

栃城:「みんな。久しぶり! みんなと会うのは中学を卒業以来だけれど元気そうでなによりです。今日は元気をもらえました。
   私の持論ですが、学校とは一人ひとりに船の作り方を教える場所です。
   生徒は学校生活を通して一隻の船をつくり、そして社会という大きな海へと航海していくものです。
   先生は船を操縦をしたり修理したりすることはできませんが、みなさんの羅針盤としていつも船の中にいます」

槍沢:「はい……」

栃城:「では最後に。いま、みなさんに伝えたい言葉を送ります。
   世界のみなさま。たった今、アメリカはすべての核兵器を放棄しました! これで世界は一つになりました!
   もう、戦争も紛争もなくなりました! これからは人類一丸となって発展と調和のために力を合わせていくのです!
   ♪We Are The World  ♪We Are The Children」

槍沢:なんで先生がアメリカの大統領になってるんだよ!

栃城:行動力があるっていうから、最高に行動力があったら初の外国人大統領ぐらいになってるかなと。

槍沢:なんでもかんでも最高のケースを想定しないでください! でもって、よく全世界から争いなくせましたね!

栃城:優秀な外務大臣である委員長が「こういう無益な争いとかするの……いけないと思います!(メガネの縁を上げるマイム)」って紛争地域を巡ったから。

槍沢:委員長の影響力すごいな! ジョン・レノンやマイケルがあれだけ歌っても争いなくなってないのに!

栃城:それから、学生時代友達のいなかった居酒屋バイトが孤独の辛さを説くことで友情や絆がいかに大事かを教えたからね。

槍沢:なんかすごいことなってるな! 孤独を極めた結果カリスマになってるじゃないですか!

栃城:そして女体盛りを振る舞って飢餓の解消に努めたからね。

槍沢:もっと振る舞うもの考えましょう! 多分、ニューヨークタイムズとか黙ってないと思うから!

栃城:こうして、3年A組のOB30人一丸となって取り組んだ結果、無益な争いと貧困がなくなったんですよ。

槍沢:僕以外全員関わってるじゃないですか! だとしたら同窓会を開くまでもなく日ごろから顔を合わせてるでしょ。

栃城:あなたに会いたいがために開いてくれるんですよ。

槍沢:荷が重いわ! なに一国の大統領とその側近待たせてるんだって話ですから!
   ……もういいですよ練習は。これだけ最悪の状況を想定していろいろやらさせられたから、本番でなにが起こっても大丈夫そうだし。

栃城:待てよ! まだお通しがポテトサラダだったときの練習をやってない。

槍沢:それ、あなたが嫌いなだけでしょ! いい加減にしてください!

二人:ありがとうございました。


X子:ありがとうございました。

Y美:ではまず、久々の決勝審査員鬼ちゃんさん、いかがでしょうか?

 
・女体盛りの土台すんげえ笑いました。
 コント部分のボケやツッコミに破壊力があり見ごたえがありました。
 …………。で不穏な空気を演出したのもGOOD。
 内容が良かっただけにオチが少し足を引っ張っている感じはあるものの
 完成度が高い綺麗な漫才だと思います。
 あと特別に意図していないんでしょうけど栃子って名前ひどい(笑)


X子:なるほど。……栃子もそうだけど、何なら「X子」もアルファベットとか入ってて大概よね……

Y美:そういうことを言わないの…
   続きまして、浜田さんはいかがでしょう?

 
・パント無しのマイムってあまり聞かないですね。
 ラストの天丼ラッシュは気持ちいいです。


X子:おお、これまた目の付け所が面白いわね。

Y美:それでは最後にステーヴンV世さん、いかがでしょうか?

 
・完成度が尋常じゃないですねこれ。
 正統派としては、今大会でもトップレベルだと思います。
 伏線の回収にも無理が無く、言い回しが丁寧なので非常に読みやすかったです。
 くだりの一個一個のレベルが高いのにこれまでの完成度で繰り出せるのはとんでもないですね。


X子:「完成度が尋常じゃない」いただきました!



Y美:さて、どんどん参りましょう。

X子:続いて、4組目はこの方たちです!


第2回王者デュアル、第9回王者センチメンタルゼリービーンパニック
そして今大会――満を持して放たれた第三の刺客。強烈な漫才で狙うは三組目の王座だ!
エントリーNo.033 「長文の鬼神」
インパク×インパク
山奥の章
藤田「どうもインパク×インパクですよろしくお願いします」

中田「よろしくお願いします」

阿部「あたしアルプスの少女ハイジって大好きなんだよねー」

藤田「あー、名作だよね」

阿部「ハイジと言えば有名なシーンがあるじゃん?」

中田「あぁ、あのアルプスの食糧難で、ヤギのユキちゃんを
   泣きながらオーブンにぶち込むシーンね」

藤田「ちょっと待って俺それ知らない!」

阿部「それもまぁそうなんだけど…」

藤田「お前見たことあんのかよ!
   俺全部は見たことないけどそんなシーンないと思うよ!?」

阿部「ど、どうして友達のユキちゃんを
   食べなきゃいけないのよぉ?!教えてよぉ!
   教えてよぉおじいさぁん!」

中田「仕方ないんじゃよハイジ…
   これが……我々人間じゃ…人間の定めなのじゃ…」

阿部「これが生きるということなの?!
   それならあたし、もう生きていたくなんかない!
   友達を食べるのが本当に生きるということなの?!
   教えて!アルムのもみの木よ!」

中田「アルムのもみの木ならもう薪になっているよ」

阿部「降りしきる雨、鳴り響く雷鳴」

藤田「なんだこの流れ!!何この熱演っぷり!」

中田「パーパー♪パパパーパー♪…
   よーろよーろやっひっひーよー
   やっひっひーよやっひっひー♪」

2人「よーろよーろやっひっひーよー
   やっひっひーよやー♪」

阿部「断末魔はなぜー、遠くまで聞こえっるっの♪」

中田「ユキちゃんをなぜー、生きたままぶち込んだの♪」

藤田「怖すぎるわ!なんだこのえげつない歌詞は!」

阿部「『生きる』を考える。実に深い内容だよねー」

藤田「別の形で考えさせろよ!
   友達のヤギ生きたままオーブンにぶち込んで学ぶ
   人生観なんかイヤだよ!何が学べるんだよ!
   そうまでしてしか学べない人生観ってなんなんだよ!」

中田「なんだ文句ばっかり言いやがって。お前何かあんのかよ」

藤田「一番の名シーンと言えば
   クララが立ったシーンでしょうが!」

中田「あぁ、あったあったそんなシーン」

藤田「何そのリアクション!これ1番でしょうよ!」

中田「クララが立った力学的エネルギーによって
   アルプスの山が5cm南に動いたあの象徴的なシーンな」

藤田「俺の知ってるやつと違う!そもそも何の象徴だコラ!」

阿部「それで、犬ぞりレースがなんだって?」

藤田「お前に至っては何一つ話聞いてないのな!
   なかなか立たないクララに
   しびれを切らしたハイジが怒り出しちゃうわけよ!」

阿部「クララのバカ!面汚し!」

藤田「そんなこと言わねえよ!クララ何したんだよ!」

中田「そうだそうだ!面汚し!アルプスの面汚し!!」

藤田「ペーターまでなんなんだよ!」

中田「いや私おじいさんですから」

藤田「余計なんなんだよ!保護者がすることじゃねぇだろ!
   なんでアルプス代表みたいに怒られなきゃいけないんだ!
   もっと言葉選べよ!」

阿部「クララのバカ!沼貧乏!」

藤田「聞いたことねぇぞなんだその単語!
   どう思われてるのか全くわからん!」

中田「そうだそうだ!平成の沼貧乏!」

藤田「だからわかんねぇんだって!どういう罵倒なんだよ!
   クララが平成の沼貧乏なら昭和の沼貧乏は誰よ!」

中田「ワシじゃよ」

阿部「 お  じ  い  さ  ん  …  !  !」

藤田「なんだお前ら!
   その流れじゃちょっと誇れる立場じゃねぇか!
   もっとちゃんとやれよ!名シーンだぞ?!
   クララ立つシーンだぞ?!」

阿部「クララのバカ!どうして立てないのよ!この意気地なし!」

藤田「そうそう!そうやって怒るわけよ」

阿部「あなたがあまりにも立たないから、
   今日はある方をお呼びしたわ」

中田「ヒェッヒェッヒェッ……」

藤田「なんだこいつ」

中田「オイラは車椅子を食べる妖怪!」

藤田「なんか予想より変なヤツだった!」

阿部「この車椅子さえなくなれば、あなた立つしかないでしょ?」

中田「ヒェッヒェッヒェッ!もぐもぐ…」

藤田「やり口が汚いよ!
   わざわざ妖怪の力借りてまで友達追い詰めるなよ!
   お前だよ面汚しは!」

中田「背もたれうめぇ!背もたれが一番うめぇ!
   もぐもぐ!もぐもぐ!」

藤田「世界観がすぎるよ!いつまで妖怪でいるつもりだよ!
   クララが立ったのはハイジに嫌われるのが嫌だったからだろ?!
   そんな妙な実力行使で立っても感動出来ねぇよ!」

阿部「クララのバカ!どうして立てないのよ!
   この意気地なし!もうクララなんか嫌い!
   (たったったったったっ…)」

藤田「そうそうそれでクララはハイジを追いかけようとしてさ!」

阿部「(ピタッ)うっ…!体が…動かない……ッッ!」

中田「ヒェッヒェッヒェッ!オイラの仕業だよ!」

藤田「またお前かよ!なんなんだよお前!」

中田「逃げずに黙って見てるんだな!」

阿部「なっ…クララが立った!!」

中田「ヒェッヒェッヒェッ!オイラは病気の原因を食べる妖怪!」

藤田「なんか違ういいヤツだった!
   でも感動出来るかこんなもん!
   人知を超えた力で立たせるなよ!」

中田「ヒェッヒェッヒェッ!
   さっきおじいさんの脳の腫瘍もこっそり食べてやったぜぇ!」

藤田「めちゃくちゃいいヤツじゃねぇかよ!」

中田「あと床もただただ舐めてやったぜぇ!ヒェッヒェッヒェッ!」

藤田「それはもうただの変態ですやんか!
   もういいやどんな形であれ立てば!
   その後クララが立ったクララが立ったって行って喜ぶんだよな!畜生!」

阿部「クララが立った♪クララが立った♪
   クララが立っ(メ゛ェエエエエエエエーー……ッッ!!)」

中田「おーい、そろそろユキちゃん焼けるぞー」

藤田「最初の続きだった?!断末魔聞こえちゃったよ!」

中田「ヒェッヒェッヒェッ!」

藤田「お前まだいんのかよ!」

中田「違うよ!オイラはバーベキューを食べる妖怪!」

藤田「それもうただのアウトドア野郎じゃねぇかよ!」

中田「タンパク質の焼けるいい匂いだぜヒヒヒ!」

藤田「仰々しいけど要はただの焼き肉好きじゃねぇか!」

中田「今日は友達の、
   焼きたての白いパンを人間の顔に押し付ける妖怪も一緒だぜ」

藤田「ここにきてややアルプス感ただよう妖怪でてきた!
   何が目的なんだその妖怪は!」

阿部「そしてオイラは
   その押し付けられたパンを食べる妖怪!(鳴り響く雷鳴)」

藤田「もう一匹出てきた!轟く雷鳴とともにしょうもない妖怪が!」

中田「そしてワシは妖怪
   沼  貧  乏  (  昭  和  ) ! ! ! 」

藤田「黙れジジイ!もうやめだやめだ!なんだこれ!
   ヨーロッパの話なのに変な妖怪たくさんでてきちゃった!
   アルプスってそんな変な妖怪の巣窟じゃねぇから!恐山か!
   お前ら本当にハイジ好きなの?!」

中田「好きだよハイジ」

阿部「仕事とかやめて山奥でひっそりと暮らしたい」

中田「でも牧場とかは誰かがやってくれて」

阿部「家事とかもやらずにダラダラ過ごしたい」

2人「ねー」

藤田「もうハイジどころか廃人じゃねぇかいい加減にしろ!」

3人「ありがとうございました」


X子:ありがとうございました。

Y美:夏草さん、いかがでしょうか?

 
・「それもうただのアウトドア野郎じゃねぇかよ!」 今大会一番笑った。
 もう最後に沼貧乏(昭和)が出てくるくだりとか、書いてるゆーたさんが一番昇天してそう。
 これが優勝でしょ。


X子:おお…ここでついに「優勝」コメントが出ましたね!

Y美:続きまして、ステーヴンV世さんはいかがでしょう?

 
・なんだこれは…!(衝撃)
 いや、あの面白過ぎますよねこれ。
 最初からフルパワーレベルのボケを繰り出してきたのに最後までダレるどころかどんどん加速していく衝撃的なボケの数々に笑いっぱなしでした。
 忘れた頃のユキちゃんの断末魔とか泥貧乏とか不意打ちを突くテンドンのタイミングも上手過ぎてただただずっと笑っていました。
 これは凄いなぁ…。


X子:おっと…こちらも「衝撃」との言葉が出ました!

Y美:それでは最後に鬼ちゃんさん、いかがでしょうか?

 
・沼貧乏ってなんだかわからないですが、相当なネガティブイメージを思い起こさせますね。
 ワードセンスが光ったネタだと思います。何が昭和やねん。
 終盤の妖怪ラッシュもお見事。
 1点注文を付けるとしたら中田の配役がちょっと捉えづらいかなと思いました。
 トリオネタの割には誰の発言なのかは判りやすくテンポよく読み進められたのですが、
 何を演じているのか、についてもう少し工夫が欲しかったです。


X子:なるほど。何気に今回の決勝で3組目のトリオなんですよね。



Y美:さて、どんどん参りましょう。

X子:続いて、5組目はこの方たちです!


再びネット長文の最前線へと現れた伝説のコンビ。
切れ味鋭い掛け合いは衰えず、優勝も視界にとらえた。実力者の前にブランクなど関係ないことを証明させる!
エントリーNo.049 「古豪復活」
ワイトラック
冠婚葬祭
光:どうも、ワイトラックです。

影:よろしくお願いします。先日、僕の従姉の結婚式がありまして。

光:へぇー、そうなんだ。おめでたいことだね。

影:で、まぁ僕も行ってきたんですけれど、いやぁ柄にもなく感動してしまいましたね。

光:おっ、良いじゃん良いじゃん。やっぱ人の幸せを目の当たりにすると心がほっこりするもんだよ。

影:本当に凄く感動して……あ、話は変わるんですけど、うちの爺ちゃんが死にました。

光:えぇー!は、話の落差!

影:しかもこれ結婚式の前日ですよ。

光:タイミング最悪すぎるでしょ!

影:おいおい結婚式の前に葬式かぁ〜、なんて親族で言い合っていたんですけども。

光:君の身内随分呑気だね!

影:実際問題ね、爺ちゃんが死んだとなると、これ当然喪中になるんですよ。
    ただ結婚式の予約は既にしてある、と。だからもう、仕方ないからやっちゃえ、ってなって。

光:そ、それって大丈夫なのかな!何かこう、宗教的な問題とか色々…。

影:我々も悩んだんですが「挙式は西洋式だよ」という叔父の意見に満場一致で乗る事にしました。

光:そういう問題でも無い気がする!

影:そうは言っても、爺ちゃんも従姉の結婚式は楽しみにしてたんですよ。
    だから爺ちゃんの魂が留まる内に、って事で、恐らく爺ちゃんも分かってくれたと思います。

光:いや……まぁ、親族が納得しているんなら、私がどうこう言う筋合いは無いけど…。

影:とにかくもう明日には結婚式なんで、葬式の方は軽くパパッと済ませようと…

光:こら!流石にお爺さん納得しないでしょそれは!

影:死に装束も用意が出来なかったので、その辺にあったバスローブを使って。

光:ちょっと似てるけど駄目だよ!

影:通夜の方も時間が無さ過ぎる、との事で、とりあえず爺ちゃんを一晩寝かせて。

光:何でそんなカレーみたいな言い方を!

影:その後は来る結婚式に向けての打ち合わせをしたんですけれど…

光:お爺さん放ったらかしで!?結婚式もそりゃ大事だろうけど!

影:打ち合わせに時間がかかっちゃって、ほとんど徹夜になっちゃって。
    で、朝になって居間に行ったら、何かバスローブ来た御老体が横たわってて…

光:本当にそのまま放置してたのか!せめて布団に寝させるなりあるでしょう!

影:あの時は肝が冷えました。まぁ爺ちゃんは肝以外も冷え切ってるんですけれども。

光:やめなよそういう事言うの!

影:準備も終わっているので、早速結婚式に向かいまして…

光:だからお爺さん放ったらかしにしちゃ駄目だよ!

影:大丈夫です、ちゃんと式場に連れて行きました。

光:いや、それはそれでまずいでしょ色々と!

影:車に乗せるスペースが無かったので、仕方なくトランクに入れて。

光:場所と相まって最悪の選択だよそれ!

影:流石に式場に持っていくわけにもいかないのでね、とりあえずトランクに入れたままにしておきましたけど。

光:だからちょいちょい放置するのやめなって!

影:式場に入ると、もう殆どの人が集まってましたね。親戚は勿論、従姉の友人、学校の恩師、会社の同僚に上司など。

光:本当だったらそこにお爺さんも居たのにね…。こんなことになって、こんな扱いになるなんて…。

影:ただ一番驚いたのは、全く呼んだ覚えの無い人物が何食わぬ顔で席に座っていたことですかね。

光:え?何それ、何か怖いんだけど…。

影:呼んだ覚えが無い、と言うよりも、来れるはずの無い人物ですかね。
  信じられないかもしれませんが、恐らくあれは霊です。

光:……いや、ちょっとまって君…

影:完全に半透明でしたから間違いないです。見た目はごく普通の老人、と言った感じでしたかね。ただ服装はバスローブでした。

光:それもうお爺さんだよ、君の家の!律儀にバスローブ着ちゃってるし!

影:生前、あれだけ楽しみにしていた結婚式なので、化けてまで参加したい気持ちは分かります。
    しかし、我々としては、霊が参加している結婚式など気持ち悪くて仕方がないのもまた事実。

光:なんて事言うんだよ!扱いが酷すぎるでしょ!

影:確かにあんまりな扱いだったと思います。
  なので急遽、結婚式と同時に爺ちゃんの葬式もすることになって。

光:それで何か解決すんの!?結婚式と同時ってなんだ!

影:まず新郎新婦入場。BGMは結婚行進曲の代わりに般若心経。

光:葬式要素が強すぎ!嫌でしょお経バックに入場する新郎新婦!

影:どこに置けば良いか分からなかったので、一応新郎新婦の前に爺ちゃんを寝かせて。

光:完全に主役食っちゃったよ!言っちゃ悪いけど邪魔!

影:いよいよ式の開宴ですよ。ただその前に1分間の黙祷ね。

光:どんだけ盛り下がるオープニングなんだよ!

影:続きまして主賓の挨拶。代表で新婦のお父様が務めました。
  このお父様、僕にとっての叔父さんですが、爺ちゃんの実の息子なんですけれども。

光:その人は自分の父親の扱いについてどう思ってたんだろう…。

影:結婚生活に必要な「3つの袋」の話をしていましたね。
  「えー、3つの袋が大切などと言います。給料袋、胃袋、玉袋!違うか、ガハハ!」なんつって。

光:この状況でよくボケてきたな!

影:完全に滑ってましたけどね。空気が冷たかったです。

光:そりゃそうなるよ!空気読めてないにも程があるよね!

影:まぁ冷たいと言えば爺ちゃんも…

光:だからそういうの言わなくていいから!

影:その流れで喪主の挨拶に移りまして。

光:本当につつがなく進行しようとするね!感心すら覚えるよ。

影:喪主も先程と同じく叔父さんが務めて下さいました。

光:多分その人に任せちゃ駄目だと思うけど!

影:「生前、父がよく口にしておりました、人生に大切な3つの袋と言うものがあります」

光:何で滑ったネタを被せにきたんだよ!空気読めてないどころの話じゃないよもう!

影:「いえ、私は真面目です、被せるなんてそんな……、まぁコッチの方は普段は被ってますが、って違うか、ガハハ!」

光:いよいよ頭おかしいんじゃないのその人!

影:若干ですが、爺ちゃんの温度が上がったような気がしました。

光:霊も憤るほどのつまらなさ!

影:挨拶の後、叔父さんが急にぶっ倒れて会場が騒然としましたが…。

光:何が起きたんだよ!続々と問題起こすなその叔父さん!

影:爺ちゃんの周りに何となく黒いオーラが纏って見えたんですが、何か関係あるんでしょうかね。

光:呪い的な何かな気がしてならないよ!

影:さぁ、その後はいよいよケーキ入刀、同時に全員で焼香。

光:夫婦で初めての共同作業が台無し!

影:親族一体となった共同作業でもありますからね。

光:お焼香をそんな風に捉えた事無いけども!

影:メインイベントも無事終わりまして、ここからは祝宴の時間です。
    皆で乾杯!そして合掌!

光:テンションのアップダウンが物凄い!盛り上がるべきなのか厳かにするべきなのか!

影:この間に新郎新婦はお色直しですね。
    お色直しと言うか、まぁ喪服に着替えてもらったんですけども。

光:本格的に葬式に移行するのか!結婚式中止にした方が良かったでしょこれ!

影:勿論ご来賓の方々もお色直しをしまして、次は新郎新婦によるキャンドルサービスでした。
    キャンドルと、ついでに線香にもサービスしていただいて。

光:最早普通にロウソクだねそれは!線香サービスなんて言葉初めて聞いたよ!

影:ここで新婦からご両親への感謝の手紙、これには感動しましたね。
    「お父さん、お母さん、今まで育ててくれて本当に感謝しています」

光:あぁ、確かに定番だけど、そういうのには感動するよね。

影:「いつもわがままを聞いてくれたね、優しくしてくれてありがとう。大好きだったよ、お爺ちゃん」

光:ターゲット変わっちゃったよ!ある意味では今日一番の主役かもしれないけど!

影:さぁ、いよいよ式もフィナーレ、最後は盛大にライスシャワーですよ。

光:今まで散々だったから最後くらいは盛り上がろう!

影:まぁ米じゃなくて塩を撒いたんですけどね。

光:清めの塩か!最後まで葬式要素が勝っちゃったよ!

影:新婦の投げたブーケを追うと、爺ちゃんが微笑みながら昇って行くのが見えました。

光:何を綺麗に締めようとしてんだよ!

影:…爺ちゃん、喜んでくれたかな。

光:もういい加減にして!

影:ありがとうございました。


X子:ありがとうございました。

Y美:では六升さん、いかがでしょうか?

 
・ストーリーがとても丁寧かつ簡潔に書かれていてで読みやすく面白かったです。
 葬式の話を出すタイミング・「挙式は西洋式だよ」のツッコミ所を残しながらの納得のしやすさが序盤の惹き込みにすごくイイ。
 字面ではなく内容を理解させて面白さを演出するには本当に「分かりやすさ」と言うのが物凄く重要になるんですが、
 それが徹頭徹尾しっかりしていて深く満足できる面白さでした。
 しかしその盤石なストーリの中だからこそ、「葬式が結婚式前日じゃなくなっている」ことの矛盾は非常に目立ち、
 物凄く邪魔な違和感として残ってしまいました。
 葬式が立て込んで次の日まで持ち越したとか、そーゆー強引なモノでもイイからココは納得できる理由が欲しかったですね。
 納得感・しっくり感は穴があいたときのデメリットがどうしても大きいですから、そう言う徹底は他の形式より精密に必要になります。
 それがあれば満点をつけいたかもしれないです。


X子:「満点だったかも」…なるほど、難しいところですね。

Y美:続きまして、鬼ちゃんさんはいかがでしょう?

 
・上手く結婚式と葬式をコラボさせたなと思いました。
 両方に係るボケがたくさんあって確かに楽しめたのですが、
 結婚式で持ち上げて葬式で落とすという構図が始終変わらなかったため
 ネタのなかで印象に残る部分が見受けられなかったのが残念です。
 スラスラ読めて面白かったのですが印象に残るボケは…と考えてしまいます。
 ネタ自体の完成度は本当に素晴らしかったと思います。綺麗!


X子:ふむふむ。完成度は間違いなく高かったわね。

Y美:それでは最後にBONBORIさん、いかがでしょうか?

 
・般若心経で入場する新郎新婦がメチャクチャ面白かったです。叔父さんのスベリ芸も素敵です。
 ただ基本的に淡々と物語が進んでいったので、もう三、四つ展開を増やしてくれれば印象がより強い作品になったと思います。


X子:なるほど、ありがとうございました。



Y美:さて、どんどん参りましょう。

X子:続いて、6組目はこの方たちです!

後半戦に続く